2008年2月11日（月）
ネズミのおもちゃに牙を剥くふくちゃん。
（うそです。欠伸するのをずーと待ってて、その瞬間にネズミのオモチャを差し出しただけです。。。）
ネコの栄養について考えるとき、太古の昔から彼らの主食であったネズミの組成を基本に考えると良いのだそうだ。とはいえ、少なくとも現代の日本で発行されている食品成分表の肉欄にネズミの項目を見つけることはできない。なにかネズミに近い動物でもいればよいのだが、それも見あたらない。僕の大好きな女子栄養大学の食品成分表五訂には次のような動物たちのデータが載っている。（五十音順）
いのしし、いのぶた、うさぎ、うし、うま、くじら、しか、ぶた、ひつじ、やぎ、あいがも、あひる、うずら、かも、きじ、しちめんちょう、すずめ、にわとり、はと、ほろほろちょう、いなご、かえる、すっぽん、はちの24種類である。
世の中にたくさんいる動物たちの中で、私たちが食べる動物の肉というのは案外少ないものなのかもしれない。ざっと眺めてみてそんな感じがした。
しかし、世界にはネズミを食する文化を持った人々もいる。有名なところでは、南米のペルー、エクアドル、ボリビアなどにクイ（げっ歯目テンジンクネズミ科）というモルモットに似た可愛らしいネズミがいる。大きいもので25センチほどになるという。
CUERIYA（クエリヤ）というクイの専門店があるくらいで、偏狭の地を行く海外旅行などでは、南米に行ったときにはお客様の希望に応じて手配することもある。もちろん無理強いはしないが、地元に行ったら、地元の名物料理を一度は試してみたいという向きもいる。
クイは、アンデス山脈に暮らす地元民に古くから食されており、現地ではいわゆるゲテモノなどの類ではなく、祝い事などの食卓にも並ぶ。また、栄養学的には高タンパクが特徴で、穀類やジャガイモなどの炭水化物摂取に偏った食生活をしているアンデスの山岳地帯の人々にとっては大変貴重な食材となっているという。残念ながら私はまだクイを食べたことがないのだが、機会があれば是非食べてみたいと思う。頻繁にこの方面にツアーの添乗で行く知人に聞いたところ、ウサギ肉に近いとのこと。（・・・うさぎも食べたことないから、結局わからない）
というわけで、ネズミの成分表をGoogleでサーチしてみたが、上手く見つけることができなかった。。。
仕方がない。ここはうさぎの成分表で我慢することにしよう。同じげっ歯目だし、大きく異なることはないだろう、という安易な考え。それにネコだって、小さな野うさぎを捕まえて食べたかもしれないしね。
キャットフードとなる代表的な他の肉と比較してみる。
【うさぎ 赤身・生】（可食部100グラム中）
エネルギー 146kcal
水分 72.2g
タンパク質 20.5g
脂質 6.3g
炭水化物 -
灰分 1.0g
ナトリウム 35mg
カリウム 400mg
カルシウム 5mg
マグネシウム 27mg
リン 300mg
鉄 1.3mg
亜鉛 1.0mg
銅 0.05mg
マンガン 0.01mg
レチノール 3ug
B-カロテン -
ビタミンD 0ug
ビタミンE（αトコフェロール） 0.5mg
ビタミンK 1ug
ビタミンB1 0.10mg
ビタミンB2 0.19mg
ナイアシン 8.5mg
ビタミンB6 0.53mg
ビタミンB12 5.6ug
葉酸 7ug
パントテン酸 0.74mg
ビタミンC 1mg
飽和脂肪酸 1.92g
一価不飽和脂肪酸 1.29g
多価不飽和脂肪酸 1.29g
コレステロール 63mg
水溶性食物繊維 0
不溶性食物繊維 0
【ササミ 生】（可食部100グラム中）
エネルギー 105kcal
水分 75.0g
タンパク質 23.0g
脂質 0.8g
炭水化物 0g
灰分 1.2g
ナトリウム 33mg
