ペコリーノのBL読書日記

BLスキーのペコリーノのBL読書日記。素人の感想&個人的な覚書です。100%自分向けのためネタバレ全開です。

「野ばらの恋」砂原糖子・著 イラスト・小鳩めばる 幻冬舎ルチル文庫

2008-05-24 00:15:07 | 砂原糖子
「野ばらの恋」砂原糖子・著 イラスト・小鳩めばる 幻冬舎ルチル文庫
 2008年5月20日初版発行 290ページ 552円+税

 最近人気でK-Booksで買取強化作家に指定されている砂原先生。
 舞台は老人ホーム。だけど、ボーイズラブってことですが・・・。

 ストーリーは・・・
 医療機器メーカーの跡取り・椛代永知は、仕事にも恋愛にも熱意を持てずにいた。ところがある日、3ヶ月だけ出向することになった山奥の老人ホームで美しい園長・三園史彦と出会う。亡くなった恋人を一途に慕い、入園者たちやバラを心から慈しみ、何故か自分にだけ怯える三園。いつしか「彼に触れたい」という想いを抑えられなくなった椛代は―。
 あらすじはネット書店のセブンアンドワイさんから転載しました。
 http://www.7andy.jp/books/detail?accd=32053498

 三園はかつて、誘拐された経験があり、その時に犯人の若い男から悪戯されそうになり、若い男に触られることに恐怖を覚えるようになった。→この設定はよしながふみ先生の「アンティーク西洋骨董洋菓子店」を思い出してしまいました。砂原先生が意識されていたとは思いませんが、BL好きな人であの作品を読んでいる人は多いと思うので、かぶっているのはマイナスかもしれません。

 三園と老人ホームの前園長兼オーナーは養子縁組をした親子であるが、「このとおり、僕は男ではありますが、彼の配偶者的立場にありましたので」(P25)とのこと。
 椛島は男子校に在学中、擬似同性愛体験があったが、卒業後は異性愛者に戻っていた。さて、こんな二人の恋の行方は・・・。


●ツメがあまい
 砂原先生は、つくづくツメのあまい作家さんだなぁと思います。
 今回の場合、老人ホームが舞台で、若き園長と、出向でやってきた医療機器メーカーの社員が恋に落ちる話なのですが、この老人ホームの描写が素人目にもメチャクチャ。
 攻めの椛島は、一族経営の医療機器メーカーの跡取り息子。仕事にやる気がなく、老人ホームで三園との恋の進展とともに、老人たちとも触れ合い、仕事にやる気を見出し「情感を揺さぶるデザインコンセプト化」というレポートを提出して、仕事でもちょっと認められようになります。
 作中に徘徊老人が出てくるのですが、センサーを身に着けさせようとしても、老人達が嫌がる・・・というエピソードが出てきます。
 身に着けるのに抵抗のないデザインがあれば・・・みたいな流れになるのですが・・・。 いったいこれ、いつの話なのでしょうか?もう何年も前に、アクセサリータイプのセンサーが出てますし、ざっと検索したところ、センサーに見えないデザインはいくらでもあります。

 デパートの傘売り場の近くにステッキ売り場があると思いますが、今はデザイン、機能、いろんな種類のステッキがあります。手押し車(おばあちゃん達がつかっている歩行介助のやつ)もすごいですよ。機能もデザインも値段もピンきり。介護用品メーカーだってバカじゃないんですから、デザインに注力するくらいもう何年も前からやっています。通販雑誌を見ればシニア向けの商品がダーっと並んでいて私なんて「こんなのもあるの?」と、驚かされます。
 このお話はBLなので、メインは主役カプの恋のお話で、椛島が作中で思いつく仕事のアイディアなんか適当でいいのしょう。
 でも、例えば食品メーカーが舞台のBLがあったとして、主役がカレー粉の開発をしているとします。
 「新商品のカレー粉にはリンゴと蜂蜜を加えましょう」と提案して「そりゃ、画期的な商品だ!大ヒット間違いなし!」なんてやってる会社が書かれていたらどう思います?


●老人ホームの設定がいい加減過ぎる
 漫画だと、人物だけではなくて、背景を描かねばなりません(真っ白な人やトーンでごまかす人も居ますが)。ドラマの場合、人物以外に小道具、大道具が必要です。
 しかし、小説だとこのあたりは曖昧にできるんですよね。
 今回、受けが若い男恐怖症で、若い男から触れられると気分が悪くなるという設定なので、外出も不得手・・・ということから、舞台の殆んどは老人ホームです。
 でも、この老人ホーム・・・。ありえません。私は老人ホームの専門家ではないですが、マスメディアに取り上げられることも多いですから(新聞の特集記事も多いですよね)、普通に新聞を読んだり、雑誌を読んだり(BL雑誌は別)していれば、ある程度の知識は身につくと思います。
 老人ホームといっても、介護保険が使えるものから、入居の時に何千万円も払う高級ホテルのようなところまでさまざまです。
 三園の経営するホームは、大部屋があり、起床時間が朝6時半と刑務所並み(今は病院でもここまで酷いところはないでしょう)。となると、社会福祉法人が母体の特別擁護老人ホーム?と思いきや、入居者がペットを室内で買って、それを(ケージに入れてとはいえ)食堂に持ち込んだり・・・ありえません。
 だったら介護保険の使えない、いわゆる高級老人ホームかと思いきや、そういうところは基本的にホテルタイプなので、起床時間やもっと言えば一律に食事時間が決められているのはおかしいし、「離床介助」が必要な人がいるとP141に描写があるので、かなり要介護度の高い人も入所しているのでしょう。そうなると、ホテルタイプの老人ホームはありえない・・・。いったい、どんな老人ホームなのでしょう。砂原先生ご自身も把握していないに違いありません。

