付箋をつけた歌より
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床に置く原色図鑑に見ていたる花かまきりの花のくれない 山尾閑
「どこか」って言う眼差しに海宿る すべての海が正しく揺れる 錫木なつ
セーターを広げて畳んで胸に抱く遺影の母が着ているこの服 かみくらめぐみ
帯締めの絹の声聞く全山が傾くほどの恋であらうか 小林純子
右頬に海の刺繍を入れました忘れたくないことがあります 鹿沢みる
車窓には入りきらないマンションの三階ベランダの市松毛布 鈴木初子
言語野の深さに私 明日にはくらくてひどいものが生まれる 津隈もるく
きみの手をきみと手に分け手を握る きみがほんのりひかる夕暮れ 長井めも
運転席からは見えなかった月の話に歩きだして追いつく ワトゾウ
鼻風邪の娘は口で呼吸する熱くて痰の匂いの寝息 黒澤沙都子
わるいひとではないのだとこぼす人そのかたわらで浅くうなずく 浅井文人
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床に置く原色図鑑に見ていたる花かまきりの花のくれない 山尾閑
「どこか」って言う眼差しに海宿る すべての海が正しく揺れる 錫木なつ
セーターを広げて畳んで胸に抱く遺影の母が着ているこの服 かみくらめぐみ
帯締めの絹の声聞く全山が傾くほどの恋であらうか 小林純子
右頬に海の刺繍を入れました忘れたくないことがあります 鹿沢みる
車窓には入りきらないマンションの三階ベランダの市松毛布 鈴木初子
言語野の深さに私 明日にはくらくてひどいものが生まれる 津隈もるく
きみの手をきみと手に分け手を握る きみがほんのりひかる夕暮れ 長井めも
運転席からは見えなかった月の話に歩きだして追いつく ワトゾウ
鼻風邪の娘は口で呼吸する熱くて痰の匂いの寝息 黒澤沙都子
わるいひとではないのだとこぼす人そのかたわらで浅くうなずく 浅井文人