パチャママ的あぐりびと通信

茨城県石岡市、有機生産・飯田農園の妻(焼き物屋)が現場からお届けする日々雑多有機的考察。

山の我が家

2008年01月05日 | はじめましてのごあいさつ
このようなところに住んでおります。手前と画面中央に見える大きな木は山桜。その花の散る姿といったら!まるで春に降る雪。まさに花吹雪。

生活水は沢からの湧き水。電気・電話線は我が家の移住後しばらくしてふもとの集落から引き込まれました。家は主人・コージさんの手作りです。

コージさんがこの場所に移住を決めた八年前。ここがこんなふうに人の住む空間になるなんて、想像するのも難しかった。産まれたばかりの長男を抱えて街からやってきて、未舗装の山道の運転もままならないわたしには、この場所は本当に閉ざされた山の奥に思えたものです。

<はじめましてのごあいさつ>

2007年12月24日 | はじめましてのごあいさつ
みなさま、こんにちは!

わたしたちは茨城県石岡市、古きよき日本の里山の風景を今に残す旧・八郷町(やさとまち)の北端の山の中、農薬や化学肥料に頼らない小規模農業を営む主人・コージさんと、こどものうつわを陶器で製作している妻・いいだかなこの半農半陶夫婦です。

八郷への移住・就農と同時に生まれた長男は早いものでもう小学一年生、その下の長女は4才の保育園児となりました。そのほか外野の主力メンバー、長男誕生の年にやってきた子犬・真っ黒な雑種犬バモスももう6才、今のところ草刈専門日々あちこち放牧中であまり会わないメスやぎ・サクラと、農閑期の棚田に放し飼いのやたらと声のでっかい2羽のガチョウとともにみんな仲良くマイペースに暮らしております。

ITにはほとんど無縁ともいえるアナログなわたしたちがこの度このような“ブログ”を始めることになりました。不慣れな世界でしかも今どき電話回線のみ…。大丈夫なのか?(写真の少ない地味~なブログになる予感…!?でも、まあ手紙の一種だと思っていただければ…

でもしかし、始めるからにはできるだけ充実したものにできるようがんばっていきますので、お時間のあるときちょこちょこのぞいてみてください。



パチャママとは…?
さて、タイトルにも使われ、わたしたちのお祭り出店時の屋号にもなっている「パチャママ」とは南米アンデス地方で豊穣をつかさどる大地の女神。農と陶、それぞれ土から生まれるもの、ということで「おいしい野菜とこどものうつわ」というコンセプトの夫婦異業種間共同出店時の屋号を「パチャママ屋」とさせてもらっています。 南米ペルーの古都クスコで出会った私たち夫婦にとってはゆかりある神様。


あぐりびととは…?
このブログを制作するにあたって、農業生産者と消費者の垣根をこえて、「農」→ひいては「食」全般に携わる人、みんなに当てはまるイメージを求めていいだかなこが勝手につくった造語です。(コレ以前に商標登録などされてた場合、問題ですかねえ…?)

「あぐり」はもちろんアグリカルチャー(農業)のアグリ、それから、あ~んぐりと口をあけておいしいものを食べるときの健康的な食のイメージを重ねています。

求めて農の道を歩む人も「あぐりびと」なら、それを街で購入し、農の現場に思いをはせて料理するひともまた「あぐりびと」、そんな気持ちでみなさまにこのブログに接してもらえたらとってもうれしいです。




どうして今、通信を書くのかということ

減り続ける農業者数
ここへきて農業界はかつてないほどの大きな転換期を迎えようとしているような気がしています。

今、全就業者数に対する農業者人口の割合はどのくらいかご存知ですか?うーん、30%くらい?でも、減ってるというからもしや10%くらいかしら…?

いえいえ、農業者人口は年々減り続け、今やたった4%弱!!、その中での65歳以上の就業者の割合は54%、農業人口の平均年齢は62歳だそうです。私自身その事実を知ったとき、本当に驚きました。これからの日本の農業ってどうなっちゃうの!?

