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(た)のShorinjiKempo備忘録

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

片手巻小手

2025年05月03日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

     ◆     ◆     ◆

片手巻小手は、旧・科目表では1級科目として習得した龍華拳の法形です。
攻撃は科目表には「内手首・逆」とあります。これは中段構えよりやや高く掲げた守者の前手・内手首を、攻者が対構えから逆手の形で掴んでくるという意味です。この形(内手首)で押し込んで来る事は余り無いと思うので、通常は掴んだら攻者は引っ張ってきます。すると片手切抜(内)(旧・4級科目)と同じ攻撃になりますので、対応する龍王拳としては切抜で抜く形になります。
但し科目表には「引く」と明記されていないのですから、前腕を振ったり倒してきたり、下に引き下ろそうとする動きなども考えられます。何れにしても一旦鈎手守法で守るのが基本になります。

教範には巻小手は諸手巻小手しか載っておりません。諸手巻小手の攻撃は腕逆捕です。諸手巻小手と片手巻小手では、攻者の掴んでくる体勢が異なります。片手/諸手共に最初の布陣は対構えなのですが、諸手の際には攻者は必ず足を差し替えて入ってきます。前腕に捻りを加える為に、攻者の両肘は張った状態になります。
それに対して内手首だけを掴んで来る場合、攻者の反対の腕(肩)は入ってきません。守者の反撃を伺う為、半身の状態の儘と考えられますし、反対の腕の攻撃を守者は常に警戒しなければなりません。
なので諸手攻撃で強力である反面、攻者の上体を崩しやすいのも諸手巻小手と言えるかも知れません。片手の場合、技に入っても攻者の上体は崩せない事があるのです。諸手巻小手では投げる先生も多いと思いますが、片手巻小手ではまず巻いて確実に倒す事を目標に修練すべきだと思います。

片手巻小手の基本は片手逆小手です。逆小手の掛手を行ない、基準線を作って肘方向に攻めるのが基本です。逆小手との一番の違いは捌き手の掴まれ方であり、逆小手のように小手抜からそのまま大拳頭を攻める事が出来ません。
但し掴まれた腕を用いて攻者の手首を折りに行く(手首を殺す)事自体は、逆小手と同じです。
鉤手守法で攻者を崩す方法、巻小手の基準線の作り方は、先生方によって幾つかの方法があります。或いは同じ先生でも、幾つかの方法を必要に応じて使い分けています。
まず基本としては、腕逆捕のように攻者の身体が硬直していなくとも、攻者の掴んだ腕を車のウィンチ(巻き上げ機)で巻き取るように手首を殺す方法を試すのがいいでしょう。
SK柔法の基本は「自分に近く相手から遠く」です。作りの部分が自分より相手に近いと理法が作用せず、技は失敗します。逆小手系の法形は、基本的に自分の帯前で、自分の帯の下から巻き取るような感覚で行なうと良いでしょう。特にこの片手巻小手ではその感覚が有効です。

巻小手では大拳頭は攻められないのですが、殺した内手首を攻める事が出来るので、逆小手よりも掛手がすっぽ抜けにくいと言う事も出来ます。我の両手で挟んで巻き取れる訳ですね。
それにより攻者の上体が前に崩れてきたら、運歩・体捌きによって攻者を倒し(投げ)ます。既に学んだ逆小手での攻者の倒れ方をイメージし、攻者の掴み手側の肩(前肩)を引きずり出すように転倒させる訳です。

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肘への攻めが有効であれば、そのまま裏返し投-裏固が可能です。
科目表には巻小手(片手/諸手)の処理として、天秤固(裏)・前天秤固・裏固とあります。これは諸手巻小手の際に、投げられた攻者の頭側に守者が位置取る事が多いからだと思われますので、片手巻小手で肘方向へ攻めて転がした際には、必ずしも天秤固をやる必要はありません。
ただ、天秤固(裏)(裏天秤固と呼ぶ場合も)は実は逆小手の掛手なので、逆小手系の各種法形で行なう事が可能です。共に今回が初出の前天秤固もそうです。ですから逆小手から前指固→持ち替えて裏固、という意識が皆さん強いと思いますが、手を持ち変える前に前天秤固・裏天秤固というチョイスもある事は知っておきましょう。。
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諸手引抜

2025年04月28日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。


     ◆     ◆     ◆

諸手引抜は、旧・科目表では1級科目として習得した龍王拳(
抜き技)の法形です。
順序としては、諸手十字抜・十字小手よりも後、巻小手(片手/諸手)の前に習得しました。科目表には攻撃法はシンプルに「腕逆捕」と指定されています。(cf.巻小手の攻撃法は、片手では「内手首逆」諸手では「腕逆捕」です。

腕逆捕ですから布陣は当然対構えで、内手首側から取ってきます。片手の時点で処理出来れば片手切抜(内)という事になりますが、ほぼ同時に掴んでくるのでまずは鉤手守法で守ります。手首・前腕には回内させようとする捻りが入りますので、まずは腕を持っていかれないように注意しましょう。

