
その昔、文学少女に恋したおっさんがここに
『“文学少女”と死にたがりの道化』(野村美月/ファミ通文庫)
ついにラノベに手を出してしまった。通勤電車で主要な読書時間を過ごす身には、挿絵が辛い。
かつて「覆面天才美少女作家」だった主人公と、文字通り本を食べる妖怪先輩、もとい文学少女を中心とする学園ミステリーで、文学作品がガジェットになっている。本編とネタ本との絡ませ方が絶妙で、時折挿入される手記が誰のものかわかりにくくするなどの細工も上々。今回のテーマは太宰治。『人間失格』しか読んだことがなくても、読後には一くさり太宰論を語れそうになるのが素敵だ。
いやいや、先輩の迫力に圧倒されて、太宰作品を猛烈に読みたくなるというのが正直なところ。
文学少女と言えば20年ほど前、北村薫の作品にハマって以来、付き合うなら読書好きの女の子と、と固く心に誓ったものです。が、結婚するとなると話は別で、月々の本代は倍かかるわ、客間が書庫と化すわ、引越業者に特別料金を請求されるわで、ロクなことはない。先輩のようにポール・ギャリコの良さを理解してくれる女性に出会えば、結局は全面降伏するしかないのだが。
と、与太話はさておき、ラノベ特有の文体に照れることもあるが、面白いのは間違いない。シリーズで何冊か出ているそうなので、一気に読んでしまおう。
”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)
“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)
“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫 の 2-6-4)
“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫 の 2-6-5)
“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫 の 2-6-6)