カリウム 420mg
カルシウム 3mg
マグネシウム 31mg
リン 220mg
鉄 0.2mg
亜鉛 0.6mg
銅 0.03mg
マンガン 0.01mg
レチノール 5ug
B-カロテン -
ビタミンD 0ug
ビタミンE（αトコフェロール） 0.2mg
ビタミンK 14ug
ビタミンB1 0.09mg
ビタミンB2 0.11mg
ナイアシン 11.8mg
ビタミンB6 0.60mg
ビタミンB12 0.1ug
葉酸 10ug
パントテン酸 3.08mg
ビタミンC 2 mg
飽和脂肪酸 0.17g
一価不飽和脂肪酸 0.20g
多価不飽和脂肪酸 0.13g
コレステロール 67mg
水溶性食物繊維 0g
不溶性食物繊維 0g
【アジ 生】（可食部100グラム中）
エネルギー 121kcal
水分 74.4g
タンパク質 20.7g
脂質 3.5g
炭水化物 0.1g
灰分 1.3g
ナトリウム 120mg
カリウム 370mg
カルシウム 27mg
マグネシウム 34mg
リン 230mg
鉄 0.7mg
亜鉛 0.7mg
銅 0.08mg
マンガン 0.01mg
レチノール 10ug
B-カロテン -
ビタミンD 2.0ug
ビタミンE（αトコフェロール） 0.4ug
ビタミンK 0ug
ビタミンB1 0.10mg
ビタミンB2 0.20mg
ナイアシン 5.4mg
ビタミンB6 0.40mg
ビタミンB12 0.7ug
葉酸 12ug
パントテン酸 0.70mg
ビタミンC -
飽和脂肪酸 0.86g
一価不飽和脂肪酸 0.81g
多価不飽和脂肪酸 0.95g
コレステロール 77mg
水溶性食物繊維 0g
不溶性食物繊維 0g
ウサギ肉（生）、アジ（生）、ササミ（生）の比較だが、概して特筆すべき項目はない。強いて言えばリンが他と比べて高めということ。これは慢性腎不全などには極力低く抑えたほうが良いものなので、注意が必要。ウサギ肉にリンが多く入っているからといって、ネズミの肉にも多いかというとそれは定かではないが、高タンパクで低脂肪の肉ということはできるだろう。ネズミだって、そんなに脂肪分が多い動物とは思えない。動物の肉なんだし、タンパク質も20gくらいはあるだろう。アミノ酸価も100に近いだろう。
リンは高いが、ネコがネズミを食べるときには、血を飲み、内蔵を食べ、そしてネズミ程度の細い骨であれば、頭骨などの硬い骨以外は、きっとバリバリと一緒に食べてしまうだろう。うちの小さなふくでも鶏の骨を砕いてしまう。だから高いリンとバランスを保てるくらいのカルシウムを摂取することは可能で、代謝的には大問題とはならないようになっているのかもしれない。
さて、ネズミではなく、ウサギをデータの引き合いに出さざるを得なかったのが残念であるが、結論としてはネコの栄養を考えるにあたり、なにもネズミを参考にしなくとも構わないような気がした。小動物を生で（骨や血液、内臓も含め）食べる動物であるという基本線さえぶれることがなければOKと勝手に決めた。
要は、エネルギー産生に関して、タンパク質重視であり、炭水化物（糖と食物繊維）には依存しない、適度な脂質を求める動物といえる。
ちなみに、ネズミ1匹の代謝エネルギー含量を約30kcalとすると、体重2.6kg（1kgあたり80kcal/1日に必要とすると）のふくちゃんの場合には、1日に7匹のネズミを
捕まえて食べなければならない計算となる。
ネコが、一度にご飯を食べきらずに少し食べては散歩をしたり、うたたねをしてはまた食べに戻ったりする、いわゆる”ネコ食い”というのは、少量頻回捕食者（何回にも分けて食事をする動物）であることの確かな名残なのかも知れない。
（参考資料：動物看護のための小動物栄養学／阿部又信著／ファームプレス）
