ペコリーノのBL読書日記

BLスキーのペコリーノのBL読書日記。素人の感想&個人的な覚書です。100%自分向けのためネタバレ全開です。

「南風」松野たば子・著 イラスト・依嶋蓮 白泉社花丸文庫BLACK

2008-09-23 00:28:55 | ボーイズラブ小説
「南風」松野たば子・著 イラスト・依嶋蓮 白泉社花丸文庫BLACK
 2008年5月25日初版発行 220ページ 638円+税

 ある意味、とっても新しい作品だと思いました。

ストーリーは・・・
警察庁高官を父に持つ県警の刑事・西村は五ヶ月前、横浜の新海地区で暴力団の一斉摘発を指揮した。その時におさえた四之崎組組長に実刑判決が下ったのをきっかけに、親筋にあたる組の連中に襲われる。鉄パイプが振り下ろされ、もう終わったと西村が思った時だった。一人の男が現れ、組員たちを追い払ったのだ。その男・南条は現在、組長不在の四之崎組を任されているのだが、西村とはかつて、同じ業界を目指し、ぶつかり合ったこともあったのだ…。暴力と恐怖が支配するハードボイルドな世界を描く新人作家のデビュー作。西村の過去に関する話も収録。 というもの。

●カップリングが存在しない!?
 西村は敵対するヤクザ組織に拉致されまして、そこで散々痛めつけられ(暴力描写は結構多め)、エネマグラだの何だの、いろんな器具を突っ込まれ、気を失って、目をさますと、ヤクザのボスに乗っかられて、ボスはせっせと腰を動かしています。

 そんな感じで、Hシーンはあるんですけど、カップリングが存在していないのですよ、この話。一応、南条とは何かありそうではあるし、南条も西村の拘束をゆるくする程度のことはするので、敵愾心以外は持ち合わせていない・・・ってことはなさそうなんですけれど、だからといって、痛めつけられたり、他の男に抱かれる西村を救出するようなこともなく、微妙な関係です。

 この本には「南風」「腐った熱帯夜」「レトロスモーク」の3編が収められています。「レトロスモーク」は刑事とヤクザになる前の学生時代の話。
 「南風」で、刑事とヤクザと、道を違えた二人が再会して、ワナにかかって南条に捕らえられた「西村の受難」が延々と続きます。
 そこに、組織で内偵を行っていた佐倉が西村を救出。西村はなんとか脱出します。そこで話が終わり。脱出するだけで、何も解決していないのです。
 組織の裏切り者が佐倉だということがバレた。佐倉の身がヤバい・・・とか、そもそも西村と何条の関係とか、いろいろ決着をつけないといけないことはあるのですが、すべてほったらかしで「南風」は幕を下ろします。
 BL本の場合、雑誌掲載作+書き下ろしで1冊にすることが多いので、「南風」は雑誌掲載作だったのかと思ったら、書下ろしでした。なので、「雑誌でこれを読まされた人はこの尻切れトンボ具合にびっくりしただろうなぁ」という私の感想は杞憂に終わりました。
 でも、書き下ろしだったら、なぜ、「南風」「腐った熱帯夜」と2本に分けたのでしょうか。松野先生や編集の方になんらかの意図があったのかよくわかりません。

 テーマというか、ヤクザと刑事というキャラクターには目新しさは感じませんでしたが、痛々しい暴力描写。ご都合主義に陥らない(!?)ストーリー。カップリングが存在しないことETC、新しい作風なのかなぁと思いました。
 私はこのブログで散々、「お約束」とか「ご都合主義」をたたいていますが、それをとっぱらったこの作品が良かったのかと言われると、「おもしろかった」とはとても言えません・・・。

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