今回は、住民を基本に話を組み立てた。
住民の話は、信託論とは切り離せない。国政については、憲法には「国民の信託」と書いてるので問題はないが、地方自治については、複数信託論と再委任論がある。
国民国家を前提する限り、複数信託論だけでは無理があるし、地方分権前に戻ったような再委任論では物足りない。両者が入り混じったところが正解なのだと思う。汽水域のようなものだろう。
第10条の住所の概念も、役務の提供を受ける権利の法的性格も、単に判例を覚えても、それでは50点である。学生ならば、それでもいいが、地方自治を担当する立場では、判例では、都市公園は住所になりません、役務の提供を受ける権利は自由権的な評価をしていますといっても、仕事には活かせない。
具体的には、これまで住民が自由に使っていた公園や道路について、判例に従って、住民の利用権が認められたと考えると、役所が、公園を廃止して、保育所をつくろうとすると、訴訟になるということである。
したがって、この判例の射程距離を学ぶとともに、自治体職員が学ぶべきは、訴訟になっても、役所の主張は、いちいちもっともだと世間を納得させる、裏付けと手続きを踏むことを学ぶことが重要になる。それが、自治体職員が、この判例から学ぶことである。
法務を学び、地方自治法を学ぶというの真髄であるが、今回は,eラーニングがあって、地方自治法の応用編ということなので、私の方も、こんな話ができて、面白い。
あと1回、次は、地方分権から話を積み上げていこう。条例論を考えて見たいと思う。