日本の食糧自給率が40%を下回ったということで、2007年秋にはNHKで農業問題の特番も組まれました。今、日本の農業は農業者人口の高齢化、次代の担い手不足による耕地荒廃に加えて、国際的な輸入貿易の圧力にも晒されています。


希望の光
しかし、そんな絶望的ともいえる現状の中のひとすじの光とも思えるのが、若者の新規就農者数が少しずつ増えてきているという事実です。1989年(平成2年)において4,300人だった新規就農者数が、2006年(平成18年)では人81,000人にまで増加しているということでわたしたちの住む八郷の地でも毎年確実に新規就農者が増え続けています。行き詰った物質消費主義のこれ以上の“発展”でなく、心の豊かさや家族とともに生きる自分らしい人生を求めて、自ら農との暮らしを選ぶという新しい価値観が、たくさんの人々の心に少しずつ、しかし確実に芽生えてきているのだと思います。

この数年で十数軒に増えた八郷の新規就農農家は、種の交換や共同購入、野菜出荷の際利用する宅配会社との共同交渉、出荷のためのダンボールの共同購入、ときおり催されるお花見や花火大会、クリスマス会などのイベントや、ときには農機具の貸し借りなどで、ゆるやかにおだやかにつながりあい、ときに助け合いながらそれぞれの畑で日々がんばっています。


半農半陶農園
わたしの仕事は農作物の栽培ではなく、陶器のうつわを作る仕事です。けれど就農以来、家業となった主人の農園を内から支えながら、周囲の若き、古き(?!)就農農家の方々に助けられ、親しくお付き合いさせてもらい、彼らの奮闘を身近に感じる中で、直接の生産者でないからこそ見えるもの、伝えられることがあるのではないかという気がしています。

今、農業のありかたが大きく変わろうとしているとはいえ、農業は農産物を育て上げるだけでは成り立たないと感じています。消費者の方々のもとへ運ばれ、選ばれ、購入されて、また望まれてこそ、いきいきとした農業の循環が生まれるのだと思います。

私は自分が日々畑に出ている立場ではなく、主人先導の就農で、自分から進んで農の道を選べたわけじゃない、という思いから、農についてなにかを伝えるということにとても遠慮がありました。「実際作物を育てていないオマエに農についての何がわかる?」という声が心のどこかで聞こえるような気がしていました。

けれど今、日本の農の存続の危機すら感じる状況のなか、これからの日本の農を支えることが、環境問題や食の安全を含めたよりよい未来のためにどれほど尊い大切なことか、農の現場から次の世代の人に大きな声で伝えなければ、という思いが強くなって今、どうしてもわたしの中から消えません。


みんな、あぐりびと
これからの農の形を考えるとき、農作物を作る人とそれを買うひとが無関係でいてはよりよい関係は築けないと思います。農作物を作る人、運ぶ人、購入する人、料理する人、食べる人、みんながつながって輪を作るべきだと感じています。生産者が偉いでのもなく、消費者が偉いのでもなく、毎日何かを食べて生きていく以上、みんなが自分のこととして農を考え、その循環に参加すること、それが今一番大切なのではないかという気がしています。

日々、畑で野菜を育てるコージさんもあぐりびと、それを料理し、出荷の伝票を書き、手書きの通信を添えるわたしもあぐりびと、そして農園の野菜を注文してくださるお客様も、そしてこのページを興味を持って見てくださるあなたも、みんな「あぐりびと」。それがわたしの思う「みんな、あぐりびと」です。これからの農を考えるとき、農業が閉じられた一部の専門的な分野でいてはもういけないのだと思います。農の側からももっといろんな情報を発信し、それを消費者の方々が自分のこととして受け止めてくれるような、そんな関係になっていくことができるなら、よりよい農の循環というものが生まれるのではないでしょうか。もしこの通信が、日々忙しい農の現場と、都市部の消費者の方をつなぐ開かれた窓となってさまざまなことをお伝えできる場になればこんなにうれしいことはありません。


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カテゴリーごとに…
さて、このブログでみなさまにお伝えしたいことが雑多にいろいろあるもので、各カテゴリごとにテーマを定め、それぞれ少しずつ書き足して行く方向で進めたいと思いますので、ここで主なカテゴリのご紹介を・・・


まず、「あぐりなこころ」
これは、今、わたし自身が取り組もうとしている農にまつわるいろいろな側面をみなさんとともに考察していきたい、と思うページです。

私自身、本当に何もわからず、高い理念も意識もないままこのような新規就農農家の暮らしになだれ込みました。慣れない暮らしに四苦八苦しながらも、ようやく、農についてのこと、少しずつ少しずつ理解して、この農の現場でわたしの感じること、みなさんにもお伝えしたいと思い始めています。

