2008年3月26日(水)
ネコに生の食材で作られた食事(本当は「食餌」と書くようですが、個人的に「えさ」という字面が好きではないので敢えて「食事」という字を使わせて下さい)を与えることによって、より健康的な暮らしをしてもらおうという、いわゆるローフードを勧めるHPや本などの記述を頻繁に目にするようになってきた。
私たち飼い主が最も気になる点は、「ローフードを中心にした食生活にすることによって、愛猫がより健康になるのか、ならないのか?」ということではなく、実は「生の肉を与えても果たして大丈夫なのか?」ということではないだろうか。私もそうである。
健康になれるかもしれないが、もし、安全性に欠けるのであれば、本末転倒極まりないことになる。そして、本猫ばかりでなく、一緒に暮らす人間側の家庭の中の公衆衛生上の問題も大いに気になるところである。特に、まだ抵抗力の弱い小さなお子さんのいる家庭ではなおのこと。
かくいう私は、中学1年生のときにキャンピロバクター(カンピロバクター)という細菌に侵され、激しい下痢を経験している。余談だが、この細菌の名前も食中毒の経験も忘れていないのには理由がある。中学1年生になって、すぐにテニス部に入部したのであるが、このキャンピロバクターのおかげで、大事な基礎練習の習得に出遅れてしまった。自分よりも下手な同級生が先のステップに進んでしまったのを大変悔しい記憶としてとどめている。
治療中は何も食べることが出来ず、ポカリスウェットと薬だけを飲む日々が続いた。確か1週間くらい学校を休んだのではないか?
しばらくはトイレの中で寝起きしたほうがいいのではないかというくらい、頻繁に下痢による腹痛に襲われた。一時は、キャンピロバクターなどよりももっと質の悪いサルモネラかもしれないと言われていた。サルモネラ菌に侵されると、幼児などは最悪の場合死に至ることさえある。
こういった危険な細菌を家庭内に持ち込むルートの最有力候補は、日々使われる一般食材の中に潜んでいるものである。鮮度の落ちた玉子、十分加熱されていない鶏肉や豚肉、生肉を切ったあとに、野菜を刻んでそのまま生野菜サラダにしてしまうなど。
だから、今でも家庭でしゃぶしゃぶやすき焼きなどをする場合にも、生肉を触った箸で、そのままご飯茶碗のご飯を取って食べるようなことは絶対にしない。
いつも注意しているのだが、奥さんなどは食中毒の経験がないから、案外、生肉を触った箸で他の料理をつかんで、そのまま口に放り込むようなことをやってしまう。
ローフードを推奨し、普及に努める人たちの中には、ネコなどの肉食動物は胃酸が人間の何倍も強力であるから、多少の細菌などは胃袋の中で死滅してしまうと唱えている。
それは果たして本当のことなのだろうか?
ピロリ菌は胃酸から自らを守るために、体の回りにバリアを張り巡らして耐性を備え、生き延びて潰瘍や腫瘍などの原因になっているという有力な説が発表されたばかりである。全てが都合よく死滅するとは限らないことの一例だ。鮭やマスなどに寄生するアニサキスのような寄生虫やその卵たちも生き延びて、腸管にまで達し、そこで成長し繁殖し、悪さをするかもしれない。
また、不幸にも、宿主となってしまった愛猫の糞便を処理するときに、それらが手に触れ、その後、その手で子供のよだれをふき取るときに、口腔内に細菌や寄生虫が入り込むかもしれない。うんちを取るプラスチック製のスコップを舐めてしまうかもしれない。
ネコの食器と人間の食器を一緒に洗っている家庭は多い。その過程で、食器にそれらが乗り移り、そのコップで家人が水を飲むかもしれない。
トキソプラズマは、多くの一般的なネコの飼い方入門書や雑誌などにも掲載されている人獣共通の脅威であることは有名である。ネコはイヌほど、舌でペロペロと人を舐める事はしないが、可愛いペットとキスをしたがる飼い主は多い。
そういうリスクを背負い込んでまで、果たしてローフードを支持する必要があるのだろうか?
