おっさんノングラータ

会社帰りに至福を求めて

今月観るならこの10本(12月)

2007年12月31日 | 映画用インデックス
2007年鑑賞済みの作品一覧
●このエントリは12月公開の映画鑑賞予定/結果です。最新のエントリはこの直下にあります。



【今月観るならこの106本】

12/28~
エイリアンズvs.プレデター

12/22~
俺たちフィギュアスケーター

公開中or公開終了
光の六つのしるし
ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記
ザ・シンプソンズMOVIE
椿三十郎
スマイル~聖夜の奇跡~
君の涙 ドナウに流れ
アイ・アム・レジェンド
カンフー無敵
スリザー
ブラザーサンタ
ベオウルフ/呪われし勇者
XX(エクスクロス)~秘境伝説~
ONCE ダブリンの街角で
ダーウィン・アワード

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“文学少女”と死にたがりの道化

2007年12月27日 | 読書2007


その昔、文学少女に恋したおっさんがここに
『“文学少女”と死にたがりの道化』(野村美月/ファミ通文庫)

ついにラノベに手を出してしまった。通勤電車で主要な読書時間を過ごす身には、挿絵が辛い

かつて「覆面天才美少女作家」だった主人公と、文字通り本を食べる妖怪先輩、もとい文学少女を中心とする学園ミステリーで、文学作品がガジェットになっている。本編とネタ本との絡ませ方が絶妙で、時折挿入される手記が誰のものかわかりにくくするなどの細工も上々。今回のテーマは太宰治。『人間失格』しか読んだことがなくても、読後には一くさり太宰論を語れそうになるのが素敵だ。

いやいや、先輩の迫力に圧倒されて、太宰作品を猛烈に読みたくなるというのが正直なところ。

文学少女と言えば20年ほど前、北村薫の作品にハマって以来、付き合うなら読書好きの女の子と、と固く心に誓ったものです。が、結婚するとなると話は別で、月々の本代は倍かかるわ、客間が書庫と化すわ、引越業者に特別料金を請求されるわで、ロクなことはない。先輩のようにポール・ギャリコの良さを理解してくれる女性に出会えば、結局は全面降伏するしかないのだが。

と、与太話はさておき、ラノベ特有の文体に照れることもあるが、面白いのは間違いない。シリーズで何冊か出ているそうなので、一気に読んでしまおう。

”文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫)
“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)
“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫 の 2-6-4)
“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫 の 2-6-5)
“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫 の 2-6-6)

江頭2:50のエィガ批評宣言

2007年12月26日 | チラ裏


「本気」が尺度の映画批評
『江頭2:50のエィガ批評宣言』(江頭2:50/扶桑社)

映画好きとは知らなかった。独自の視点で語られる批評も面白い。

江頭2:50のピーピーピー2/3(2007年12月13日)(ニコニコ動画)

君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956』について語っており、一定の評価は与えつつも、

(1)台詞(字幕)がわざとらしい
(2)市街戦のシーンで本気を出していない
(3)水球のシーンを雑に撮りすぎている

と、的確な批評を加えている。(1)は主人公があっさり水球チームに受け入れられた場面を指摘しており、確かにそう感じたが、ソ連に負けないためには必要な英雄なんだろうな、と自分を納得させていた。(2)は、ミャンマー民主化要求デモで日本人カメラマンが銃撃を受けたニュース映像を引き合いに出し、リアリティとは何かを語っている。(3)についても、「俳優は2人だけにして、残りを本物の水球選手にしたら説得力のあるシーンが撮れたはず」と、具体的に解説している。

『君の涙~』は現実に起こった2つの歴史的イベントをフィクションで繋ぎ合わせたわけだが、そのせいでその2つのイベントが嘘臭く表現されてしまったのが失点──ということだろうか。

その点、ワタクシは「英雄譚だからこんなものだろう」で許容してしまったが、常に芸人として本気で生きている江頭2:50の眼には看過できない不実さと映ったのかも知れない。お見それしました。今から本買います。

アイ・アム・レジェンド(80点)

2007年12月26日 | 読書2007


「伝説」の本当の意味を知りたい人はこちらへ
『アイ・アム・レジェンド』(リチャード・マシスン/ハヤカワ文庫)

本書は以前『吸血鬼』(または『地球最後の男/人類SOS』)の新訳版であり、もちろん映画公開に合わせて出版された。

映画は、無人のニュー・ヨークが描かれる前半こそ興味深いものの、それ以外に見るべきものはなく愕然とさせられる。が、原作は古さを全く感じさせない秀逸なSFホラーであり、映画では無視されたあらゆる要素が面白くて仕方がない。

