
この頃、枕について取材を受ける機会が増えてきました。
これまで私は基本的には枕について触れてこなかったのですが、(注1
良い切欠とし今回は枕の選び方を基礎から考えていきたいと思います。
とは言えネットには既に枕についての情報が氾濫しておりますし煩瑣になりますから、
何故枕が必要なのか?
などの話は今回は飛ばしてしまい、速やかに本題に入って行きたいと思います。
1、高さについて
枕の高さが合うかどうかはとても大切です。
基本的には例えば仰向けの場合、後頭部→首→肩というS字曲線がどのくらいくびれているかで決まります。
ただ首の付き方(角度など)には個々人によって違いがありますし、
使用者のクセ、姿勢、敷寝具の柔硬度によっても必要な高さは変化します。
そしてセオリー通りの高さの枕を得られたからと言って、
使用者当人に馴染むかは使ってみるまで分かりません(好みの問題)。
また体調の変化などもあり高さには柔軟性が求められます。
購入時の高さ選択は違和感さえなければフィーリングで決めてしまって十分です。
お店での枕の高さの選び方
店頭で枕の高さを選ぶ場合、
一般的には自分が気に入ったと思った高さのやや低めくらいを狙って選ぶと当たりやすいです。
これには色々理由があるのですが、
一つには店舗まで移動して他人の店に侵入し、立ったまま枕を選び、それから試すので、
店頭での試用は就寝とは全く状況が異なります。
要するに店頭での購入者は緊張・昂奮・疲労の状態にあるので、
少しもリラックスしておらず、強張った状態な訳です。(注2
こうした状況下では購入者は比較的高めのものを気に入ってしまう傾向がある様な気がします。
セルフで選ぶ場合、
上記の様にやや高めのものを選んでしまう傾向が出ますので、少し低目を意識すると良いと思います。
セミオーダーで店員さんのアドバイスを受ける場合、
店頭のマットと自宅の敷寝具の傾向の差を意識した方が良いです。
店頭にある体験者用のマットはハードに寄る傾向があります。
ハードなマットで試した枕はソフトな敷寝具で実際に使用すると思ったよりも低く感じる事が多いです。
低目を意識すべきだとすれば丁度いいね、と言えなくもないのですが、
取り敢えず店頭の敷寝具と自宅の敷寝具は別物である、という点は留意しておいた方が良いです。
この辺りの自宅使用品との感覚の差異は、
気軽に店員さんに伝えていった方が望ましいです(多分聞かれると思います)。
もし店頭のマットが硬すぎて自宅のものと全然異なると思った場合は、
パッドを加えるなど、店員さんに頼んで調整してもらうと良いです。
逆に柔らかすぎると感じた場合はもう少ししっかりしたマットレスでの試用を要望すると良いと思います。
とにかくセミオーダーの場合は少しでも自宅の環境に近づける事が大切です。
試用のマットレスはそのまま主力商品のサンプルを兼ねており、
店側はあわよくば枕に加えてマットレスも売ってしまいたいと思っているので、
店によってはパッドなどを加えるのを嫌がる場合もあると思いますが、
それならそれで別の店に行ってしまえば良いでしょう。
また店員さんには持論を曲げない頑固な方も少なくないです。
これは性格というより場数(知識)の不足か利益誘導が主で、商売上しかたないと言えばそうかも知れませんが、
店員さんと会話していて(こいつ人の話を聞かねーなあ)と思ったら早々に退散すべきと思います。
枕に高さの調整は必須
枕の高さにおいて最も大切なのは、自分で調整できるかどうかです。
これには幾つかの理由があります。
先ず第一に、店頭で選んだ高さは自宅に持って帰るとイメージとズレている事が多いからです。
セミオーダーであんなに話し合って決めたのに、
いざ夜自宅で使ってみたらなんか違っていた、というのは往々にしてよくあります。
そこでズレが生じた場合、自宅で改めて自分用に調整する必要が出てきます。
またヒトが枕に求める高さは、体調によってもズレていきます。
好調なときと疲労困憊なときに求める高さが違うのは勿論、
ヒトの身体は日々少しずつズレていきますので、微調整は日常に必要不可欠です。
卑近な例で言えば、私は酔っ払うと少し高い枕が欲しくなります。
こういうときも高さの調整は必要です。
枕の高さ調整は簡単さが命
そこで頻繁に行なわれる枕の高さ調整は、簡単簡便である事が重要です。
よくパイプ枕などで、中身の出し入れで高さ調整ができますよ~などと言われますが、できません。
顆粒状のものはこぼれるし、次回以降に再び取り上げますが頭部を載せた際に安定獲得まで時間が掛かるので、
合ってる高さを探し当てる為の手間と時間が非常に沢山必要になってしまうからです。
現在は高さ調整には「高さ調整シート」を用いるのが主流です。
高いと感じたらシートを抜く、低いと感じたらシートを入れる、ものの数十秒で出来るので現実的です。
少し前から例えばパイプ枕でも、上部の頭を載せる側はパイプ・裏側は高さ調整シート、というモデルが主です。
但しシートは枕と同じ面積を持ったものである方が良いです。
しばしば首側と頭頂部側を別個に高さ調整可能なよう、
