Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

アイスショーツアーin大阪 その壱

2018-04-02 23:36:07 | バレエ・演劇



3月最後の週末に、大阪は門真にある東和薬品RACTABドーム(なみはやから名前変わったのね)へアイスショーを2本見てきました。
ひとつは、「THE LEGENDS ~Medal Winners Gala 2018~」という、なんかものものしいタイトルのアイスショー。
そしてもうひとつは、「STARS ON ICE JAPAN TOUR 2018」です。名前が長いので、以降はそれぞれレジェンズ、スターズオンアイスと呼びたいと思います。



ドーム入り口に、看板が2枚並んでました。3日間そのまんま。いっそ潔い。

チケットを取ったのはスターズオンアイスのほうが先だったのですが、その後レジェンズの先行予約のお知らせが来て、出演者結構被ってるからどうしようか迷ったのですが、レジェンズのほうには無良崇人選手(当時)が出るとあったので、こちらもチケットを取りました。それだけが理由ではなく、どちらもネイサン・チェン選手(以降ネイサン)が出てるからというのもあるんだけど…どちらのチケットを取った時も、まだ世界選手権どころかオリンピックも始まってなかったので、ホントに出演してくれるんだろうかと心配はしていたのですが、このチャンスを逃すともう次はないかもしれないという気もしたので、ここはひとつ思い切って、今までよりもちょっとお高めの席のチケットを取りました。つってもアリーナ席とかじゃないけどね。あの席に座れるほど私の財布は分厚くない…。

でも、いま振り返ると、レジェンズは本当に行って良かったです。レジェンズの公演の中で行われた、無良君の引退記念セレモニーを見ることができたのですから。無良くーん、ありがとーう(T_T)

はい。そういうわけで、まずはレジェンズの感想からです。このアイスショーはちょっと変わっていて、次に滑るスケーターをMCが紹介するのではなく、出演スケーター同士で紹介するという形になってました。トップバッターの無良君を紹介したのは田中刑事選手、織田信成君を紹介したのは鈴木明子さん、ネイサンを紹介したのはパトリック・チャン…といった感じ。パトリックは当然英語での紹介だったので、何を言ってるのか詳しくはわかりませんでしたが、"eighteen years old"とか"quad king"って言われたら誰のことかわかりますよね。宮原知子選手を紹介したのは宇野昌磨選手でしたが、彼らしい紹介の仕方だったので、場内ではどっと笑いが起きました。そのリベンジなのか?宮原知子選手と坂本花織選手による宇野昌磨選手の紹介も、関西らしい楽しく笑える内容でした。スケーター同士、本当に仲が良いのが伝わってきて微笑ましかったです。

各スケーターたちが滑るのは「これまでのキャリアの中から選んだ思い出のナンバー」という触れ込みでしたが、今季のエキシビションナンバーの人もいれば新プログラムの人もいました。若い選手が過去のプログラムを滑るのは、まだ時期尚早って気もしますからね。

スケーターそれぞれの演技について感想を書くと恐ろしく長くなって誰も読んでくれなくなりそうなので端折りますが、どのスケーターの演技もとても素晴らしかったです。以上。…って端折りすぎや!とりあえず田中刑事選手について、彼が椿姫を滑っている時、うっかり双眼鏡越しに目が合ってしまい、あやうく恋に落ちてしまうところだったということは報告しておきます(真顔)。ちなみに、感想は出演順ではないので悪しからず。

今季急成長した坂本花織選手のジャンプはとても高くて幅があり、思わず「おお」と声を漏らしてしまうほどで、宮原知子選手のスケーティングはスピードとパワーがあって、彼女の背中からは全日本女王の貫録を感じました。日本女子、なんだかんだでまだ下克上は難しそうです。

背中、そう、背中…。実は私の席はレジェンズもスターズオンアイスも、いわゆるジャッジ席とは反対側の席だったので、どのスケーターも演技の冒頭とフィニッシュ、ジャッジにアピールする肝心の見せ場では背中しか見ることができず、会場で生で見ているのに関わらず、普段テレビで見るよりも想像力を駆使して見る羽目になりました。いや、少なくともレジェンズではジャッジの目線とほぼ同じ高さにある席だったから、今まで見たショーより楽しむことができたのですが。エキシビションナンバーならともかく、ショートやフリーのプログラムを滑られると、なかなかキツかったです。村元哉中&クリス・リード組の今季フリーを生で見られて嬉しかったけど、衣装チェンジの場面は正面からしっかり見届けたかったなぁ。。。

織田信成君はウイリアム・テル、鈴木明子さんは「O(オー)」でした。どちらも懐かしいプログラムです。ショー用に構成を変えているものの、現役時代と同じかそれ以上に魅力的でした。織田君、テレビの仕事に監督業に忙しいのに、いつ練習してあそこまで作り上げてるんだろう?鈴木さんの上半身の動きはまさに鳥のようで、すごいなあ、どうしてこんな表現ができるんだろうとうっとりしました。

