或る曲の、とくに冒頭やサビなどの一部分のみを歌えるのだけれども一体誰の歌なのか、一体何と云う曲なのかという肝要な所を一向に思い出せずに為体の知れないまま印象と僅かに分る歌詞とがぐるぐる頭脳を駆けずり回って、もやもやしている間に大人になってしまった空虚な大人というのが明治初期に大量に発生してしまってその気苦労によって病の床に臥す人がふえ、その所為で約三年間人々はピメントを食べられなかったというのはまあ嘘と云われれば実際嘘であるし、何でピメントやねんっていう、ピーマンって言えやっていう所なんだけれども、今、そこは別にどうでもいいっていうか、つまり、はっきり云うと、俺も空虚な大人だったが胆。
俺を、虚ろで惨めな大人にさせた忌むべき曲というのが、餓鬼の時分にテレビジョンのコマーシャルか何かで絶えず流されていた曲で、
「地平線に届く様にー/限界迄振り切って呉れー」
とか言う詞だったと記憶しているのだけれども、今し方言った通り俺は過去に空虚な大人だっただけで現在は違うというのは現代文明には何やらインター・ネッツとか云う変わった名前の米国のおっさんが居てその御仁が発明したゴーグル、つまり眼鏡だね、此れが在って、掛ければ知りたい情報は大体ただで手に入るらしく知り合いがこの原理意味不明な風防紫外線防止用眼鏡を使い熟せるというのでお願いしたところ、あれ、何つったかな。およ、何だっけ。あっ、あれだ。たしか「ラスク・アンド・シェル」。この集団の楽曲と判明。ラスク・アンド・シェル。ラスクと貝殻。うぬぅ。なかなか文学的やんけぇ。へっ。
まあね、調べて貰ったのも四年程前だからね、曲名とか其れ以外の歌詞などは忘却したのだから今は充実した大人というのは嘘だと言われれば実際嘘であるし、だいたい初めの言い方によっちゃあ頭脳ぐるぐるもやもやを抱えたまま大人になった大人が空虚な大人な訳で頭脳ぐるぐるもやもやを抱えたまま大人になった大人が大人になってから頭脳ぐるぐるもやもやを解消したからといって頭脳ぐるぐるもやもやを抱えて一度大人になってしまった空虚な大人の立場上もう永劫に空虚な大人でなければならず、それはおかしいなぁと、理不尽であるなぁと思ったのでやっぱりさっきのは嘘、という事に済まして話を進ませるとこのラスク・アンド・シェルの俺を空しくさせた楽曲というのが俺が車を運転している時、特にドライバーズ・ハイであって、生まれ付きのスピード狂であるなぁと自覚する際にぐるぐるするのだけど、何故ぐるぐるするのかと云うと俺がドライバーズ・ハイで生まれ付きのスピード狂であるからで何故その様に為るのかと云うと俺が車を運転しているからで、何故運転しているのかと云うと車を所持しているからで何故東京都在住二十三歳赤貧の若造が所持しているのかと云うと四箇月田舎で暮らした事があり其処での暮らしに於いて不可欠であったため無理をして購買したからで何故田舎で暮らしたのかと云えば農業に就く為であり、こう云った流れで今回は俺が農業を営んだ話を掘り下げこれから未経験ながらにして農業に就こうと考えておられる若者の利益になる様な話をしようと思っていたのだけれど前置きが長くなってしまいかなり疲れて仕舞うたので其れも嘘って事にしてそろそろ筆を置きます。さいなら。