■『晩春』 (1949年/松竹) 小津安二郎 監督
●不在の台詞
娘・紀子(原節子)と父・周吉(笠智衆)が、それぞれ初めて画面に登場する場面では、家族の“不在”が共通して示されます。紀子にとっての《母》、周吉にとっての《妻》の“不在”です。
4=庫裡の一室(控えの間)
紀 子 「叔母さま、お早かった?」
ま さ 「ううん、ほんの少し前……。今日はお父さんは?」
紀 子 「内でお仕事、昨日までの原稿がまだ出来なくて」
ま さ 「そう……。ねぇ、叔父さまの縞のズボン、ちょいちょい虫が食っちゃったんだけど、勝義のに直らないかしら?」
(※写真:1)
「お母さんは?」なり、「お母さんに言って直らないかしら?」なりの台詞はありません。
9=曾宮家の室内
声 「電灯会社です、メートル拝見します」
周 吉 「ああどうぞ」
声 「踏み台貸して下さい」
周 吉 「ああ」
服 部 「どこです」
周 吉 「廊下にあるんだがね、梯子段の下の、すまんね」
服 部 「いいえ……」
(※写真:2) (※写真:3)
服部(宇佐美淳)の反応は素早く、戻って来てからも「今日は奥さんどちらへ?」という台詞などはありません。勿論、不自然であるが故に“不在”は強調されるのでしょう…。
“不在”の理由は終盤まで明かされず、ミステリアスなまま展開して行きます。離婚したのか、入院中なのか、仏壇や遺影は一切映されません。
(※写真:4)
いよいよ紀子が嫁ぐ日を迎え、花嫁の支度を終えた際に叔母まさが口にする「…亡くなったお母さんに一目見せてあげたかった…」という台詞で、初めて不在の《母》《妻》が亡くなっていた事実は明かされるのです……つづく。
●不在の台詞
娘・紀子(原節子)と父・周吉(笠智衆)が、それぞれ初めて画面に登場する場面では、家族の“不在”が共通して示されます。紀子にとっての《母》、周吉にとっての《妻》の“不在”です。
4=庫裡の一室(控えの間)
紀 子 「叔母さま、お早かった?」
ま さ 「ううん、ほんの少し前……。今日はお父さんは?」
紀 子 「内でお仕事、昨日までの原稿がまだ出来なくて」
ま さ 「そう……。ねぇ、叔父さまの縞のズボン、ちょいちょい虫が食っちゃったんだけど、勝義のに直らないかしら?」
(※写真:1)
「お母さんは?」なり、「お母さんに言って直らないかしら?」なりの台詞はありません。
9=曾宮家の室内
声 「電灯会社です、メートル拝見します」
周 吉 「ああどうぞ」
声 「踏み台貸して下さい」
周 吉 「ああ」
服 部 「どこです」
周 吉 「廊下にあるんだがね、梯子段の下の、すまんね」
服 部 「いいえ……」
(※写真:2) (※写真:3)
服部(宇佐美淳)の反応は素早く、戻って来てからも「今日は奥さんどちらへ?」という台詞などはありません。勿論、不自然であるが故に“不在”は強調されるのでしょう…。
“不在”の理由は終盤まで明かされず、ミステリアスなまま展開して行きます。離婚したのか、入院中なのか、仏壇や遺影は一切映されません。
(※写真:4)
いよいよ紀子が嫁ぐ日を迎え、花嫁の支度を終えた際に叔母まさが口にする「…亡くなったお母さんに一目見せてあげたかった…」という台詞で、初めて不在の《母》《妻》が亡くなっていた事実は明かされるのです……つづく。
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