ローフードを推奨する人たちは、そのような危険が隣り合わせにあることを正しく知らしめているだろうか?『ネコは元来肉食動物なのだから、より自然に近いローフードを与えることこそがナチュラルなことである。従って、必要とされるミネラル、酵素、ビタミン、必須アミノ酸及び脂肪酸などの栄養素も然るべく摂取することができる』などと安易に結論付けることは、個人的にはちょっと無理があるように思われ、懐疑的である。
(その2に続く)
ネコに生の食材で作られた食事(本当は「食餌」と書くようですが、個人的に「えさ」という字面が好きではないので敢えて「食事」という字を使わせて下さい)を与えることによって、より健康的な暮らしをしてもらおうという、いわゆるローフードを勧めるHPや本などの記述を頻繁に目にするようになってきた。
私たち飼い主が最も気になる点は、「ローフードを中心にした食生活にすることによって、愛猫がより健康になるのか、ならないのか?」ということではなく、実は「生の肉を与えても果たして大丈夫なのか?」ということではないだろうか。私もそうである。
健康になれるかもしれないが、もし、安全性に欠けるのであれば、本末転倒極まりないことになる。そして、本猫ばかりでなく、一緒に暮らす人間側の家庭の中の公衆衛生上の問題も大いに気になるところである。特に、まだ抵抗力の弱い小さなお子さんのいる家庭ではなおのこと。
かくいう私は、中学1年生のときにキャンピロバクター(カンピロバクター)という細菌に侵され、激しい下痢を経験している。余談だが、この細菌の名前も食中毒の経験も忘れていないのには理由がある。中学1年生になって、すぐにテニス部に入部したのであるが、このキャンピロバクターのおかげで、大事な基礎練習の習得に出遅れてしまった。自分よりも下手な同級生が先のステップに進んでしまったのを大変悔しい記憶としてとどめている。
治療中は何も食べることが出来ず、ポカリスウェットと薬だけを飲む日々が続いた。確か1週間くらい学校を休んだのではないか?
しばらくはトイレの中で寝起きしたほうがいいのではないかというくらい、頻繁に下痢による腹痛に襲われた。一時は、キャンピロバクターなどよりももっと質の悪いサルモネラかもしれないと言われていた。サルモネラ菌に侵されると、幼児などは最悪の場合死に至ることさえある。
こういった危険な細菌を家庭内に持ち込むルートの最有力候補は、日々使われる一般食材の中に潜んでいるものである。鮮度の落ちた玉子、十分加熱されていない鶏肉や豚肉、生肉を切ったあとに、野菜を刻んでそのまま生野菜サラダにしてしまうなど。
だから、今でも家庭でしゃぶしゃぶやすき焼きなどをする場合にも、生肉を触った箸で、そのままご飯茶碗のご飯を取って食べるようなことは絶対にしない。
いつも注意しているのだが、奥さんなどは食中毒の経験がないから、案外、生肉を触った箸で他の料理をつかんで、そのまま口に放り込むようなことをやってしまう。
ローフードを推奨し、普及に努める人たちの中には、ネコなどの肉食動物は胃酸が人間の何倍も強力であるから、多少の細菌などは胃袋の中で死滅してしまうと唱えている。
それは果たして本当のことなのだろうか?
ピロリ菌は胃酸から自らを守るために、体の回りにバリアを張り巡らして耐性を備え、生き延びて潰瘍や腫瘍などの原因になっているという有力な説が発表されたばかりである。全てが都合よく死滅するとは限らないことの一例だ。鮭やマスなどに寄生するアニサキスのような寄生虫やその卵たちも生き延びて、腸管にまで達し、そこで成長し繁殖し、悪さをするかもしれない。
また、不幸にも、宿主となってしまった愛猫の糞便を処理するときに、それらが手に触れ、その後、その手で子供のよだれをふき取るときに、口腔内に細菌や寄生虫が入り込むかもしれない。うんちを取るプラスチック製のスコップを舐めてしまうかもしれない。
ネコの食器と人間の食器を一緒に洗っている家庭は多い。その過程で、食器にそれらが乗り移り、そのコップで家人が水を飲むかもしれない。
トキソプラズマは、多くの一般的なネコの飼い方入門書や雑誌などにも掲載されている人獣共通の脅威であることは有名である。ネコはイヌほど、舌でペロペロと人を舐める事はしないが、可愛いペットとキスをしたがる飼い主は多い。
そういうリスクを背負い込んでまで、果たしてローフードを支持する必要があるのだろうか?
ローフードを推奨する人たちは、そのような危険が隣り合わせにあることを正しく知らしめているだろうか?『ネコは元来肉食動物なのだから、より自然に近いローフードを与えることこそがナチュラルなことである。従って、必要とされるミネラル、酵素、ビタミン、必須アミノ酸及び脂肪酸などの栄養素も然るべく摂取することができる』などと安易に結論付けることは、個人的にはちょっと無理があるように思われ、懐疑的である。
(その2に続く)