「おおかみこどもの雨と雪」を見てきました。
私は、ジブリの映画は映画館で観ないと気がすまないのですが、細田さんのも映画館でみないと気がすまなくて。
なので、おもしろそうとかどうとかいう理屈は抜きで、やれば観る!のです。
いわゆる信者ってやつですね。
細田さんの映画、いいんですよねー。大好き。
といってもまだこれで3作目なんですが。
最初に細田さんを知るきっかけになったのが「時をかける少女」でした。
いま調べたら2006年公開。あの夏ももうそんな前か。ときが過ぎるのは早いもんですね。
私は中学生の頃から筒井康隆(と小松左京と星新一)の作品が好きで。
「時をかける少女」といったら説明不要の傑作でしょ。
十数年の時を越えての再映画化。それもアニメ。絶対外せないと思った。
なんですが、ポスターの主人公のスカートが非常に短いこともあり!
(たぶんそれだけでもないのだろうが)「オタクが見る映画」っていう空気感があったよね。
そういう空気感、私はあまり感心しないんです。見もしないで何がわかるというのか。
そういう色眼鏡がそれ自体、非常にもったいないと思います。
それで、「時かけ」。「ミニシアター」っていうんですかね、映画マニア向けみたいな扱い。
全然宣伝もしてないし、上映している映画館も数えるほどしかなくて。
でもそこは東京だ。新宿三丁目にある、行ったこともないような映画館でやってて。
それで観にいったんです。やっぱりひとりでね。
これがすばらしい作品でしたよねー
表現の仕方が斬新で新鮮で新しくて。なんか青春のまぶしさがこころにしみて。
いま思えば、このときにはもう細田さん流の映画表現のやり方の核みたいなものが既に確立されていたような気がします。
一言でいうとなんでしょうかね。
たぶん、「目線がふつう」というところだと思っています。
いま風の、あっさりした肩の力が抜けた感じ。それでいてすごくココロが洗われる感じ。
こう、「なんちゃらでなければならない!!」「なんちゃらなはずだ!!!」みたいなうるささがない。
「これおもしろいだろ!!」っていうおしつけもない。
「ちょっとちょっと、これってよくない?おもしろくない?」みたいな感じでしょうか。
主題歌の「ガーネット」もよくて。それで奥華子さんも知ったんですよ。
私にとっては、そういういろんな出会いがあった映画、それが「時かけ」だったと思います。
いまはDVDも出て、地上波でもたまにやるので未見のひとは是非。
というわけで「おおかみこども」。以下、ネタバレあるので注意が必要です。
これから見る予定のある人は回れ右のことよ!
アニメには制約がないですよね。白紙に絵を描けばどんな世界でも描けちゃう。
例えそれが目に見えないものでも、「イメージ」を絵にすることで描けちゃうのがすごい。
例えば、ドラえもんが机の引き出しからタイムマシンに乗って未来や過去にいくでしょ。
あのとき、周りに歪んだ時計の絵がいっぱいあるじゃん。
あれで、時間をさかのぼったり進んだりしてるんだなぁという。
「なんとなくそんな感じ」を表現できてるっていう。
あれを実写で表現しようとすると、こうすんなりとは伝わらないような気がします。
あんまりリアルな感じがしなくて微妙だったりするときない?
アニメだと、そもそも絵だから、リアルとかそんなことは気にも留めないで受け入れるでしょ。
「おおかみこども」も、細田さんの映画ぽくていいなあって思うところが随所にありました。
同じ場所、景色、シチュエーションを繰り返し繰り返し、多用します。
その既視感の連続が、ちょっとしたユーモアな味付けになっています。
「くすっ」と笑えてしまう雰囲気につながっていい感じ。
同時に、その繰り返しで、
「いろいろあったけど基本的には変わらない、あとは想像にお任せしますな毎日」
によって時間が経過したことや、キャラクターの性格や個性をより強く印象づけたり固めたり(成長してもそういうとこは変わらないのねwというような)、場所やシチュエーションは同じなのに、人物の様子を変えることで、その気持ちに何か変化があったことを表現したり・・・。
うまいなぁと思います。
涙は、ぽろぽろ水玉のような涙。悲しいシーンなんだけど、しめっぽくない。
けどピュアな感じ。
恋人の、夫婦の、親子の、会話の「間」の表現。会話も絵もとまっていて台詞がない。
これが「およ?」って思う程度に長めにとられます。
小説でいうなら「行間」っていうか。見る者が勝手に想像するための「隙」を作ってる感じ?
