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おっさんノングラータ

会社帰りに至福を求めて

江頭2:50のエィガ批評宣言

2007年12月26日 | チラ裏


「本気」が尺度の映画批評
『江頭2:50のエィガ批評宣言』(江頭2:50/扶桑社)

映画好きとは知らなかった。独自の視点で語られる批評も面白い。

江頭2:50のピーピーピー2/3(2007年12月13日)(ニコニコ動画)

君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956』について語っており、一定の評価は与えつつも、

(1)台詞(字幕)がわざとらしい
(2)市街戦のシーンで本気を出していない
(3)水球のシーンを雑に撮りすぎている

と、的確な批評を加えている。(1)は主人公があっさり水球チームに受け入れられた場面を指摘しており、確かにそう感じたが、ソ連に負けないためには必要な英雄なんだろうな、と自分を納得させていた。(2)は、ミャンマー民主化要求デモで日本人カメラマンが銃撃を受けたニュース映像を引き合いに出し、リアリティとは何かを語っている。(3)についても、「俳優は2人だけにして、残りを本物の水球選手にしたら説得力のあるシーンが撮れたはず」と、具体的に解説している。

『君の涙~』は現実に起こった2つの歴史的イベントをフィクションで繋ぎ合わせたわけだが、そのせいでその2つのイベントが嘘臭く表現されてしまったのが失点──ということだろうか。

その点、ワタクシは「英雄譚だからこんなものだろう」で許容してしまったが、常に芸人として本気で生きている江頭2:50の眼には看過できない不実さと映ったのかも知れない。お見それしました。今から本買います。

web版『巨船ベラス・レトラス』?

2007年12月19日 | チラ裏
やる夫が小説家になるようです
やる夫が小説家になるようです(完結編)ハムスター速報 2ろぐ

例えばケータイ小説山田悠介など、web上ではコケにされるべくしてコケにされているけれど、それ以外のメディアでは普通に扱われたりするわけですよ。「売れれば正義」の市場原理が働いているからで、それがwebの民にとっては腹立たしく、攻撃のための燃料になっている。

若い女流作家に文学賞を与えて話題づくりに懸命な今の文壇を皮肉った作品に筒井康隆の『巨船ベラス・レトラス』があるが、上のリンクはそれのweb版とも言うべきもの。エロゲラノベといった、今の出版業界を語る上で欠かせない題材まで網羅しているので、より総括的と言える。いや面白い。

>>1は小説家志望の駆け出し編集者らしい。編集者として大成して欲しいなあ。

何故に主演女優賞に触れない

2007年12月18日 | チラ裏
新婚の瀬戸朝香、加瀬亮にゾクゾク「報知映画賞」授賞式(サンケイスポーツ) - goo ニュース

何故かgooの芸能ニュースでは触れられていないけれど、主演女優賞は『夕凪の街 櫻の国』の麻生久美子。久間元防衛大臣の問題発言に対し、田中麗奈ともども舞台挨拶でチクリとやったので話題になった。

映画は、「櫻の国」編になって脚本も演出もガタガタになってしまい、ああ佐々部清はやっぱり直球でしか勝負できない人(それもコントロールが甘い)なんだなあと嘆息したが、それを補って余りあるほど「夕凪の街」編が素晴らしかった。麻生久美子の演技力に負うところが大きい。

映画の後で原作を読み、原作ファンが映画に文句を言っている気持ちも理解できたが、まあ及第点だろう。あらゆる意味で、原作のほうが作品として立派であることは間違いないが。

最初にこの人をスクリーンで観たのは『ハサミ男』で、ああいう撮り方になるのは納得させられたものの、原作ファンとしては残念な出来だった。海外では評価が高いのが意外(IMDbレーティング6.7)。豊川悦司の演技も大仰で受けつけなかったせいもあり、同じ厳しい目を麻生久美子にも向けていた。深く反省いたします。

イラン映画『ハーフェス』にも期待しております。

冬映画診断

2007年12月15日 | チラ裏
お正月映画特集 診断─goo映画

【診断結果】こだわり映画系

アートや知的なものが大好きなあなた。世間には変わり者と言われようとも、自分のセンスをトコトン大事にする傾向があります。そんなあなたにぴったりなのは、作り手の手腕が光るこだわり映画。感性を刺激する映像に触れて、ウンチクを語ってみるのも楽しいかも?
こだわり映画オススメの1本
マイティ・ハート/愛と絆
世界に衝撃を与えたテロ誘拐事件をアンジェリーナ・ジョリー主演×ブラッド・ピット製作で映画化。
【2008年11月23日公開】

