Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

キャロル・オコンネル「愛おしい骨」

2011-08-30 23:05:46 | 読書感想文(海外ミステリー)



20年ぶりに故郷へ帰還したオーレンを迎えたのは、時が止まったかのように保たれた家と、
行方不明になっていた弟の骨だった。誰かが玄関先に、死んだ弟の骨を少しずつ置いていく。
20年前、森で行方不明になった弟は、誰に殺されたのか。骨を運ぶのは誰か。
元軍人のオーレンは、閉鎖的な故郷の町の中で、謎を解くカギを探そうとするが…


キャロル・オコンネルは初めて読む作家でしたが、文庫の帯に“『このミス』海外編1位”とあったので
期待して読みました。ちょっとページ数が多いし、文庫にしては1200円とちょっと高かったけど。

20年前に行方不明になった弟の骨が、少しずつ家に戻ってくる。
それだけでも不気味なのに、久しぶりに戻ってきた我が家は寸分たがわず昔と同じ状態を
保っている。死んだ飼い犬を剥製にして床に置き、昼寝しているかのように見せかけてまで。
骨が戻ってくることよりも、そこまでして家を保とうとする主人公の父親の執念のほうが
怖かったです。

主人公の父親もアレなんですが、それ以外の登場人物、主人公の故郷の町の住人達もことごとく
奇妙な人間ばかりでした。なんていうんですかね、やっぱ田舎の淀んで閉鎖的な空気がですね、
そこに住む人を少しずつ狂わせちゃうってことなんですかね。客観的に見たら問題ありすぎな
人でも、「まあ同じ町の住民なんだし」ってなんとなく許されてしまうところ、ありますもんね、
田舎だと。それがけして悪いとはいいませんが。

オーレンの弟・ジョシュを殺したのは誰なのか。そしてなぜ殺したのか。
骨を玄関先に持ってくるのは誰なのか。その目的はなんなのか。
物語の中に謎はいくつもでてきますが、それらの謎がそれぞれ複数の人間に関わることで、
よじれたりもつれたりして複雑になっているので、読んでてとてもややこし…じゃなくて
面白かったです。ある章を読んだときに
「わかった!こいつが犯人だ!」
と思い、また別の章を読んで
「違った!犯人はこいつだったか!」
と修正し、最後まで読んで
「えーっ!結局こいつだったのー!?」
とびっくり仰天する、と。まるでジェットコースターのように、上がったり下がったり回ったりして、
いったいどこに落ち着くのかと読みながらハラハラドキドキしました。そして登場人物が
あまりに多いので誰が誰だかわからなくなることもしばしあり、読みながら何度も登場人物紹介を
再確認しなくてはならず、そこは少しめんどくさかったです。特にイヴリンとイザベル。
慣れるまでかなり時間がかかった…。

登場人物が多いので、ジョシュを殺した犯人andジョシュの死体にまつわる犯罪を犯した人物の候補も
多かったのですが、真相は私の予想の斜め上だったので、読み終わったときはほんとにあ然ボー然と
してしまいました。

私の予想では、

・実は町の住民全員がグル(オリエント急行方式)
・実は犯人は主人公に一番近い人物(この場合父親と家政婦)
・実は犯人は主人公
・実は弟は生きている

のどれかだったのですが、実際は、

いやーまいったまいった、まさかあの人が犯人だとは意外だったねぇ。

これじゃもう一度最初から読み返さないといけないや!

…と頭をかきながらぼやきたくなるほど、自分の予想と違ってました。
うーむ、私の勘も鈍ってきたなぁ。。。

というわけで、ミステリー部分は面白いのですが、それ以外はちょっと私の趣味に合わない
ところが多かったです。

まず、主人公がイケメンすぎるところ。
そして、そのイケメンすぎる主人公が17歳の時の恋人が、当時40代の女性だったこと。
その設定は誰に対してこびてるんだ、と。それ以外にも、若い男性と年上の美しい女性の
プラトニック・ラヴなカップルが出てきて別にそういう恋愛もあるところにはあるんでしょうが、
ちょっとなんというかある年齢層の女性読者へのサービスが過多なんじゃないの、って気がしました。

ですが、そういう恋愛描写を除くと、この本に出てくる登場人物は濃ゆくて強烈な人が多くて、
話がたいして進まない章でも、彼らのやりとりを読んでるだけで面白かったです。
特に私が気に入ったのが州捜査官のサリー・ポーク。一見、どこにでもいそうなおばちゃんなのに、
のらりくらりと男どもの追求をかわし、自分の目的を遂げる様は痛快でした。いや、結構やな人
なんだけどね。この小説って、主人公サイド以外の人物のほうが魅力的なのよね。
悪魔のような弁護士のアディソンでさえ、妻を愛するがゆえの嫉妬に狂った哀れな男として
惹きつけるものがあるし。いや、実生活でこんな人とは関わりたくないけど。

逆に、主人公はというと超イケメンだしエリート軍人で頭は切れるしタフガイだし、
ヒロインのイザベルは狂暴すぎてついてけないし、イザベルの母親はアル中なのに物語の中では
超絶美女設定で女神みたいに崇拝されてるし、主人公の家の家政婦はスーパーウーマンだしで、
まあちょっとオプション欲張りすぎてうざったくなってしまってました。
やっぱ人間不完全だったり、苦手なものがあるほうが魅力的だってことですかね。


とはいえ、久しぶりに読んだ海外ミステリーはやっぱり面白かったです。
日本では現実離れしてしらけてしまいそうな大仰な舞台設定が堂々と出てきたりして。
たまには日常を離れて、フィクションの世界に没頭することも大事ですね。
なんせ、私の日常はあまりにボーントゥビーワイルドでデッドオアアライヴなもんですから…ふふふ。



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