ネズミのおもちゃに牙を剥くふくちゃん。（うそです。欠伸するのをずーと待ってて、その瞬間にネズミのオモチャを差し出しただけです。。。）
ネコの栄養について考えるとき、太古の昔から彼らの主食であったネズミの組成を基本に考えると良いのだそうだ。とはいえ、少なくとも現代の日本で発行されている食品成分表の肉欄にネズミの項目を見つけることはできない。なにかネズミに近い動物でもいればよいのだが、それも見あたらない。僕の大好きな女子栄養大学の食品成分表五訂には次のような動物たちのデータが載っている。（五十音順）
いのしし、いのぶた、うさぎ、うし、うま、くじら、しか、ぶた、ひつじ、やぎ、あいがも、あひる、うずら、かも、きじ、しちめんちょう、すずめ、にわとり、はと、ほろほろちょう、いなご、かえる、すっぽん、はちの24種類である。
世の中にたくさんいる動物たちの中で、私たちが食べる動物の肉というのは案外少ないものなのかもしれない。ざっと眺めてみてそんな感じがした。
しかし、世界にはネズミを食する文化を持った人々もいる。有名なところでは、南米のペルー、エクアドル、ボリビアなどにクイ（げっ歯目テンジンクネズミ科）というモルモットに似た可愛らしいネズミがいる。大きいもので25センチほどになるという。
CUERIYA（クエリヤ）というクイの専門店があるくらいで、偏狭の地を行く海外旅行などでは、南米に行ったときにはお客様の希望に応じて手配することもある。もちろん無理強いはしないが、地元に行ったら、地元の名物料理を一度は試してみたいという向きもいる。
クイは、アンデス山脈に暮らす地元民に古くから食されており、現地ではいわゆるゲテモノなどの類ではなく、祝い事などの食卓にも並ぶ。また、栄養学的には高タンパクが特徴で、穀類やジャガイモなどの炭水化物摂取に偏った食生活をしているアンデスの山岳地帯の人々にとっては大変貴重な食材となっているという。残念ながら私はまだクイを食べたことがないのだが、機会があれば是非食べてみたいと思う。頻繁にこの方面にツアーの添乗で行く知人に聞いたところ、ウサギ肉に近いとのこと。（・・・うさぎも食べたことないから、結局わからない）
というわけで、ネズミの成分表をGoogleでサーチしてみたが、上手く見つけることができなかった。。。
仕方がない。ここはうさぎの成分表で我慢することにしよう。同じげっ歯目だし、大きく異なることはないだろう、という安易な考え。それにネコだって、小さな野うさぎを捕まえて食べたかもしれないしね。
キャットフードとなる代表的な他の肉と比較してみる。
【うさぎ 赤身・生】（可食部100グラム中）
エネルギー 146kcal
水分 72.2g
タンパク質 20.5g
脂質 6.3g
炭水化物 -
灰分 1.0g
ナトリウム 35mg
カリウム 400mg
カルシウム 5mg
マグネシウム 27mg
リン 300mg
鉄 1.3mg
亜鉛 1.0mg
銅 0.05mg
マンガン 0.01mg
レチノール 3ug
B-カロテン -
ビタミンD 0ug
ビタミンE（αトコフェロール） 0.5mg
ビタミンK 1ug
ビタミンB1 0.10mg
ビタミンB2 0.19mg
ナイアシン 8.5mg
ビタミンB6 0.53mg
ビタミンB12 5.6ug
葉酸 7ug
パントテン酸 0.74mg
ビタミンC 1mg
飽和脂肪酸 1.92g
一価不飽和脂肪酸 1.29g
多価不飽和脂肪酸 1.29g
コレステロール 63mg
水溶性食物繊維 0
不溶性食物繊維 0
【ササミ 生】（可食部100グラム中）
エネルギー 105kcal
水分 75.0g
タンパク質 23.0g
脂質 0.8g
炭水化物 0g
灰分 1.2g
ナトリウム 33mg
