美男子俱楽部

※単行本はBOOTHにて発売中。

金曜日の男

2022-10-27 | 

抱いた彼女の背中には 金曜日の男

 

窓から漏れるのは 彼女が知ってる一昨日知った街の音

窓際から流れるのは 彼女は知らない二昔も前の若者の叫び

そして 彼女しか知らない金曜日の男の面影

 

オレはそれを塗りかえる様に

オレはオレを忘れさせる様に

キミが明日 金曜日を過ごさぬ様に

 

金曜日になろう

 

オレは 金曜日の男になろう

 

オレが 金曜日の男になろう

 

 

 

(『蓄音機』収録)


平和は誰れの手に

2022-10-27 | 

あんなにも平和を待ち望んでいた人々の顔は

平和を愉しむ 人間の顔には見えない

かと思えば

世界の何処で行われている 殺戮を憎む人間の顔にも見えない

 

そこに在るのは

社会の競争という 戦争のまがい物と

低俗ないらだちに犯され続ける

背広を着込んだ 動物共の行進だけ

 

ならば 潔く憎むべき人間を殺せと

それであなたに 平和が訪れるのなら

 

どうせ オレの明日に

平和は訪れないんだから

どうせ マルタの微笑みは

オレには訪れないのだから

 

 

 

(『蓄音機』収録)


王様の肖像

2022-10-27 | 

幾多ものアリが這うオレの目は死の不安を誘い

自我の死臭で壊れちまったオレの鼻はお前のいかさまを暴く

汚れを知らないオレの唇がマドンナを悩殺すれば

それをシェブロンが高笑いして見てる

 

オレはあこぎの王様さ

ありきたりな生き方なんてできやしないだろう

まるであこぎの王様さ

ありきたりな幸せなんて分かりゃしないだろう

 

荒れ果てた教会で眠るオレの愛はしばらく起きやしないだろうから

そこにあるのは欲望にまみれた浅はかなKISSだけ

オレの描く絵は真夜中に静寂を飛び出して

オレの書く詩を冷評してみせる

 

オレは孤独の王様さ

他人の為に生きる事が出来なければ

まるで孤独の王様さ

自分の為だけに生きる事すら出来やしない

 

青ざめた時代色に似つかわしくないその風貌はC.C.を狂わせ

軍服みたいな服を着た街角に軍靴の音色を奏でれば

足下に花を咲かせた女神は退却し

そこは王様の休日となる

 

オレは丸裸の王様さ

うしろ指をさして笑うだけの奴らには

まるで丸裸の王様さ

本当のオレの事なんて分かりゃしないだろう

 

誰かの謳歌は一時の風に吹き飛ばされてしまうというのに

無言の時間は一層オレをいらだたせる

おまえの死を哀しむつもりは無いが

明日もおまえに抱かれてみたい

 

オレは人間の王様さ

気難しいなんて言うけれど

まるで人間の王様さ

楽観なんて出来やしないだろう

 

オレに肖像を描いてくれ

オレは死ぬのに

オレの肖像を描いてくれ

オレは涙を流すから

 

 

 

(『蓄音機』収録)


蓄音機

2022-10-27 | 

カフェで飲み干した運命は美女が嚙んだ椅子によって残り三分の一程になってしまったのに

時計は1時39分を回った辺りで定食の食べ滓が空の食器であったのでそこに雨水が溜まってしまったではないか

 

サティはまだこないのかと確定申告をする店主の若くない方の老婆に嘲けてみたが、夜はまだ明後日の方向を指差して脇毛を掻き上げたみたいだ

 

ズボンの表側と裏側についてたライオンの染みを君の顔にひっかけようと・・・・・・・・

 

自殺した少年と私は殺人者に憧れている

 

だから濡れたパンツを太陽に浸した伯爵の禿げた子供でサッカーをしたが、髭の屋上に忘れたラオコーン像に謝ってから学校を卒業したのだ。

 

買い被った経験のインテリ野郎の袋小路の化けの皮を

猫が俺の裸足を追いかけてるとワルツが君を抱きしめた

 

 

 

(『蓄音機』収録)


夢を見た

2022-10-27 | 

夢を見た おれが死んだ夢を

夢を見た おれが生きていた夢を

 

夢を見た 朝が堕落した夢を

夢を見た やわらかな哀愁の調べを

 

今 迎えよう 夕べ訪れる淡い死の悲しみを

今 目覚めよう 太陽すら宙に沈みかけた良き朝に

そして歩こう この夢の様な夜の上を股がって・・・・・・・・

 

夢を見た 君の微笑みの裏がわに

夢を見た 詩人が旅立つ夢を・・・・・・・・

 

 

 

(『蓄音機』収録)