映画なんて大嫌い!

 ~映画に憑依された狂人による、只々、空虚な拙文です…。 ストーリーなんて糞っ喰らえ!

晩春 ~映画の読解 (8)

2010年11月15日 |  晩春
     ■『晩春』 (1949年/松竹) 小津安二郎 監督


●♪Cavatina
 父・周吉(笠智衆)の“助手”を務める服部(宇佐美淳)は、紀子(原節子)をコンサートへ誘います。《巖本眞理提琴独奏會(4/26)》。コンサート会場(東京劇場)から流れてくる楽曲は、ヨアヒム・ラフ(Joseph Joachim Raff)作曲の♪Cavatina。

 J・ラフは、かの有名な大音楽家フランツ・リストの“助手”を務め、その後作曲家としての道を開きます。フランツ・リスト(Franz Liszt)にはスペルに「Z」が付き、「Z」の付かない経済学者フリードリッヒ・リスト(Friedrich List)とを区別する会話が、周吉と服部の間で交わされていました。ちょっとした“助手”つながりです。その時の遣り取りには、こんな台詞もあります。

9=曾宮の家 室内
 服 部 「先生、リストっていうのは殆んど独学だったんですね」
 周 吉 「ああ、それでいて(中略)、官僚主義がたいへん嫌いな男でね」

 これは、小津・野田両氏の事でもあるようで、また映画法(1939-1945)なる如何わしい法律によって、官僚統制下にあった戦時中の諸事への怨み節のようでもあります。ただ戦後とは言え、やはり余韻を持たせるには危ない台詞だと判断したのでしょう、間髪入れずに…

   声   「3キロ超過です」

 という、電気の消費量を計りに来ていた男の台詞を挿入し、「官僚主義がたいへん嫌いな男でね」の余韻を直ぐ様断ち切っています。台詞を言うタイミング一つで、流れを変化させてしまうあたりの演出は流石です…。


●♪My Blue Heaven
         

 余談になりますが、ついでにもう一曲。『小津安二郎物語』(厚田雄春・蓮實重彦 共著/筑摩書房)からのエピソード。新作の社内試写が行なわれる際には、決まって小津組は♪My Blue Heavenを蓄音機で流し、意気揚々と出陣して行ったそうですよ……つづく


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