
風土記:伊奈頭美社
延喜式:―
雲陽誌:稲倉明神(倉稲魂命)
様 式:春日造変態
御祭神:宇加之魂命
合祀神:大国主命(國主神社)



旧美保関町北浦地区の中央、奈倉鼻と呼ばれる陸続きの島に鎮座する社。社頭から集落に向けて両側に砂浜が広がり、夏場は海水浴客で賑わう。本来美しくあるべき砂浜も海洋を漂いくる塵にて見るも無残な状態となる。これらの塵を取り除いて、海水浴客を迎えるのはどれほど大変なことか。先の震災にてわが国より流出した塵が、大洋を越えて北米などに流れ着くという話を聞けば近隣諸国の品々が漂い来る已んぬるかな。
境内は稲倉山(島)麓にあって現在は東向。奥行きはさほどにはないものの、隋神門を潜ると数組の石灯と狛犬が並び、一段上って拝殿と春日造の本殿が建っている。この他、社殿を中心に三宇の木造小祠が建ち、車道を越えて東側の岩の上に同じく木造の小祠が建つ。

当社の由緒について創立沿革は詳らかではないものの、出雲風土記嶋根郡の伊奈頭美社に比定され、通称は奈具良明神。『雲陽誌』北浦の頁にも、伊奈久良明神を風土記の伊奈頭美社とし、その前を伊奈都美浦と呼ぶと記している。『旧町誌』には明治四十一年に村内の國主神社に祀られた大国主命を合祀とあるが、『雲陽誌』は国吉明神とあって祭神は天児屋根命と記されている。
〈境内社〉




上記の如く境内に四宇を数える。何れも扁額等なく、祭神社名は不詳。なお『神国島根』『旧町誌』には、八坂神社(素戔嗚命)、恵比須神社(事代主命)、宗像神社(市杵島姫命)、八幡宮(応神天皇)と記される。また境外に客神社があって、桜を神木として祀るとある。
〈所在地〉
島根県 松江市 美保関町 北浦 稲倉山
参拝日:平成24年 4月 8日