松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆自治体は人口を増やせるか(本郷台)

2015-08-13 | 1.研究活動

 神奈川県下自治体職員による研究会である。回数は、わからなくなった。

 人口減少が著しい県西地区、三浦半島地区を対象に、人口を減らさない政策を考えるのがもともとの発端である。検討は、各種統計を使って、数字として出してみた。前回まで、
 ①人口増加は、交通利便性で開発できる土地があることが決定的である。そんなことを言われても、自治体にとってはいかんともしがたいことで、いわば運命は決まっているようなものである。
 ②鎌倉のようにブランド価値があるところ、ニセコ町のように、外国人観光客の激増で、それに伴う産業関連で転入者が増えるなど、まれに例外がないわけではない。そこをヒントに、人口増加の秘密を探るという研究もあるだろう。
 ③交通利便性以外の要素で人口が増えた自治体があるが、自治体の政策的努力で増やしたわけではないだろう。正直、ランキーとというのが率直な感想ではないか(もちろん、後押しする施策はあったろうが)。
 ④この研究会では、人口が増えているケースを分析して、そこに成功のヒントを探すという道ではなく、人口は増えてはいかないが、行政経費が安く、住みやすいまちの可能性を探ることになった。

 今回の私が感じたものとしては、
 ⑤増田レポートは、赤ちゃんを産める年代の女性の有無を基準に、消滅自治体かどうかを決めたが、鎌倉市などを見ると、この法則に当てはまらない。若い女性世代は、大きく減っているが、市全体の人口は減っていないからである(40代、50代のお金持ちの女性が増えているのだろう)。考えてみれば、人口増の要因は、自然増だけではない。
 ⑥箱根町は消滅可能性自治体であるが、お金持ちが別荘を持ち、観光客も多い。若い女性は、小田原市に住み、そこから通ってくる。箱根町が、とうてい消滅するとは思えない。要するに定住人口だけでは判断できないということである。今日の地方自治では、住民概念だけでなく、通勤通学の人も含む市民概念が必要だということである。
 ⑦東京などは、転入してくる女性は増えているが、その割には子供が増えているわけではない。つまり社会増がストレートに自然増につながるわけではない。おそらく働くために東京にやってくるのだろう。この場合、若い女性の流入だけではだめで、彼らが、結婚し、子どもを産むという環境の整備が必要である。
 ⑧この中で、自治体ができるのは、結婚の機会づくり(出会いの場など)、出産の機会づくり(待機児童問題など)であるが、これらは、十分であるかはともかく、各自治体ともすでに行っている。新たなメニューはそうはないのが現状か。
 ⑨結局、人口増加策のうち、地方でできるのは限られていて、最終的には、国全体による人口増加策に戻ってしまう。それには思い切った制度変革が必要であるが、その議論をするのは住民一人ひとりなので、地域では、暮らしの中から、この問題を考える機会をつくっていくことになる。

 知的好奇心をくすぐる研究会になっている。この日はお盆の真っ最中であるが、全員参加。そういえば、私もお盆の最中に夏休みをとることがほとんどなかった。電車がガラガラということは、会社は休みなのだろう。

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