松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆ヤングケアラー研究会

2024-03-17 | ヤングケアラー

 自治体学会のヤングケアラー研究会があった。神戸市の上田さんから神戸市の取り組みについて報告があった。他の自治体が参考にすべき意義のある報告だった。

 気がついたことやなるほどと思ったことをメモしておこう。より適切な表現があると思うが、忘れないうちに書いておこう。

1.なぜヤングケアラーなのか 

 自己形成的自立期にヤングケアラーになることの弊害・ダメージの大きさ。経済的自立期や社会的自立期ならば、人の相談したり、生きる知恵を体得しているので、比較的、うまくいなすことができる。しかし、人格形成的自立期だと、いなす術も十分に体得していないし、人格形成にダメージを与える。基本理念の部分なので、しっかり議論したい。

 10代と20代後半とでは、問題状況や施策の質が違ってくる。

2.お手伝いとケア(負担)との違い

①親からの見守りがあるかないか、②こど・若者が自由になる時間があるかないか、③子ども・若者の選択(ケアをしない選択)ができるか、できないか これは分かりやすかった。

3.子若法の改正として

 ヤングケアラーは、子若法の改正として、法制化されるようだ。子若法は、常に道徳観や家族観がぶつかり合う法律なのでヤングケアラーの問題がゆがめられる心配がある。子ども・若者育成支援推進法において、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と定義されるようだ。まさに「過度」の部分で、道徳観や家族観がぶつかり合う。その意味で、2のお手伝いとケアの違いは重要である。同時に、1のなぜヤングケアラーなのかが問われる。

4.子どもと先生の話

 先生から「休めてるか」と言われて、本当にうれしかった。先生から「言い訳するんじゃない」と言われて、二度と大人に話をするものかと思った。他者への配慮、思いやり。他者の立場に立つことの重要性。憲法13条の個人の尊重。理解のための普及啓発活動が施策の第一だろう。

5.寄り添う仕組み

 神戸市の例は、寄り添う仕組みである。窓口があり、相談があれば一義的に受ける。絞ったり排除したりしない。

6.実務の知恵

 ヤングケアラー担当課長は、さまざまな関連課の課長を兼務する。縦割りに付随する個人情報活用の壁を乗り越えるためである。実務家の知恵だと思う。

7.事件があって、それを政策につなげる問題意識、リーダーシップは見習うべきことである。神戸市は市長の問題意識から始まるが、担当レベルの問題意識が、政策につながっていくような流れが一番、自然。今は、この点が弱い。

8.神戸市のような事例、つまりほかの自治体が参考にできるような事例を伝えるのが、研究者の役割ではないか。また自治体学会も、こうした事例を学ぶ機会をつくっていくのが、生き残り戦略ではないか。

 

追記

いくつか感じたことがありますが、ヤングケアラー法が、子若法の改正というのは、少し驚きました。同時に危惧しました。

子若法は、常に青少年の健全育成という、もうひとつの道徳観、家庭観とのせめぎ合いを続ける法律ですが(それが「過度の」に現れますが)、今後、運用が、どうなるか注目したいですね。

これまでの流れに飲み込まれるか、あるいは新たな展開ができるかは、ヤングケアラー制度の基本理念と自治体の実践にかかっているように思います。その意味では、きちんとした研究に基づいて、早めに、理念と政策を提案して、流れ(自治体の制度化や運用)をリードすることが必要だと思いました。

外堀が埋まってからの修正は、しんどいし、とても難しいので。

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