きんいろなみだ

大森静佳

「塔」2021年7月号 作品2(小林幸子選)

2021年07月30日 | 短歌
付箋をつけた歌より

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約束をしないから良い日々であるのびてちぢんで来月余白 小田桐夕

石鹸をシャボンと呼びし祖母の名をパスワードとし密かに愛す 渡部和

わたくしが神様ならばカブトムシの雌には角を二本与える 森山緋紗

刈り上げた襟足の潔さが君 春なんてもの愛でずともよい 小松岬

春づける地の上を草の芽ふみてゆくわれが侵さむもの限りなし 三上糸志

三階に教室十二カーテンの閉まっていたり揺らめいていたり 水谷英子

澄みわたる汽水に映る橋影をかすかに揺らして春の潮来る 吉井敏郎

湖に向けた車に窓を閉ぢクラリネットを吹く人が居る 内藤久仁茂

春が来て草も木の芽もありんこも十倍速で動き出しおり 山口淳子