 医療機器メーカーの社員が「商品のデータを取りたい」と、泊り込みで見学を申し出た。そこまではいいとしても、入所者の老人と同じ部屋で寝せたり、介護の資格もないのに入浴や食事の介助をさせる・・・これはどうなのでしょう?
 入浴や食事の介助中、椛島が誤って入所者に怪我をさせたら?

 椛島は自分が老人と同じ部屋だと言って憤慨するのですが、入所者でもないのに、お金も払わずに自分達の部屋に寝せて・・・と、いうことで、入所者からクレームが来るでしょう、普通。しかも、勝手にデータの対象にされて、プライバシーの侵害でもあります。

 三園は学校にも通わず、家庭教師や、養父から勉強を教えてもらっていたということですが、老人ホームの施設長は講習やら何やら義務付けられているんじゃないかと・・・。


●話の辻褄が合わない
 養父の「配偶者的な立場」であったと三園はいいいますが、なんと、プラトニック(P133で判明)。椛島と出会ってわりとすぐの頃、利用者同士(男女)でナニをやってるシーンを目撃し、ショックを受け、その手の知識が全くないとおもいきや、物語の最後、椛島との初Hのシーンで、ちゃんとその手の知識があると言う。
 養父と三園は、養子縁組をした親子なので、一緒に暮らすのは当たり前だし、愛し合う(性的なものを抜いた意味で)のも当たり前。何をもって、「自分は単なる養子ではなく配偶者的立場」だったと三園が思い込んだのか。支離滅裂です。

 また三園は、誘拐され、悪戯されそうになったショックから、若い男に触られるのがダメになった・・・のですが、椛島の襟元についたクリームを取るのは平気。襟元ってかなり身体に近いですよね。ヘタしたら触れちゃうじゃないですか。本当に恐怖症なら、他人から触れられるだけではなく、自分が触れるのもダメなんじゃないかと思いますが、どうでしょうか?


●内舘牧子さんの言葉が身に染みた
 数日前のエントリーに書きましたが、たけうちりうと先生のホワイトハート小説大賞受賞作に、審査員の内舘牧子さんの選評が掲載されていました。
 そこの冒頭にこう書かれていました。
「(候補作全て)『人間がまったく描けていない』という印象を持った。登場人物が生身の人間としてとらえにくく、『事件を動かすための道具』になっている。人間が描けていないので、次々に事件を起してつないでいかないと、規定枚数がもたないのである。」
 
 徘徊老人を探して遭難をする椛島と三園。無事生還したことをきっかけに、三園は椛島えの恐怖心がなくなる。それを自覚した途端に、亡くなった養父そっくりの男が入所してくる。60年代ドラマ並みのお話です。しかもこれが同一のシーンにあるのだから、「椛島のことが恐くなくなった(ハァト)」の次の瞬間には「草一さん!(養父の名前)」ですから。そして最後は火事!
 脇役も事件を起す小道具にしかなっていないように感じました。
 女のキャラの扱いは相変わらず酷い。椛島のセフレのわがままで身勝手な女。老人は信じられないくらい若作りの世話焼きです。これらの女性キャラは脇役にも関わらず、ベラベラ説明セリフをしゃべるんだ、これが・・・。

 養父そっくりの老人が入所しても、椛島はまだ入所者と一緒の部屋で寝起き。 
 ということは、椛島が来るまで最低でも2つ以上、ベッドの空きがあったようです。あれ?ベッドの空きって作っちゃいけないんじゃなかったのかな?
 
 「野ばらの恋」というタイトルで、老人ホームの名前がロゼットガーデンで、庭に一年中、たくさんバラが咲いているという設定なのですから・・・イラストはバラの花がお上手な人に描いてもらえばよかったんじゃないかと・・・。イラストにも足をひっぱられましたね。
 
【攻め】椛代永知 25歳 会社員(医療機器メーカー) 跡取り息子  一人称「俺」180㎝を軽く越えている
【受け】三園史彦 28歳 老人ホーム園長 一人称「僕」170㎝ほど

【ボキャブラリー】性器=性器、もの アナル=後ろの小さな窪み  精液=どろりと濡らすもの

タグ:年下攻め 老人ホームのアイドル


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