わたしは日々畑に出る生産者ではありません。でも、生活を新規就農農業に預け、日々畑でとれた野菜を料理し、棚田でできたお米を食べ、出荷する野菜にそえる農園通信を毎月欠かさず書き続けています。だからこそ感じること、生産者本人でないから言えることなどできるだけお伝えするとともに、みなさんともう一度「農」ってなんだろう、と一緒に考えていけたらうれしいです。


 「飯田農園のおいしい野菜とレシピ集」
このページでは、飯田農園で農薬や化学肥料を使用せず栽培している野菜と、毎月添える手書きの農園通信に載せた野菜料理のレシピについてご紹介します。

 「いいだかなこのこどものうつわ」
こちらはわたくし、いいだかなこの作るこどものうつわについて。


 「リッキーの食べたい畑」
 小学1年生の息子・力丸(通称リッキー)がこの春から初めて自分の畑で自分の食べたいものを育てることになりました。その名も「たべたい畑」(名称・本人考)せっかくなのでその様子を随時お伝えしていきたいと思っています。さて、無事に収穫の日はやってくるのか・・・・?  


 連載「飯田農園物語」
さて最後がこのブログを始めるきっかけの一因ともなった、わたしたち夫婦の八郷への移住・就農の顛末を綴った飯田農園物語。南米を旅するバックパッカー同士として出会ったわたしたち夫婦が、どうして八郷で農業を始めることになったのか、といういきさつを個人的な記録として書き残しておこうとまとめたことが始まりとなり、さまざまな方のお力のもと、それが手作りの小冊子となり、いつのまにかたくさんの方に読んでいただくようになりました。

多くのかたからの温かいご感想をいただくうちに、こんなわたしたちの無茶な移住・就農のいきさつでも、これから何かを始めようとする人、特にこれから実際就農しようとする方の励みに感じてもらえるなら、読みたいといってくださる方にはできるだけ読んでいただけるようにしようと思いながらも、手作りの冊子には限界もあり、このブログで少しずつ連載のかたちで載せてみようと思いたちました。

農業に興味のあるかた、新天地への移住を考える方、新しい仕事に飛び込もうとしている方、自分のしあわせを探している途中の方、そんないろんなかたにわたしたちからのメッセージが届くことを願っています。

更新は、毎週末1回していけたらなあ、と考えております。



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はじめの一歩
わたしがこんなふうに改めて農について考え始めたころ。実家に帰省した際、町で暮らす独身30代前半の弟にわたしが知りつつある農業界の問題や現状を話したことがありました。人のいい弟はそんな小難しい姉の話にしばし耳を傾けてくれ、そしてこう言いました。

「でもさあ、オレに何ができる?」

わたしはこれが始まりだと感じました。誰かがそれまで知らずにいた何かを知って、何もできないんじゃないかという思いを込めてでも、今の自分に照らし合わせて「何ができる?」と一瞬でも考えること。それは、0から1が芽生えた瞬間なのだと思いました。もちろん1はずっと1のままかもしれない。でもいつかもしかしたら10になるかもしれない。そんな始めの一歩だと思いました。

この「あぐりびと通信」がパソコンの回線を通じていろいろなところへ届いて、どこかの誰かの心で始めの一歩になるとしたら、こんなにうれしいことはありません。こんな通信を書いても、世の中も、他の人も、誰一人の心の中も変わらないかもしれません。でも、これを書き始めることで、ただ一人でも心の中が大きく変化する人間がいるとするなら、それはまず、私自身です。

本当に身近なところから始めたいと思いました。まず、パートナーであるコージさん、そして実家の母、そして弟に…やはり距離が遠くなるほど伝えにくくなると思いました。そして、それが一番伝わりやすい媒体は何かと考えた末、今はやりの「ブログ」にたどりつきました。

IT関連機器はとっても苦手だけれど、少しでも多くのひとに農の現場から何かを伝えられるよう、しばらくがんばってみようと思います。

みなさまもお時間あるとき遊びにいらしてくださいね。
そしてちょっとだけ、普段食べているもの、それを作っている人、
人と農のかかわりを、一緒に感じてみませんか?
いつでもお待ちしています