カリウム 420mg
カルシウム 3mg
マグネシウム 31mg
リン 220mg
鉄 0.2mg
亜鉛 0.6mg
銅 0.03mg
マンガン 0.01mg
レチノール 5ug
B-カロテン -
ビタミンD 0ug
ビタミンE（αトコフェロール） 0.2mg
ビタミンK 14ug
ビタミンB1 0.09mg
ビタミンB2 0.11mg
ナイアシン 11.8mg
ビタミンB6 0.60mg
ビタミンB12 0.1ug
葉酸 10ug
パントテン酸 3.08mg
ビタミンC 2 mg
飽和脂肪酸 0.17g
一価不飽和脂肪酸 0.20g
多価不飽和脂肪酸 0.13g
コレステロール 67mg
水溶性食物繊維 0g
不溶性食物繊維 0g
【アジ 生】（可食部100グラム中）
エネルギー 121kcal
水分 74.4g
タンパク質 20.7g
脂質 3.5g
炭水化物 0.1g
灰分 1.3g
ナトリウム 120mg
カリウム 370mg
カルシウム 27mg
マグネシウム 34mg
リン 230mg
鉄 0.7mg
亜鉛 0.7mg
銅 0.08mg
マンガン 0.01mg
レチノール 10ug
B-カロテン -
ビタミンD 2.0ug
ビタミンE（αトコフェロール） 0.4ug
ビタミンK 0ug
ビタミンB1 0.10mg
ビタミンB2 0.20mg
ナイアシン 5.4mg
ビタミンB6 0.40mg
ビタミンB12 0.7ug
葉酸 12ug
パントテン酸 0.70mg
ビタミンC -
飽和脂肪酸 0.86g
一価不飽和脂肪酸 0.81g
多価不飽和脂肪酸 0.95g
コレステロール 77mg
水溶性食物繊維 0g
不溶性食物繊維 0g
ウサギ肉（生）、アジ（生）、ササミ（生）の比較だが、概して特筆すべき項目はない。強いて言えばリンが他と比べて高めということ。これは慢性腎不全などには極力低く抑えたほうが良いものなので、注意が必要。ウサギ肉にリンが多く入っているからといって、ネズミの肉にも多いかというとそれは定かではないが、高タンパクで低脂肪の肉ということはできるだろう。ネズミだって、そんなに脂肪分が多い動物とは思えない。動物の肉なんだし、タンパク質も20gくらいはあるだろう。アミノ酸価も100に近いだろう。
リンは高いが、ネコがネズミを食べるときには、血を飲み、内蔵を食べ、そしてネズミ程度の細い骨であれば、頭骨などの硬い骨以外は、きっとバリバリと一緒に食べてしまうだろう。うちの小さなふくでも鶏の骨を砕いてしまう。だから高いリンとバランスを保てるくらいのカルシウムを摂取することは可能で、代謝的には大問題とはならないようになっているのかもしれない。
さて、ネズミではなく、ウサギをデータの引き合いに出さざるを得なかったのが残念であるが、結論としてはネコの栄養を考えるにあたり、なにもネズミを参考にしなくとも構わないような気がした。小動物を生で（骨や血液、内臓も含め）食べる動物であるという基本線さえぶれることがなければOKと勝手に決めた。
要は、エネルギー産生に関して、タンパク質重視であり、炭水化物（糖と食物繊維）には依存しない、適度な脂質を求める動物といえる。
ちなみに、ネズミ1匹の代謝エネルギー含量を約30kcalとすると、体重2.6kg（1kgあたり80kcal/1日に必要とすると）のふくちゃんの場合には、1日に7匹のネズミを
捕まえて食べなければならない計算となる。
ネコが、一度にご飯を食べきらずに少し食べては散歩をしたり、うたたねをしてはまた食べに戻ったりする、いわゆる”ネコ食い”というのは、少量頻回捕食者（何回にも分けて食事をする動物）であることの確かな名残なのかも知れない。
（参考資料：動物看護のための小動物栄養学／阿部又信著／ファームプレス）
