岡耕一郎法律事務所

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発言の趣旨

2011-10-31 13:23:03 | 法律問題
 ある大企業で、従業員が解雇されたことに対して、労働組合が主導して各組合員に「解雇撤回を求める」署名活動を行いました。
 
 その最中、その企業の取締役が、

 「署名するのは自由だが、社長のやったことに、違うぞと言うんであれば、それなりの覚悟を持ってやっていただきたい・・・」

と、発言したことが、組合活動に対する支配介入(労働組合法7条)に該当するのかどうか、ということが問題になりました。

 結論としては「・・・覚悟を持ってやっていただきたい・・・」という程度では、支配介入にはあたらないと、労働委員会が判断しました。

 ただ、覚悟を持って・・・がもう一歩踏み込んで、「もし署名したら、それぞれの立場が危うくなるかもしれない・・・」とか、「良識のある人なら署名したらどうなるかわかると思うが・・・」などという言葉になっていたら、結論は違っていたかもしれません。

 発言の趣旨としては、それほど変わりがなくても、結果は大きく変わることがあります。

 最近では、夫婦の会話などでもレコーダーで録音されていることがあります。

 たまーにですが、法律相談に来られる方の中にも、当然のようにレコーダーを持参される方がいらっしゃいます。

 場面場面で責任もった発言をこころがけたいものです。

誤嚥事故

2011-10-30 09:46:18 | 法律問題
 誤嚥事故というのは、お年寄りなど、食べ物を噛んで飲み込む機能が弱っている方が、飲み込んで胃に運ぶことができず、気管や肺に詰まらせてしまう事故のことです。

 こうした事故に関する裁判が増えているようです。
 
 高齢化が進んでいる状況ですから、今後ますますこうした事故の予防は重要になっていくと思われます。

 施設管理者に責任が認められるかどうかは、

  誤嚥に注意しなければならない患者さんだったか、

  施設として誤嚥防止のために特に対処をしていたか、

  誤嚥してもおかしくないような食べ物だったか、

といった点を考慮して決せられることになります。

 最近の裁判例では、入所時に誤嚥のおそれありと診断され、さらに誤嚥になりかけたことが複数回ある患者さんに、まぐろの刺身を特別な処理をすることなく食べさせ、誤嚥して死亡した事例で、施設に2200万円余りの賠償命令が出された例があります。

 誤嚥の予防策はもちろん重要ですが、もっと危険の少ない食べ物を提供できないものでしょうか。

 福山では、こうした研究、技術開発をすすめている会があります。

 野菜や肉を形はそのままなのにスプーンですくって食べられるくらいに柔らかくして提供する、という魔法のような技術です。

 「ベジとろん」「ミーとろん」という商品名だそうですが、名前のセンスはともかく、「ゼリー状のものでは食べた気がしない」という高齢者の方々も、形も味も野菜のままなら、満足感、満腹感が得られるし、事故の予防にも役立つんじゃないでしょうか。

一斉清掃

2011-10-29 09:33:20 | ローカル
 先日、福山市役所周辺で行われた一斉清掃に参加しました。

 午前7時から約1時間でしたが、市役所にはざっと見た感じ300名近くが集合していたように思いました。

 思いのほか大規模な清掃で驚きました。

 日頃、道ばたにゴミが落ちていても、きづかずに、または気づいても通り過ぎていくことが多いですが、こうした機会に短時間とはいえ、一生懸命ゴミ拾いをしてみると、清々しい気持ちになれます。

 私の場合、ほとんど自己満足という状態で、1時間ゴミ拾いをしたからといって街の美化に貢献したなどとは思えません。

 ただ、少なくともこの清掃に参加した人は、当分の間、ポイ捨てをする気にはならないと思います。

 一斉清掃への参加、オススメします。
 
 ゴミの内訳は、タバコの吸い殻が圧倒的に多いです。

 たまにクルマの窓からポイ捨てする人もみかけます。

 これまでも、特にクルマからのポイ捨ては苦々しく見ていましたが、今後は許せなくなるでしょう(怒)。

 とにかくゴミ拾い、みなさんやってみるべきです。



  

ドラフト制度

2011-10-28 23:34:55 | スポーツ
 我が広島東洋カープは、私の希望通り野村投手(明治大学)、土生外野手(早稲田大学)という二人の地元出身選手との交渉権を獲得しました。

 100点満点のドラフトだったと言えるでしょう。

 それに対して、読売巨人軍と菅野投手にとっては悪夢のようなドラフトとなったようです。

 意中の球団から指名されなかった選手はかわいそうだとは思います。

 今回の報道を見ていると日本ハムが指名挨拶をしなかったことについて道義的に疑問符がつけられているようですが、道義的というより戦略的に不適切だったと思います。

 入団交渉をして始めて獲得できるわけですから、そこまで見据えた場合、やはり事前あいさつはしておくべきだったのではないでしょうか。
 
 強硬指名することによって入団交渉が難航することは容易にわかるわけですから、他球団に隠すことよりも、少しでも交渉をスムーズに進める準備をすればよかったのでは。

 これに関連して、一部の関係者からは「ドラフト制度は独禁法に違反する」という発言もあったようです。

 たしかに、ドラフト制度は独禁法が規定する「一定の取引分野」における実質的競争制限に該当して、球団間の自由競争が阻害されているとみる見解もあるようです。

 ただ、ドラフト制度が独禁法違反なら、新規球団参入にオーナー会議の承認が必要としている野球協約にも独禁法違反の疑いがあります。

 スポーツに関わる法制度は、未熟な点が多くあり、スポーツ法の研究も最近になって熱心に行われるようになってきたようです。

 以上のような内容が、以前読んだ「スポーツ法への招待」(ミネルヴァ書房)に記載されていたことを、今回の独禁法違反発言で思い出しました。

残業代

2011-10-27 07:03:32 | 日記
 残業代の不払いについて、労働基準監督署が是正指導した実績(平成21年度)が公表されました。
 
 是正指導によって、約1200企業から、労働者11万人に対して残業代が支払われたようです。

 ただ、この数字は支払金額が100万円を超えた事例だけを対象に集計されていますから、従業員5人にそれぞれ15万円ずつ支払ったような事案(支払総額75万円)は除外されています。

 したがって、是正指導によって支払われた総額は、もっと多くなるはずです。

 この集計は、100万円以上を支払った企業に限って公表されていることから、

「うちみたいな小規模な事業のところは関係ない」

と、捉える事業主もいるようですが、残業代を請求するのに企業の規模はあまり関係ないでしょう。

 今回の是正指導でも、一人あたりの平均支払額は、15万円程度です。

 その程度の請求ですから、請求することによって企業が倒産することを恐れて労働者が自粛するなんてことはありません。

 残業代の争いをなくすには残業をなくすのが最も効果的ですが、まずは労働時間をきちんと把握できるようにし、労使間で実労働時間の争いがないようにしなければなりません。
 
 最近は、労働時間管理にペーパーレスの電子タイムカードなどが利用されているようですが、方法の如何にかかわらず労働時間を正確に把握することが事業主の責務とされていますから(厚労省が使用者がなすべき措置の基準を策定しています)、注意が必要です。