松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆審議会の作法③ー真面目に議論する・流山市自治基本条例策定調整会議の体験から

2016-12-28 | 審議会の作法

 会議の場で、真面目に議論するというのは案外難しい。これは流山市自治基本条例策定調整会議の体験から。だいぶ忘れかけていたが、講演会の議事録があった。

 基本的考え方は、次のとおりである。
 
市民協議会が考えた案に対して、行政とまったく同じ案というのは考えにくい。立場や行動原理が異なる分、ズレが出てきて当然である。市民の案を丸呑みする事例もあるが、それはまじめな態度とはいえないだろう。市民会議の場合、いつもここで失敗する。両者の溝を埋める機会を持たないために、不信が増幅してしまうのである。行政は市民の案を勝手に変えた、尊重するといっていたではないか・・・。

 この策定調整会議は、2008 1 5月に計7回開催された。市民協議会から5名、行政から5名(副市長、担当部課長)が参加し、私が調整役+進行役を担当した(最終回は市長も参加した。もう一人の調整役が今井さん)。足して2で割るのでなく、創造的な調整という発想で取り組んだ。裏取引なし、すべてオープンの場で、相互に主張し、妥協していく作業を両者がやり通した。

平成22年度ミニ講座「行政とNPOの協働のあり方について」(日時 平成23224日(木)13:3017:00 会場 大阪府社会福祉会館)の講演から〉

 実はこれまで行政と市民がまじめに議論をしてきたことがあるでしょうか。私も昔、体験があります。市民の人たちが提案をしてきました。一見して、これはもうできない、無理だと分かるわけです。でも、そのときは、「どうもありがとうございました」と言ってもらいます。出した方は、受け取ってくれたのだ、理解してくれたのだと思います。そこから、糸がこじれてしまうのです。もうそれはやめなければいけません。

 これは流山市での体験ですが、市民の人たちが出してきた案があります。他方、行政が考えた案があります。両者の案は違うのです。同じわけがない。同じだったら変です。立場が違う、情報が違うので、案が違うのです。大事なのは、その溝を埋める努力をすることです。流山市では、すべて裏取引一切なし、全部オープンな場で徹底的に議論しようとしました。行政側と市民側の人たちがオープンの場で議論をします。そして、足して2で割るのではなくて、より良いものを見せていくということをするわけです。

 私が決めたルールが二つあります。市民側については、先ほどの主権者、私たちは雇い主だから、雇われ主、市役所に「あんたたち、私たちの言うことを聞けよ」と言うのはナシです。そんなことを言ったら議論にならないわけです。行政の方は、やる気もないのに「分かりました」というのも、ナシです。市民の方が、もしそれを言ってしまったら、1回目はイエローカード、2回目言ったらレッドカード、退場です。行政の方は、できもしないのに「やります」みたいなことを言ったら、私は役所のことはよく分かるので、できるかできないかが分かるので、本当にできるのか、どうやってやるのかを徹底的追求します。お互いに、できるものはできる、できないものはできないといって、まじめに議論していこうということにしました。

 そうすると、不思議な共感が生まれてくるのです。まじめに議論していると仲良くなるのです。最初はぎくしゃくしますが、そのうち仲良くなるのです。面白いことがおこります。そのうち同じ行政の中で意見が分かれるのです。企画部長と副市長が、「副市長、それは違いますよ」、「企画部長、それは違うでしょう」とやりだすのです。議論しているのですから、同じわけがないのです。そうなっていくと不思議な共感が生まれてきて、本当に仲良くなってどんどん進むのです。

 これを実践するのは難しいけれども、やっていくことが大事ではないかと思います。難しいのはよく分かっています。しかし、そういうふうにしないとみんなの力が出ないのです。今日では、自治が、その段階に入ってきたと思います。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
懐かしいですね~ (寺沢)
2017-01-05 12:56:56
元流山市職員の寺沢です。
懐かしいですね、自治基本条例の策定作業は「原案を市民がまちの声を聞きながらすべて作成、市がそれを尊重してとりまとめ、最後に相互に徹底的に議論してまとめあげる。」プロセスを本気で行ったもので、苦しかったですが確実に明るい未来をみんなで考えた希望的なものでした。
どれだけ「自治が浸透したか」はわかりませんが、このときの遺伝子が流山の隅々には生きていると思いますし、それがいくつかの事業にもつながったんだと感じます。
ちょっとしたことですぐに「炎上」させられ、時代も行政も内向きになってきていますが、こういった感覚・愚直さが見直されるといいですね。
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Re:懐かしいですね~ (マロン教授)
2017-01-06 06:57:10
ほんとうに 

流山の自治基本条例づくりは、寺沢さんらしい、正面からぶつかる仕事でしたね。

前は、講演などで、この時の話をよくしましたが、最近では、少なくなったのは、自治を取り巻く変化からかもしれません。

寺沢さんとは、一緒に本を書く約束を果たしていませんが、忘れてはいませんよ。
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Re:Re:懐かしいですね~ (寺沢)
2017-01-06 09:26:44
たぶん、このときの時勢(と自治基本条例の性質上)で、正面からぶつかっても大丈夫だったんでしょうね。
ここ数年で自治体を取り巻く環境が大きく変わって、行政は自信を持っていろんなことをやりにくくなったうえに、同時に今までフォーカスされなかった「経営」の視点が必要になったため、難しくなってしまったんでしょうね。
行政は「このまちのプロ」として堂々と経営的なアプローチを提案し、市民の夢・ニーズと真摯に議論して形にしていってほしいですね。
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