松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆地域経営と経営管理手法(相模女子大学)

2016-06-06 | 1.研究活動

 きらりよしじまのシンポジュームが終わった。

 今回は、地味なテーマなので、どれだけの参加者があるか心配した。ちなみに、ゼミ生のKさんが、ほとんど参加者が来ない夢を見たそうであるが、蓋を開けてみると、一般参加は40名近くになった。

 アンケートをみると、フェイスブック、町内の掲示板を見たというのがあり、学生たちの地道なPR活動と、区役所や自治会等のみなさんの協力のおかげだと思う。内容の充実もさることながら、学生たちの努力が報われたことに安堵した。

 きらりよしじまの高橋さんから1時間の報告があり、その後、質疑となった。報告のほうは、実践に裏付けられた事例が豊富に紹介されておもしろかった。山形県と神奈川県とでは、条件が違うので、そのまま適用することは難しいかもしれないが、たくさんのヒントがあった。

 質疑のほうは、このシンポジュームの常であるが、今回も質の良い質問がたくさん出た。報告をさらに掘り下げて、会場で問題意識を共有できたと思う。その質疑の中から、今回、改めて考えたのは、「地域経営に経営管理手法を導入する」という点である。きらりよしじまでは、民間の経営管理手法を地域経営の中に、ふんだんに取り入れ、それが成功している点が特徴である。

 この点、会場からの質問にもあったが、実際には、地域経営に経営管理手法を取り入れるのは難しい。特性要因図(魚の骨)などを持ち出すと、すぐに、ここは会社ではないという批判を受けるからである。

 むろん、この批判は、一面では正しく、注意にしなければいけない。それは会社と地域は、行動原理が違うからである。会社の場合は、利益追求のためという目標がはっきりして、それに向けて直線的に進めばよいが、地域の場合は、目的も抽象的であり、さらに住民間の親睦や協力も重要な目的でもあるからである。そのために、回り道そのものにも意味が出てくる。

 しかし、そうやって行ってきた地域経営が、今は岐路にあるということなのだろう。きらりよしじまの例を見ると、地域経営にこそ、経営管理手法を導入すべきで、そのためには、任意組織という地域コミュニティではやりにくいので、法人格があって、収益活動ができるNPOという組織形態に変えたのである。これがさらに進めば、NPOの一部を分社化して、会社形式の地域組織も生まれてくる。

 問題は、経営管理手法を実際に地域経営の取り入れる難しさである。農村地域の場合、KJ法や特性要因図は、地域の人たちの人の好さと、何か都会的な手法に幻惑させられて、やってみたらということになるかもしれないが、都市部では、そんな手法は会社で当たり前のようにやってきた人が多いので特に新鮮でもなく、また、地域活動と会社は違うという強い固定観念に阻まれて、容易に導入できない。

 今後の研究課題としては、地域コミュニティの経営に、経営管理手法(技術)を導入する範囲や領域、そのあるべき組織形態、導入までのプロセスなどが論点となるだろう。

 このシンポジュームは、ゼミ生が運営している。学生たちにとって、シンポジュームって何?というところから、出発しているので、それこそ手探り、手作りでやってきた。いくつかの失敗があるだろうが、やり遂げたという達成感は、この写真に出ていると思う。

 終了後、ボーノの6階の食べ放題に行った。大いに歓談した。帰りがけ、一緒になった学生の一人が、食べ放題ではいつもたくさん食べてしまうが、今回は、みんなとたくさん話をしたので、あまり食べなかったと言っていた。シンポジュームを通して、ゼミ生同士の共感や連帯感が、さらに深まったのだろう。教員としては、何よりである。

 

 

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