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「チルドレン」(伊坂幸太郎) ★★★★

2007-07-13 01:07:42 | 伊坂幸太郎
 今回は、伊坂幸太郎「チルドレン」(講談社文庫)です。

4062757249チルドレン (講談社文庫 (い111-1))
伊坂 幸太郎
講談社 2007-05-15

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 --------あらすじ--------

 「俺たちは奇跡を起こすんだ」
 独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々―。
 何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない結末が降り注ぐ。(文庫裏のあらすじより)
 短編集のふりをした長編小説です。帯のどこかに“短編集”とあっても信じないでください。(出版社/著者からの内容紹介)

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 「強盗にすら迷惑をかける男」・陣内を中心に連結される短編集のふりをした長編小説。
 この陣内が良いキャラなんですよねぇ~。でたらめで適当で常識なくて・・・でも格好良い。
 家裁調査官になった後の陣内(第2章 チルドレン、第4章 チルドレンⅡ)も格好良いんだけど、私は第3章 レトリーバーの陣内が好きだなぁ。盲導犬を連れた目の見えない永瀬に、見ず知らずのおばさんが善意で五千円を渡して立ち去ったという場面なんだけど、

 「ふざけんなよ」(中略)「何で、おまえがもらえて、俺がもらえないんだよ!」
 「たぶん、僕が盲導犬を連れているから、じゃないかな。目も見えないし」
 「は?」陣内君が唖然とした顔になった。心底、訝しそうだった。「そんなの、関係ねぇだろ」
 「え」とわたしはもう一度間の抜けた声を出してしまった。
 「関係ないっつうの。ずるいじゃねぇか」と喚いた。
 (中略)
 「おい、何笑ってるんだよ。自分だけ金を手に入れたからって、いい気になるなよ」
 「なってないって」
 「俺は納得しないぞ。何で、おまえだけ五千円なんだよ。おかしいだろ?」
 「おかしいかもしれない」
 「どうして、おまえだけ特別扱いなんだよ」陣内君はそう言ってから、あたりをきょろきょろ見回し、「そのおばさんどこに行ったんだ?」と必死に探しはじめた。


 だいたい障害者と接するときとか、「普通にしてればいいのよ」と言われたり、そうしなきゃと思って、逆に変に気を遣ったようなよそよそしい感じになったりすると思うんだけど、陣内は、そんなもの全部飛び越えて、ほんっとに「普通」なんだよねー。
 こんな感じの陣内と永瀬のやりとりは他でもあるんだけど、鴨居と永瀬の関係も同じように「普通」なんだよね。
 盲導犬ができないことを見つけると、「残念ね」と嬉しそうに言う永瀬の恋人の優子もまたしかり。

 登場人物みんな永瀬に対して本当に「普通」に接してて、気持ちいいんですよ。

 まぁでもこれって、陣内や鴨居だからこそな気もするけどねー。「怒るトコそっちかよ!」と総ツッコミが入りそうです(笑) 陣内は変人奇人だけど、それと対等に渡り合う(初めは困惑してたけど、そのうち渡り合うようになってる)鴨居も相当変(笑) 変なんだけど、みんなとっても良いヤツ。
 そして、変人奇人たちとニコニコしながら付き合う永瀬も素敵です。この小説の主人公は永瀬なんじゃないかと、実は思っていたりします(笑)

 この変人・陣内の性格を決めたと思われる、決定的な出来事が、陣内と父の確執だと思うんですが、この父親について陣内は、
 あるときは、嫌悪感むき出しだったり
 あるときは、一応けりはつけたと言ったり、
 またあるときは、どうでもよくなったとさっぱりした顔で言ったり。
 どういうことなのかなぁと思っていると、ラストの第5章で見事に収束するわけですよ。ホント、伊坂幸太郎の構成の妙には毎回感心させられます!

 ちなみに、タイトルの「チルドレン」なんですが、私は初め、陣内の職業が家裁調査官で、それに絡んで子どもたちが登場するからなのかと思ってました(まぁもちろんそれもあるのでしょうが)。
 しかし、陣内が作中で「チルドレン」の意味を語ってくれています。この「チルドレン」の意味、なかなか面白いし興味深いです。


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