松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆官製談合を考える(三浦半島)

2019-04-02 | 1.研究活動

 新著では、官製談合の部分を書いているが、なかなか奥が深い。現時点ではメモ程度であるが、感じたことを書こう。

 談合は、なんといっても業界(既得権)の保護が第一義である。競争をせずに、一定の仕事が確保できる。こんなにありがたいことはない。

 それではあからさまなので、付加的な波及効果やさまざまな正当性の理由付けが行われる。

①一定の品質・水準の確保である。談合によって、品質、納期などが確保できる企業が選ばれる。安いゆえの手抜き工事の心配もない。これらを談合リーダーが管理してくれる。これで発注者も安心だし、結局、それが社会全体の利益にもなる。

②地元経済への還元である。価格競争ならば、価格競争に耐えられる、あるいは価格競争を無視した、地元とは縁もゆかりもない大都会の業者が受注してしまう。市民の税金を地域に還元できず、また地元の雇用も活かせない。談合ならば、話し合いで、地域要件を満たした企業を入れることができる。

③暴力団など悪質な業者を排除できる。

④建築業界も当面の受注だけに目を奪われずに、研究など将来の展開も含めて、事業展開ができる。日本の弱さは、将来を見越した研究費が削減されているからである。

 これが官製談合になる原因でもある。

①役所としては、限られた予算のなか、きちんとした納期や品質で工事を完成しなければいけない。安かろう悪かろうでは、困ったことになる。

②当然、さまざまなアクシデントがある。予想外の設計変更もあるし、設計ミスもある。これらのアクシデントを外部に晒すことなく、融通をつけてやってくれる事業者はありがたい。

 この談合に行政職員が巻き込まれて行くプロセスは、次のようになる。

①かつては、建設業界のドンがいて、そこに頼めば万端よきにはからってくれた。ところが、こうした人達が逮捕され、ドンによる調整の仕組みが解体された。

②そこで、調整役として議員がでてくる。ただ、議員の場合は、業界のドンと比べると、とりまとめる動機は弱いし、そこに不純な要素も入る。議員のリスクの見返りは、選挙の票まとめや裏金である。不純なので、時々、表沙汰となる。そして、こうした人たちも逮捕されるようになる。

③そこで、発注者である行政側が仕方なく関わっていく。業界を取りまとめる力はないから、談合情報を流すなどによって、談合を仕向けていく。裏金や賄賂をもらうという人はごく僅かで、仕事をうまく回さなければという気持ちが、こうした行動を後押しする。保身+責任感の高さが、こうした行動になる。

④そこまでして、努力しても、役所や社会は守ってくれない。これからは、手抜きだろうがなんだろうが、形式的に納期を守り、一定の品質が確保されているように見えれば、それで良しということになっていくだろう。

 どうすればいいだろう。

 手抜きを防ぎ、暴力団等の悪質業者が入らない仕組みを個別に考え、きちんと運用していくことだろう。談合は、これら諸問題を包み込む包摂性があるし、コスト的には談合のほうが安いかもしれないが、もう談合に戻ることはできない(世界ルールの問題だから)。

 ここから派生して(余計なことだが)。

 地方議員もかつては、地域の談合で選ばれた。地域で審査されるからそれなりの人が議員に選ばれた。

 ところが、地域の機能が弱まり、議員選出も一般競争入札になった。その結果、安かろう悪かろう、外見はもっともらしいが、手抜きに人が選ばれるようになる。

 随意契約には戻れないとしたら、手抜きを防ぐ個別的な仕組みか、指名競争入札のようなものを考えるのが方向性だろう。

 

 

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