松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆熟議の市長選挙69・公開政策討論会条例が問いかけるもの(3)

2020-08-09 | 1.研究活動
 選挙は怖いもの、近づかないほうがいいものというのが、多くの人のイメージだろう。

 公職選挙法は、べからず集といわれ、禁止事項が山ほど書いてある。 あいさつ状の禁止という条文もある。
 第百四十七条の二 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域)内にある者に対し、答礼のための自筆によるものを除き、年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これらに類するあいさつ状(電報その他これに類するものを含む。)を出してはならない。

 つまり、市長になって、年賀状を出すと公職選挙法違反といわれ、新聞にも、でかでかと書かれることになる。最近では、年賀状は減ってきたが、それでも社会で普通に行われていることやって、違反というのは、恐ろしい。

 社会一般の判断基準が通用しないのが選挙の世界となっている。うかつに近づけば、法律違反になる。ならば近づかないほうが、いいということになる。特に、若者は、慎重なので、若者の選挙離れをますます加速させる。

 選挙に近づくと、法律違反でなくても、社会的にも嫌なことに見舞われる。公務員ならば、現職市長と対立する候補者の主張を聞きたいと思って、個人演説会に参加すると、あの職員は反対側だと後ろ指をさされ、あるいは市長の手先がスパイに来たと言われてしまう。そのリスクを考えると、近づかないほうがいいということになる。

 市民も同じである。個人演説会に参加すれば、色眼鏡かスパイ扱いにされると思うと、そんな面倒くさいことに関わらないほうがいいと思うのは自然である。

 選挙は、よそ者の入れない、限られたサークル内での活動になり、新しい人は参入しないから、時間がたてばたつほど、メンバーがどんどん高齢化して、人が減ってくるので、ますます投票率は下がるのは当然である。

 こんな状況で、いくら啓発ビデオをつくっても、作った人しか見ないことになる。発想を大きく転換するしか道はないであろう。そのヒントが、選挙「管理」から、公開政策討論会→選挙を「まちづくり」への転換である。

 選挙の「管理」は、政治との距離を取り過ぎることになった。選挙の公正中立は、一党一派に偏してはならないことであって、現実の政治から離れ、非政治性を要請するものではないはずである。
 選挙の公正中立を大前提としつつ、公開政策討論会→選挙を「まちづくり」に転換すれば、選挙は、近づかないほうが無難なものから、身近なものに変わるのではないかというのが、この条例が問いかけるものである。

 まちづくりと考えると、一気にいろいろなアイディアが生まれてくる。前に書いた選挙お祭り広場もその例である。それを研究する段階になったということなのだろう。
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