ちぐさ、3訪目。
『Hot Coffee』 を。
横浜を代表する ジャズ喫茶 である。
昭和8年(1933年)の創業とゆーから、
全国でも、ほとんど最古のグループに入るのではないだろうか。
ヒノテルや ナベサダや 秋吉敏子が若かりし頃
この店に通って研鑽に努めたとゆー、ちょっと凄い店なのだ。
残念ながら、2007年に閉店してしまったのだが、
2012年、地元の有志により移転復活。
現在は、一般社団法人として運営されている。
詳しくは こちら を。
☆☆☆
私は横浜の出身である。
10代の終りの頃、ジャズとピアノに心奪われて、
当時、関内南仲通にあった、
「シカゴ」 とゆー ライブ・バー に入り浸っていたのだが、
その頃、高名なこの店に行ってみたことがある。
店のドアを開けた瞬間、目に飛び込んできたのは、
真正面に鎮座する巨大なスピーカーと大音量!
ずらりと並んだ小さな席に座った人たちが、
皆一様にアタマを抱えている、異様な光景であった。
かかってたのは、エバンスの 「Undercurrent」。
その時の音と匂いまで、はっきりと記憶している。
当時既に、いわゆるジャズの楽しみ方とゆーのが、
随分、気楽にライトになっていたのだが、
その人たちは、まさしく正統のアイデンティティをもって、
深刻なる音の啓示に、自己の深層と真正面から対決し
そして、打ちひしがれていたのである。
その衝撃に早々に退散したのを、懐かしく思い出す。
☆☆☆
それから、実に30年の歳月が流れ..
一般社団法人として移転復活したという 記事 を目にして、
2回目に訪問したのが2012年である。
件のスピーカーから、迫力のサウンドが隅々まで満たされ、
皆ひと言も喋らずにじっと聴き入る光景には、
あの時ほど重篤ではないが、同質のものがあった。
ただ、30年ぶりに改めてじっくりと聴いたその「音」は、
今まさに目の前でプレイしているかのような臨場感で、
且つ、太く・温かく、本当に素晴らしかった。
☆☆☆
それから更に3年、今日は3訪目。
あの 「音」 に、もう一度この全身でまみれたくなって、
横浜行きの電車に乗った。
桜木町で下車し、野毛方面に歩く。
店のドアを開けると、あのビビッドな音があふれ出した。
ほぼ満席だったンで、スピーカーの真ん前に着席。
後ろのひと、スンマセン..^^;
ピーターソンの 「We Get Requests」。
耳タコのこのアルバムが、かつてない臨場感で迫ってくる。
おお!これだこれだ。遥々来た甲斐があった。
御高齢で如何にもゆー髭を蓄えた店の人が、
数冊のファイルを無言でテーブルに置いていく。
レコード・リストだ。リクエストをどうぞ、ゆー意味である。
私は、敢えてリクエストはしない。
自分の辞書への "こだわり" と "囚われ" から
解放されたところに、メンタルを置いておきたいからである。
その方が 「音」 そのものを享受出来るのだ。
今日の収穫は 「DON RANDI」。
西海岸で活躍したピアノの名手。知らんかった..
☆☆☆
この店で約2時間 ゆっくりとさせていただいたが、
頼んだのは、ホット・コーヒー一杯だけ。
他の客も、まずまず似たようなものであろう。
確かに、これでは経営していける訳がない。
あ、今は 「一般社団法人」 だから、それでいーのか^^
この店の音と空気を、心より堪能出来て嬉しかった。
コルトレーンの 「Ballads」 を背中に浴びながら店を出た。
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心地良く茫然としており、全身が熱くなっていた。
その余韻は、千葉に帰ってきてからも、まだまだ続いていた。
♪ アルバムタイトル or ジャケ写 をクリックすると音が聴けます
(YouTubeリンク:パソコンからのみ)