前後2分割されている調整シートを見ますが、これは避けた方が良いです。
というのも前後2分割されたシートはどうしても中央部分のホールドが弱くなる為、
頭を載せた場合にV字型に枕全体がくびれてしまうからです。これは意外に寝姿勢を悪化させます。
尤も2分割された調整シートの片方しか使わない、という前提であれば問題ないかも知れません。
ところで調整シートは何層くらいが適当なのか。
調整シートを薄く多層入れればその分だけ細かい調整が出来るので良いように思われます。
しかし調整シートは基本的には中わたにウレタン(またはポリエステルわたシート)を用いており、
シートは薄く多層化すると矢張りV字にたわみやすくなってしまいます。
確証は全然ないのですが経験的に10層とかはやり過ぎで、
1層~2層くらいが適度、3層で限界なのではないかと思います。
これ以上は頭部の重さに対してたわみが生じやすくなってしまうでしょう。
また多層化が進めば進むほど側生地も多層化するので、通気性などに悪影響を与える可能性もあります。
高さ調整の手法としては他に空気を利用するものなどありますが、現実的ではないです。
まとめ
高さは一般的には「高」「中」「低」くらいに分類されています。
購入時には低目を意識して選びましょう。
高さ調整機能は必須です。しかし万能ではありません。
例えば高さ調整機能を有する高さ「高」の枕を購入して思いっきり低く調整しようとすると、
枕の側生地が異様に余ってしまうことになり快適さを損ないますし、
逆は生地が突っ張ってしまいこれも不快です。
もっともそんな極端な例は兎も角、
違和感がそれ程なければ調整機能があり限り初期の高さはそこまで気にしなくとも大丈夫です。
そして調整は簡単にできるものである事がとても大事です。
本当は枕の選び方について一挙に掲載する予定でしたが、
思いのほか文章量が膨大になってしまいましたので、分割掲載いたします。
次回は枕の形状について考えていきたいと思います。
注1
何故枕について長く言及を避けてきたかと言いますと、
現在、最善のオススメ商品を有していないからです。
実は寝具店経営時代には完全オリジナルの枕を販売していたのですが、現在は廃盤となっております。
結果として自分も枕難民になってしまい、現在放浪の旅を継続中です。
なので今回は「どうやってベターな結果を求めるか」を考えていきたいと思います。
注2
ご相談者の方と寝具店で寝具を試す際、
最初のハードルはいかに試用者の方にリラックスしてもらうかになります。
具体的には「気を付け」に近い直立不動の姿勢を寝た状態でも取ろうとしてしまう事が多いです。
本人は全く無意識の事なので、第三者の目があれば問題ないのですが、
単独で購入する場合は注意しましょう。
試用マットレスの横に鏡が設置してあると自身の寝姿勢も合わせチェックしやすくて良いと思います。
アイリスオーヤマ 匠眠枕 高さ調整3通り
2,280円(31/08/03/1130現在、以下同じ)
西川リビング ピロギャラリーヨコ寝楽 高さ調節機能
5,830円
東京西川 そばがら枕 高さ(ふつう) 高さ調節可能
8,840円
西川リバーシブル枕(わた & パイプ) 高さ調節可能
9,655円
こちらのブログを見て情報を頭に入れ、候補を絞って寝具店に行き、昭和西川のムアツ スリープスパを買いました。合わせて東京西川の枕も買いました。
寝心地は大満足です。大野さんと店員さんに感謝です。
ただやはりといいますか、ムアツを買う際、枕以外にも他のものもおすすめされるのですよね。羽毛布団とか、ムートンシーツとか。セットで買うとお安くしますよ!と、東京西川の羽毛布団(ドイツ製マザーグース)が20万とか、京都西川のムートンシーツが25万とか。
商売なので当然ですから店員さんをどうこういうつもりはなく(むしろ試してみた感じはすごく良さそうでしたので)、高額商品の検討材料がない庶民な自分の方が問題でして。
4~6万円台の羽毛布団は世の中に結構情報がありますが、高額のものはほとんど見かけないので、ブログで取り上げていただけるとありがたいです。
(ムートンシーツも初めて名前を聞きました)
何時も当ブログを誠に有難うございます。
本当に矢張りというか、という状況ですね…同業として申し訳ない気持ちです。にも関わらずお優しいお言葉を有難うございます。
一部のお店は長年そういうマニュアルになってしまっており「店頭で生の寝具に触れ、プロの話を聞く」という消費者側のメリットを薄めてしまっているのが残念です。
ところで、ご提案有難うございます。
確かに高額帯こそある意味では情報が必要ですし、そうしたムートンや羽毛についても今後是非概説から取り上げて行きたいと思います。実は東京西川の一部のドイツマザーは自分も気に入って主力商品として取り扱っていました。ただドイツマザーは気を付けるべきポイントもあって…という事も踏まえて色々ブログで検討して参りたいと思います。
このたびは誠にありがとうございました。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。