レジェンズ第1部のトリを飾ったのはネイサンでした。これまでに見たエキシビションナンバーか、それとも今季ショートのネメシスかと予想していたのに、まさかの新プロ、"Back from the edge"という曲でした。「絶望の淵から這い上がる」みたいな内容の歌らしいので、オリンピックの失敗から復活して世界選手権で優勝した自分自身と重ねているんでしょうか。とはいえショーを見ていた当時の私はそんな歌詞を知る由もなく、音楽と一体化したネイサンの動き―ジャンプ、スピン、ステップ-に見とれてました。白シャツに黒ズボン、シャツの裾はINしないという、相変わらずそのへんにあった服を適当に着てみました的な衣装でしたが。それはともかくネイサンの演技は、いつ見ても「体で音楽を表現する」と言うより「体が音楽そのものになる」と言った方がふさわしい気がします。スケートのみならずダンスがものすごく上手いからそうできるんでしょうけど、これから先ネイサンがその高い能力をどうスケートに活かしていくのか楽しみです。

第1部の後、休憩に入る前に、織田君を司会にして、平昌オリンピックの男女シングルメダリスト、フェルナンデス選手、宇野選手、メドベージェワ選手、ザキトワ選手のトークショーがありました。トークショーと言っても、織田君が1人1人に質問して答えてもらうってだけでしたが。フェルナンデス選手は来シーズンいくつか競技会に出て、それから引退するだろうとのことで、彼が英語で"maybe say good-by"と言った瞬間、会場がしんみりした空気になりました、というか私がしんみりしました。メドベージェワ選手は最近ロシアで日本のアニメ映画を見たとのことですが、タイトルはわからず。ザキトワ選手は織田君に「秋田犬の名前をノブナリにしませんか」と聞かれ、「考えときます」とスルーしてました。宇野選手は相変わらずのマイペース。いまいち盛り上がりに欠けた気もしましたが、盛り上がらなくてもいいコーナーな気もします。織田君、選手の皆さん、通訳の方たち、お疲れさまでした。

で、お待ちかねの第2部。私は第1部のネイサンを見てもはや7合目まで達した気でいましたが、第2部トップバッターのパトリック・チャンを紹介するために、フェルナンデス選手とネイサンが現れたのを見て姿勢を正しました。はい、家に帰るまでが遠足ですもんね!まだ気が抜けません!

そして、姿勢を正してから見たパトリックの演技の素晴らしいことったらもう…目の前のリンクを、右から左へ動いていくその姿を見ているだけで「美しい…」と声に出してしまうほどでした。滑らかなスケーティング、的確なエッジワーク、高速スピンや高難度ジャンプがなくても、ただただ夢見るように美しい…たとえ、来ている衣装が「それ、パジャマですか?」と聞きたくなるほど普段着ぽくても。アイスホッケーかアメフトをイメージしたような、だぼっとした赤いトレーナーでした。空港のお土産屋に売ってそうな…。いや、もしかしたら一流デザイナーがデザインしたものかもしれんけど。ネイサンの衣装をデザインしたヴェラ・ウォンの例もあるし(蘇る悪夢)。もし誰かに「君の衣装、地味すぎない?」と言われた結果選んだのがアレなんだったら、アドバイスした方にも責任があると思うし…つかその場合、努力した結果がアレってことになるのか…。

北米男子の普段着衣装問題が深刻化する中、日本の銀メダリスト、宇野昌磨選手が登場。宮原知子選手と坂本花織選手による紹介は笑いが起きてましたが、宇野君が披露したのは、今季フリーのトゥーランドット。どシリアスです。しかも、衣装は黄色!グランプリファイナルのあの黄色い衣装です。封印されたかと思ってたのに、まさかまた見られるとは!もしかして本人は気に入ってたんでしょうか。

宇野選手のトゥーランドットはフリーそのまんまではなかったですが、やはりさすがのトゥーランドット、みんな大好きトゥーランドットで、会場は盛り上がりまくり、クリムキンイーグルでは大歓声、フィニッシュポーズの後はスタンディングオベーションと、まるでオリンピックか世界選手権の会場のようでした。プログラムの構成が上手いのか、私の席からも「背中しか見えない地獄」に陥ることがなく、存分に楽しむことが出来ました。もしかすると、このプログラムを今季何度も見ているから、多少見えなくても脳内補完が出来てるからかもしれませんけど。

ザキトワ選手は今季エキシビションで滑っていた"Afro Blue"でした。テレビの画面を通して何回も見てるけど、生だと彼女のスケートのしなやかさがより伝わってきて新鮮でした。今季はショートもフリーもクラシックバレエだったので、来季は競技でもこういうコンテンポラリーっぽいのをやってほしいですね。メドベージェワ選手は怪我をしているので、体に負担がかからないよう工夫された新プログラムでしたが、残念ながら私の席からは9割がた後ろ姿しか見られず、なんだかよくわからないままに終わってしまいました。とほほ。でも、ひっつめ髪でメガネをかけてコートを着込み、ちぢこまって本を読んでいた女性が、髪をほどいてコートとメガネを脱ぎすてて、解放されていく姿は彼女自身の未来を暗示しているようでドラマティックでした。まだ17歳。来季への復活を期待します。