決定的に違うのは、ヴァンパイアに2種類いること。生きたまま感染した者と、復活した死者とである。前者は、原始的ではあるがコミュニティをつくり、知性も回復の兆しを見せる。映画では何となく描かれただけで、放っておかれたエピソードである。彼らにとってはロバート・ネヴィルこそが忌むべき存在であり、伝説的な恐怖の対象であった。

孤独で辛いサバイバルを切り抜けた後、終盤でネヴィルに突きつけられるこの現実は、読者に対しての問いかけでもある。

訳者も良い仕事をしており、映画に興味があってもなくても、読んでおいて損はしない一冊だ。

(評価は100点満点です)
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光の六つのしるし(25点)

2007年12月25日 | 映画2007
映画化に向かないファンタジー小説を無理矢理やっちゃいました
IMDb(4.6/10)

ファンタジー小説の映画化が引きも切らないが、『光の六つのしるし』は完全な失敗作。原作の魅力を見事なまでにスポイルしており、アメリカ人はハンバーガーを食ってコーラでも飲んでろ剣と魔法とモンスターが出てこないとファンタジーじゃないと言うRPG脳もすっこんでろ

スーザン・クーパーの原作小説は光と闇との戦いを描いたものだが、光と闇の軍勢がドンパチする話ではないのだ。


原作は60年代のイギリス農村部が舞台だが、映画は現代、アメリカで暮らしていたスタントン一家がイギリスへ引っ越してくる。生活は豊かではないが家族愛に満ちた大家族の筈が、両親は日々の生活で磨耗しているように見えるし、兄弟はそろって馬鹿だ。大好きな家族に自分の正体を隠して行動するところがポイントの一つなのに、さっさと家から出たいと思わせる環境にしてどうする? おまけに父親は『光と闇』と題された論文を書いたり、しかも書いただけで意味はないし、6番目の息子トムは誘拐されたりと、頭の悪い改変のオンパレードが続く。

最悪なのは古老の扱い。預言者マーリンのこの世界の姿であるメリマンは怒りっぱなしの老人に過ぎないし、ドーソンにジョージがクロスボウや剣で武装するなんて、悪夢以外の何ものでもない。原作でも光と闇は戦うが、物理的に両者がやり合うわけではない。

そのせいか光と闇の間で揺れ動く「旅人」の存在がカットされた。ウィルの考え方にも大きな影響を与え、「光」の非情さを象徴するエピソードでもあったのに、である。代わりに魔女がクローズ・アップされているが、それなら「旅人」が果たした役割を担わせればいいものを、色仕掛けで終わっている。

闇代表の「騎手」もまた、扱いがひどい。何で白馬に乗ってるの? ビジュアル・イメージに違和感が生じるだけで、どうして原作通り黒馬にしなかったのか理解に苦しむ。

また時間移動が頻繁に行われ、映画ではさながらタイム・トラベルのように描かれるが、原作では古老は時間の埒外に生きる存在であり、時間軸を移動するわけではない。妹を連れて時間旅行させるなど、原作を読んでいないとしか考えられない。


原作は「七男坊の七男坊は千里眼を持つ」など、イギリスの伝承やアーサー王伝説を下敷きに書かれた小説であり、スーザン・クーパーがそれらのエピソードを巧く紡ぎ合わせて独自の世界観を構築している。それらを知っていたほうが理解が深まるが、知らなくても十分に楽しめる内容である。

映画ではウィルが闇の勢力を滅ぼしてしまったように描かれたが、彼は「探索者」に過ぎない。原作で「騎手」を撃退したのは「狩人」である。それに「しるし」が唯一のアイテムというわけではなく、「聖杯」や「聖剣」が登場し、別の子供たちが探索するのだ。


頭の中であれこれ考えながら読み進めるのが楽しいタイプの小説を、無理矢理ハリウッドの文法で解釈したために、このような悲劇を招いたということになるだろう。

このシリーズは普通の兄妹がアーサー王伝説に関係する聖杯を探し出す『コーンウォールの聖杯』から始まっている。そもそも剣も魔法もモンスターも登場しないこの小説を面白く映画化する自信がないのなら、最初から手を出すべきではなかったのかも知れない。

(評価は100点満点です)
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補遺:
「闇の戦いシリーズ」を映画化するのであれば、2作目である『みどりの妖婆 』からにすべきではなかったか、とが言っていた。ビジュアル的に派手だし、『コーンウォールの聖杯』の兄妹にウィルを加えた4人の冒険で、興味を惹くエピソードも多い。そこでシリーズの面白さを担保しておいてから、過去に戻って『光の六つのしるし』と『コーンウォールの聖杯』に戻るという構成である。

気のせいかも知れないが、訳文も1作目より2作目のほうがこなれており、読みやすくなっている。

「闇の戦い」シリーズその他:
灰色の王 (fantasy classics 闇の戦い 3)
樹上の銀 (fantasy classics 闇の戦い 4)