いや、当たってないし。だいたい「お正月映画」と違うし。

2007年10月の反省会

2007年10月31日 | チラ裏
「本は鏡のようなもの。それを読む人の内面を映し出す」なんて言葉があるが、今月は観る人の価値観や知識を問う映画が多かった。


まずは『パンズ・ラビリンス』。様々なメタファーがてんこ盛りで、観る人によって同じシーンでもこんなに解釈が違うのかと驚かされた。ある人は少女の最初の試練である大木を女性器だと捉え、洞に潜っていく行為を胎内回帰と解釈したし、またある人は大木=国家(スペイン)、大木を蝕む大蛙=独裁者(フランコ)だと考えた。夢判断などでは鍵はエロチックな象徴だし、『不思議の国のアリス』のようなエプロン・ドレスが汚されたりするので、もう少し性的なイベントがあったかもしれない。それはさておき、内戦時代から第二次世界大戦にかけてのスペイン情勢がある程度わかっていないと、いろいろ見過ごすことになりかねない映画だった。観て、大いに語れ

その点は『キングダム』も似ている。サウジアラビアとアメリカ、と言うよりは石油メジャーの関係を意識して観ると断然面白くなる。「FBIがサウジのルールを無視して無茶な捜査をする」「無敵のFBIが次々とテロをなぎ倒す」といった点が非難されそうだが、それぞれ911以降のアメリカが積極的に行っている価値観の押しつけ報復の連鎖である。明確には描かれていないものの自己批判的なものが感じられた。単なるアクション映画に終わっていないのがすごい。『シリアナ』を面白いと感じた人と一緒に観たい作品。


偶然だと思うが、今月上映された映画で50年代から60年代にかけてアメリカを語ることができる。

ゾンビーノ』は、ゾンビをペットにできる世界のホーム・コメディ。シュールなギャグは嫌いではないが、映画としてはもう一捻り欲しいところ。舞台は1950年代の郊外住宅地であり、強力な父権やマッチョリズムをゾンビを使って揶揄している。

『ゾンビーノ』ではマッチョの象徴たるゾンビ戦争の英雄が非業の最期を遂げるが、『ヘアスプレー』にも朝鮮戦争の英雄が登場し、主人公たちの行動を阻止しようとする。さすがに殺されることはないが、阻止は失敗に終わり、また性病持ちであることが明かされ、マッチョの権威は失墜する。映画は明るい未来を予感させるダンス・ムービーであり、鑑賞後は実に気持ちよく劇場を後にできる。トラボルタが一瞬見せる『フラッシュ・ダンス』のパロディも素敵だ。

ところが60年代はキューバ危機、ケネディ暗殺があって、ベトナム戦争へと突入していく暗黒の時代となる。その背後で暗躍していたCIAの創設からピッグス湾事件後までを描いているのが『グッド・シェパード』。夫婦生活の破綻を描くなら描く、端折るならもう少し端折って欲しかったし、時間軸の入れ替えに一部未整理な印象を持ったが、インテリジェンスの世界に関わるとろくなことにはならない、ということがよくわかる映画だった。OSSからCIAに組織が変わり、その役割が大きくなっていく過程がよくわかる。また調子に乗ったCIAがピッグス湾事件で大失態を犯し、墓穴を掘ったことも。CIAがケネディ暗殺に一枚噛んでいると思う人には是非観てもらいたい。


ローグ・アサシン』『ロケットマン』『クワイエットルームにようこそ』『仮面ライダー THE NEXT』はだいたい予想通りの作品。『クワイエットルームにようこそ』はシュールな笑いを楽しめるが、予想した以上に重い映画だった。メンタルなことで悩んでいる人、あるいはそういう人が身近にいる人は、何かと考えさせられることだろう。『仮面ライダー THE NEXT』は期待しなかった割には面白かったが、もう少し脚本が整理されていればと感じた。惜しい。


残念賞だったのは『インベージョン』。地雷とわかって踏みました。B級映画としても何とも中途半端な出来で、非常にがっかり。「共産主義恐い恐い」が使えないのなら、いっそ原作に忠実に作るとかすれば良かったのにと思う。セーターに密着した二コール・キッドマンの形の良い胸ばかりが記憶に残っている。

駄目かと思ったらやっぱり駄目だったのが『カタコンベ』。友人はサイコ・スリラーとして面白かったと評価していたけど、あらゆる意味で駄目だった。


読書傾向としては新刊ではなく少し古い作品ばかり読んでいたが、機本伸司の『神様のパズル』と『僕たちの終末』は当たりだった。前者はもともと評判が良い作品だったが、後者はどちらかと言えばwebで酷評されていた。つくづく他人の評価は当てにならないと思ったが、その逆のパターンが『イニシエーション・ラブ』。対象年齢を知りたい。もちろんこの評価も個人的なものであり、当てになるとは限らない

マイティ・ハート-愛と絆-』の予習として、『誰がダニエル・パールを殺したか?』を読んだが、読み物としてはそれほど面白いものではなかった。しかしダニエル・パール事件の大まかな流れを再確認でき、主犯とされるオマルがたどってきた道のりを知ることができたので、映画を観る上で大きな助けになると思う。だったら未亡人となったマリアンヌの『マイティ・ハート』を読めば良さそうなものだが、主観的になりすぎてないかと不安だったために『誰が~』を選んだ。こちらはこちらで取材小説のスタイルをとっていたので、十分に主観的だったのだが。