フェルナンデス選手が選んだのは、こちらもみんな大好きハビエルマンでした。トークショーでしんみりした空気を振り払うかのように、会場が笑い声で盛り上がりました。ハビエルマンに水をかける役はパトリックが担当。適任です。ラ・マンチャの男みたいなかっこいいプログラムから、こういうお茶目でノリのいいプログラムまで幅広くこなせてしまうフェルナンデス。彼がいなくなることを、羽生君がとても寂しがっていたのもわかります。私も寂しい(T_T)

大トリはプルシェンコの名プログラム「ニジンスキー」でした。私の右隣の席の人はプルシェンコの大ファンらしく、「ジェーニャ!ジェーニャ!」と大興奮しておられました。気持ちわかる。私もネイサンの出番の時は変な声連発してたし。プル様はとてもプル様らしく、相変わらずの皇帝ぶりでした。かっこいい。ただひたすらにかっこいい。たとえジャンプの軸がブレブレで、あれでよく着氷できるなーと思うほどでも。プル様が動くたびに放たれるオーラに圧倒されました。いやマジで。こんな人と対等に渡り合えたなんて、ヤグディンはほんとにすごいなぁと思います(結論それかい)。

フィナーレの前に、無良君の引退セレモニーがありました。本人の挨拶、高橋大輔さんからのビデオレター、織田君と明子ちゃんからの花束贈呈などなど。織田君はまた泣くかなと思っていたけど、意外ときりっとした顔で泣かずに終わりました。私自身も、セレモニーを見ながら泣くかなと思ってハンカチを握りしめていたのですが、しんみりはしたものの涙は出ませんでした。それは、このセレモニーの前に、もう既に無良君が次のステージに向かっていることがわかっているから。サンクスツアー、頑張ってほしいです。羽生君のイベントにも出るらしいけど。

フィナーレは、かつてプルシェンコが演じたこともある名曲中の名曲、「ボレロ」でした。まずはプルシェンコが滑り、その後出演スケーターが順に登場して滑り…うん?ちょっと待てよ?ということはこのままいくと

ネイサンがボレロを滑るということか!

ネイサンのボレロ!この私の!長年(実際そんなに長くない)の夢が!まさかここで叶うというのか!

3人目くらいのスケーターが登場したところでそのことに気づいて以降、私の頭の中は「ネイサンのボレロ」でいっぱいになってしまいました。他のスケータの皆さん、その人たちのファンの皆さん、どうもすみません。でも、フィギュアスケートとバレエ、特にモダンバレエを愛する人ならわかってもらえるんじゃないでしょうか。

やがて、念願のネイサンがリンクに現れてから、フィニッシュまでの短い間、私の目はひたすら彼を追い続け、一瞬たりとも見逃すまいと必死になりました。ギエムの最後のボレロだって、ここまで真剣にならなかったと思います。だって最後のボレロ、何回もあったから…。

全身でメロディを捉え、解放する。足で氷にリズムを刻み付け、また飛び上がる。浮遊感、高揚感。音楽が最高潮を迎えた後のフィニッシュポーズを見た瞬間、雷に打たれたような気分になりました。大げさかもしれないけど、本当に。たまたま、ネイサンが私の席の側を向いていたから、尚更見入ってしまったというのもありますが。それまで背中ばかり見えていた席なのに。ボレロの最後、リンクの中央にいたのはプルシェンコでしたが、きっと、プルシェンコ自身も、フィナーレにこのボレロをやることで、若い、新たなレジェンドにバトンを受け継ぐつもりだったのかなーと勝手に思っています。勝手に。ええ、勝手に。エンディングで、皆が一列に並んだ時、プルシェンコの隣にいたのは彼ですし。きっと、何か伝えたい事、思う事があるのだろうなと。

無良君の引退セレモニーでは泣かなかったものの、最後のボレロが終わってからしばらく、私は両目にハンカチを押し当ててました。こんな素晴らしいものを見ることが出来て嬉しかったから。生きていてよかったと思ったから。神様ありがとう。生きていればいいことがあると教えてくれてありがとう。私を生かしてくれてありがとう。何の宗教にも帰依してないけど、どこかにいる神様、本当にありがとう。そしてプルシェンコと、振り付けを担当してくれた佐藤有香さんもありがとう。この先の人生で、つらいことがたくさんたくさんあると思うけど、この日のボレロを思い出せばなんとか頑張れると思います。少なくとも次の北京五輪までは。あるいはネイサンが単独でボレロを滑る日までは!絶対やるよね!確定だよね!(←北京の前にボレロを滑ったらどうするつもりなのだろう)

…さて、そこまで感動したボレロですが、最後の最後に、男性陣が割とシンプルな黒い衣装で統一している中、「とりあえず黒い服着て来いって言われたからタンスの中から黒っぽい服を引っ張り出してきた」とでも言いたげな黒地のトレーナーあるいはTシャツ(胸にプリントあり)を着ている宇野昌磨20歳を見て「やっぱり恐ろしい子…!」と白目になりました。なんで無地にしなかったのよあなた…!大物過ぎて別の意味で震えるわ!

長くなったので2回に分けます。スターズオンアイスの感想はまた明日。


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