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(た)のShorinjiKempo備忘録

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

諸手十字抜

2025年04月26日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。


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諸手十字抜は、旧・科目表では1級科目として習得した龍王拳(抜き技)の法形です。
旧・1級科目の龍王拳は、衣服取りである袖抜襟抜と、初段科目=小手巻返の母技である片手押抜を除くと、諸手技の諸手突抜諸手十字抜諸手引抜の3つとなります。
1級科目の諸手技としては、その他に龍華拳諸手巻小手諸手十字小手がありました。

旧・科目表では諸手技の初出は、2級科目諸手切返抜諸手切小手です。初段科目だと諸手技には、攻撃に逆天秤を想定した諸手押抜と一本背投を想定した諸手巻抜諸手輪抜になります。2級・1級・初段科目で様々な諸手技を修練する事により、基本の片手技に対しても理解が進む事が期待されていると思います。

さて諸手十字抜の攻撃法は、旧・科目表には「手首逆押す、または腕逆捕」とあり、これは続く諸手十字小手も同じです。「腕逆捕」というと一般には諸手巻小手(1級技)の攻撃法として認知されていると思いますが、巻小手の龍王拳の母技は、諸手引抜(1級技)です。
ですから腕逆捕に対する龍王拳としては、諸手引抜だけでなくて諸手十字抜も想定されているんだ、という事は、指導者も覚えておいた方が良いかも知れません。
*腕逆捕に対する諸手4技は、諸手引抜・諸手十字抜・諸手巻小手・諸手十字小手の1級科目

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そうするとまず攻者が腕逆捕にきた時の、諸手引抜と諸手十字抜の使い分けを考えなければなりません。やや高目に掲げた守者の前手を、攻者が諸手で掴んできて振り落とすような動きに入る訳ですから、中段構えの時より守者は上半身を崩される虞れがあります。何はともあれまずは鉤手守法を取って、握られた腕を後腰に据える事になります。攻者に向って回り込むような守法になる筈です。
この時、攻者が強く両肘を張っていれば諸手引抜を行なう訳です。諸手引抜の方が可能であれば素早い抜きと反撃が出来るので、こちらが優先されると私は考えます。

一方腕逆捕攻撃に対し守法した際に、攻者の両肘が閉じて守者が引き切ろうとする方向に抵抗するように絞ってきてしまった場合、或いは掴んだ腕を(腕逆捕を意図しているので)低く振ってきた時などには、十字抜を考える事になるでしょう。十字抜を行なう為には肘を十字に被せなければなりませんから、低く鉤手を取るのがコツなのは片手十字抜と同じです。高い位置の儘なら、肘を被せようとしても攻者が抵抗すれば肘は容易に止められます。そうした迂闊な後輩には、しっかり十字抜を封じて教えてあげましょう。

もう一つの場合は、攻者が諸手で押込んできた場合です。守者が武器だか貴重品だかを持っている時に、攻者がそれを奪いにきたりして揉み合いになりかかると、引いたり押したりの膠着状態が生まれます。
この時、こちらの残っている手で牽制の当身をしつつ、攻者の押す力も利用して、我の肘を被せて片方の手首を殺し、十字抜で抜きます。

諸手の十字抜では、通常は反対側の手も同時に抜けてしまいます。一言付け加えたいのは、よく「SKの諸手技では、先に掴まれた方の手に技を施す」という先生がいるのですが、この法形は当てはまらない、という点です。腕逆捕なら尚更ですが、普通攻者は諸手の掴みであれば内手首から取ってきます。しかし十字抜を掛けるのは外手首を握った方の手に対してであり、諸手同時に抜けてしまいます。こういう技もあると留意しましょう。【↓追記あり】

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当身は科目表には「横肘当 or 裏拳打と中段突」とあります。
諸手十字抜で抜こうとした時に、なんとか抜かせまいとして攻者の身体がついてくると、抜いた後でも腕が邪魔になりますし、攻者の上体が前傾して中段が深くなりますから、反撃は上段への裏拳打を選択するのが当然です。
そうでなく手首だけが返ってS字で抜けると、攻者の上体はやや正対するように立ってますから、抜いた後は横肘当てが効果的になるようです(私自身は余り諸手十字抜で横肘当をする先生を見た記憶はありませんが…)。

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【追記】今回本部の公式動画を確認して驚きました。
本部からは以前に公式科目DVDが2回製作されているのですが、諸手十字抜では、新旧2つとも開き構えの布陣から、攻者が外手首から取りに行っているのです。(科目表には布陣の指定はありません)「攻者は守者の腕を押さえつけます」と解説が入るのですが、内手首を取りに行く手はその下を取りに行くんですよね。力が入らないと思うのですが。… 研究の余地アリです。
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