台詞がないのが名台詞。
描写がリアル。ディテールにこだわってる感じがします。
抽象的に美化した景色ではなく、実際にありそうな景色です。
たぶん実際にある景色を絵にしてるんだと思います。
クリーニング屋も、喫茶店も、引越しマンションも、大学の講義室も。
ほんとにどっかにありそうですよ。
田舎や山の風景も。ちっこい虫がうざったくぶんぶん飛んでたりね。
赤とんぼも、風情良くちょうどよさげな数匹が飛んでるんではなく、これでもかっていうくらい大群で飛んでる。
けど田舎の夏ってそうじゃん。
イメージと実際の景色、よく観察をすると意外と違ってるところあるでしょ。
細田さんは、「実際の景色」にこだわって絵を作ってる感じがします。
風が語りかけます。うまい、うますぎる。
雨が降ると、葉っぱの上で水玉が丸くなってコロコロ。
ベランダのコンクリートに黒い水玉模様~
おおかみ目線で森を走るときのその疾走感!
そして。
突き抜けるほど晴れた青い空と白い雲。入道雲。これはもう細田作品の定番。
夏!!
・・・そういう「ワールド」の中で、「おおかみこどもの雨と雪」の物語は進んでいきます。
主要なテーマは、やっぱり子育てなんだろうと思います。
夏休みの映画ですが、大人向けですね。
母がどれだけ子どものことを思ってるか。
子どもはいろんなことで悩んだり傷ついたりしつつも、どんどん成長していって、やがて自分が何者かというのを考えるようになって。
その子どもの一歩先を進むようにして、女性も母親として成長していきます。
これが、すごくいい話でね、いろんなシーンで何度も何度も涙しました。
音楽と絵だけで、「日々」を映し出すシーン。
幸せそうで楽しいシーンなのですが、これがなぜか泣けてしまう。
暖かい手描きの紙芝居で、「他のひとの前でおおかみに変身しないっていう約束」のことを説明するシーン。
雪が「ヘビや骨やカエルの干物」(細かいところは忘れた!)を集めて喜んでいる「女の子」は自分しかいない・・・ということを知って落ち込んでいるところに、「仕方ないなー」といってミシンでカワイイワンピースを作ってあげるシーン。
そして、そのワンピースに「どれだけ救われたか」と、雪がナレーションで回想するシーン。
母姉弟3人が雪山を雪まみれになりながら元気に駆けるシーン。
雨が絵本を読んで「なんでおおかみはいつも悪者なの」「おおかみになるのはいやだ」って涙をぽろぽろするシーン。
雪がいろいろあって同級生をおおかみクローで大怪我させてしまい、クルマの中で大泣きしながら、おおかみに変身しないおまじないが効かなかったこと、変身してしまってごめんなさいっていうシーン。
自分たちがおおかみか人間かで姉弟が大喧嘩するシーン。
・・・なんか他にもあったような気がするけど忘れた。
けど一番はやっぱり、雨との別れのシーン。
「まだあなたに何もしてあげてない」。
「まだあなたに何もしてあげてない」。
「しっかり生きて!」
・・・思い出すだけで泣ける(´Д`)
エンドロールの歌と、回想のシーン。
これ、歌と作曲はもちろんプロのアーティストだけど、歌詞は細田さんですね。
途中のある場所から、この歌詞がすごくこの映画に合ってるなと思えて聴いてました。
最後の最後までよかったと思います。
DVD買うなーこれ。
それを買って、忘れた頃にもう一度みる( ・∀・)
ワオーーーーーーーーーーーーー