松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆なぜ数的処理が試験科目なのか

2012-07-07 | 1.研究活動
 公務員の採用試験で、合否のポイントになり、そして多くの人が苦手なのが数的処理である。でもなぜ数的処理が試験科目なのか。
 数的処理については、ウィキペディアには、次のように書かれている。
 公務員試験の「特徴的な事項として、「数的処理」と総称される数学的・算術的な思考力・推理力を問う問題群の存在が挙げられる。「数的処理」はさらに「判断推理」(論理パズル的な分野)・「数的推理」(通常の数学・算術に最も近い分野)・「資料解釈」(統計表やグラフ等の解釈)の3分野(分類の方法によっては、それらに「空間把握(空間観念とも呼称され、空間パズル的な分野)」を加えた4分野)に細分化される」。
 具体的には、こんなような問題である。「1冊の本を作成するのに1日6時間労働の場合、 学生A、B、Cが1人で担当する. とそれぞれ12日、8日、4日を要するところをAが1日3 時間、Bが1日2時間、. Cが1日1時間働き、8日間で完成させることにした。しかし、 ...」(sapporo.o-hara.sc/files/pdf/mondai.pdf)
 見ただけで頭が痛くなってしまうが、こうした問題を解けないと公務員になれないのである(私はよく横浜市に受かったものだと思うが、法律学等の専門科目があったので受かったのだと思う。一般教養だけの相模原市だったら受からなかったろう)。
 これは数的な思考力、推理力を見ているということであるが、仮に、そうだとしても、市町村の仕事に、数的処理を解く能力は、本当に必要だろうかというのが私の問題意識である。私自身で言えば、数的処理は全くできないが、仕事で困ることはなかった。
 要するに、数的処理ができる人は頭のよい人で、たしかに頭が良いことは悪いことではないが、それが市町村で必要としている職員なのか。国や県のお役人ならば、頭のよい人が必要かもしれないが、市町村では、常識があればよく、むしろ市民と対等に話ができ、市民の苦情にもめげず、市民のよいところを引き出せる人こそが望まれる(これが市町村で「頭のよい人」)。地方分権で、機関委任事務がなくなり、国の役人と市町村の役人の仕事が大きく変わったのに、相変わらず採用試験は、国のお役人を採用する方法でやっている、本当にそれでよいのかというのが私の問題意識である。数的処理をやめた茅ヶ崎市のやり方は、地方分権時代にふさわしい公務員を採用しようという試みであるが、地方分権から10年もたっているので、他の自治体でも、思考停止から脱し、新しい模索を始める必要があるだろう。
 なぜ、私が、いまこういう議論をしているのか。
 実は、私のゼミ生に、公務員になったら、本当にいい仕事をするだろうという娘がいる。地方にまちづくりにいけば、あっという間に、まちのおじさんたちと仲良くなり、知らない間に穏やかで前向きな場をつくりあげる(どうすればこういう娘ができるのか、親に聞いてみたいくらいである)。ただ、残念なことに、彼女は、算数は苦手で、この前、試験を受けたが、全くできなかったと言っていた。私の逆恨みなのかもしれないが、地方分権時代で、それにふさわしい職員をたくさん採用しなければならないのに、肝心のところで思考停止している感じがする。地方分権で、特別区制度などの大がかりな制度論もよいが、公務員採用という足元から、実践して行くことも大事ではないか。

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