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父親不在症候群とは  №278

 日本では子どものいる世帯のうち10分の1が父親のいない世帯だといわれています。厚生労働省の平成28年度調査によると、一人親世帯約142万世帯のうち、約87%に当たる、123万世帯が母子世帯で、平均収入は243万円です。
 父親の不在の要因は、死別や離婚、婚外子等があります。また、父親がいたとしても、仕事一筋で家庭を顧みない父親や夫婦仲が悪く子どもを顧みない父親、アルコールやギャンブル依存の父親など、心理的、機能的不在の場合もあります。
 精神科医の岡田尊司先生は、「父という病」(ポプラ社刊)の中で、経済的な問題とは別に、父親不在の家庭で育った子どもたちの精神的な困難さを「父親不在症候群」としてその問題を指摘しています。
(1)母親への依存と分離不安
  3歳児の頃に母親からうまく自立へ導かれないと、母子分離が成し遂げられず、母親に執着するし依存する一方で、母親に対して支配的で、攻撃的になり、アンビバレントな状態になる。母親にべったりになると共に、母親に対して要求がましく、それが満たされないと攻撃的となる。
(2)誇大な願望と自己コントロールの弱さ
  父親は社会的な存在として、幼児的な誇大自己を抱えたまま万能感を持つ子どもに対して、歯止めをかけ、だめなものはだめとブレーキをかけ、社会の厳しさを教える立場にある。それがないと、誇大な万能感や自己顕示性がそのまま残り、社会で適応するのが困難になりやすい。
(3)不安が強くストレスに弱い
  社会の厳しさや社会に適応する導き手であり、また保護してくれる存在である父親の不在は、生ぬるい空想の中に子どもをとどめ、社会の中で自己を確立することを困難にしがちである。
(4)三者関係が苦手で集団不適応になり易い
  複数の関係よりも一対一を好み、一対一の関係でしか、安心して自分を出せない。父親がいることで子どもは三者関係でも安心感を失わずに気持ちや行動を共有することを学ぶが、父親が、心理的、機能的不在で、母子融合の状態が続いてしまうと、自分だけを特別扱いして貰えない三者関係に強い不満と疎外感を覚えてしまう。そのため、集団不適応の原因ともなる。
 岡田先生は、他にも、「学業や社会的な成功に対する影響」や「性的アイデンティティの混乱」等の問題をあげています。もちろん、父親不在で育った人が全てこうした問題を抱えてるわけではありません。子どもの成長にとって母親の影響が大きいことは勿論ですが、父親の不在も、決してないがしろにはできないということです。

  

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