     ◆     ◆     ◆

この法形でまず注目すべきは、名称です。
諸手引抜であって<諸手切抜>でないのはどういう意味(メッセージ)なのでしょう。
諸手引抜はよく「切り3分 引き7分」と言われます。力の掛け具合、配分の事です。対して片手切抜は「切り7分 引き3分」とも言われます。勿論、片手の方が諸手よりそもそも抜き易い訳ですが、片手では攻者の拇指を攻めて無効化すれば、後は僅かな、しかし鋭い引きさえあれば抜ける、という事だと思います。
対して諸手で握られた場合、重なった拇指部分は、切ろうったって中々おいそれとは切れるもんじゃありません。ピンポイントで<切り>は仕掛けつつ、腰を使って全体を一気に引き込みます。鋭く引く事で、ガッシリ握られていた部分の力関係・角度が僅かにズレるのです。そこで少しだけ<切れる>ようになります。そこから一気に引くと、頑丈に思えた紙や布がペリペリと裂けていくように、抜ける訳です。
だから切りながら引く事が大切です。切りが入ってないと、幾ら懸命に引っ張ってもビクともしません。

     ◆     ◆     ◆

もう一つ、諸手引抜は「諸手抜き」の法形です。諸手の強力な握りに対して、こちらも諸手を用いて抜く、というのが point です。
反対の手の使い方ですが、当身を入れない時は握られた瞬間に咄嗟に抜くのですが、当身を入れる時はまず鉤手守法で攻撃に耐え、すかさず目打ち(or 手刀切)を入れます。その手を戻す瞬時に、両手の拇指の股を合わせるようします。握られた方の手の丁字部分に手掌を充てる、とも言えます。
そこから大工道具のカンナを引くように、一気に抜く訳です。上述の通り「切り3分」を入れて引けばまず抜ける筈です。

抜けたら直ちに手刀切-中段突の、上中二連攻を叩き込みます。

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諸手攻撃は強力な攻撃である、と再三警告?している訳ですが、諸手攻撃に対し、現行科目で諸手抜きを行なっているのは、この諸手引抜と諸手押抜くらいでしょうか。
しかし古伝と申しましょうか別伝と申しましょうか、諸手抜きの技法は他にも幾つか伝わっています。教範に書かれているものもありますので、お持ちの拳士の方は是非研究してみて下さい。
基本、明らかに片手抜きなのは三角抜と諸手突抜でしょうか。。。


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諸手十字小手

2025年04月27日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

     ◆     ◆     ◆

諸手十字小手は、旧・科目表では1級科目で、諸手十字抜(
龍王拳)に続いて習得した龍華拳の法形です。諸手の攻撃というのはとても強力なので、十字小手(S字系)のように天地を返さなければならないとなると、相手が本気の時は非常に難しい技です。
攻者の攻撃意図を察知してまず守法を取る時点で体制を崩しますが、足りなければこちらは1本空いている訳ですからその手で当身を入れます(目打 or手刀切)。

攻撃法は旧・科目表には「手首逆押す、または腕逆捕」とあり、これは十字小手の前に修練した諸手十字抜と同じです。守法を取った時点で、両肘が開いていれば諸手巻小手を狙った方が良いですが、肘が伸びているようなら、特に押しつけてくるような場合には諸手十字小手の方が良いのは、十字抜の項で考察した通りです。
【↓追記2参照】

十字小手では掛け手をする、しっかりS字を作る、という点が抜き技と異なります。
掛手は目打 or手刀切の当身からその儘、戻す動きの中で掛けましょう。しかし攻者の諸手の上から、深く回して手を掛けるのは大変です。なので十字に肘を被せに行く、その動きを出迎えるように掛手するのが良いでしょう。
つまり守法から当身→掛手し逆を取り→極めて前に落とす、までが一連の動きになっている事が望ましい訳です。修練・修練、です。

     ◆     ◆     ◆

諸手で掴んでくる攻者では、十字の形に入っても尚抵抗をしてくる場合もあります。
その場合の変化としては、捕ろうとする肘を押し込んでくるような場合は、送肘攻に変化します。また一旦は諸手十字小手を選択したとしても、攻者の抵抗の具合を見て即座に諸手巻小手に変化するのもアリでしょう(正しい形の巻小手であれば、掛け手は取り直すという事になりますが、ただ反対の肘を引落とすだけのやり方もあります[変法])。運歩・転回を併用すれば、まず我慢出来ないと思います。

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【追記1】さて、諸手十字小手に関しても本部の公式動画を確認して驚きました。
本部からは以前に公式科目DVDが2回製作されています。新版(
と言っても結構経ってますが)の方では、わざわざ攻撃法に、押す場合と引く場合の2種の動画が別々に収録されていました。
押す攻撃としては、新旧共に開き構えの布陣から外手首から取りに行っており、これは諸手十字抜と同じな訳です。
新版の引く攻撃では、対構えの布陣で内手首から取りに行っていました。つまりこれは腕逆捕を意識しているのだと思います。
つまり本部では、新版DVDを製作する時点で諸手十字小手の攻撃法に逆天秤も意識するようになり、押す場合と引く場合では、布陣と最初に取る手が異なる、と解釈したようです。
諸手十字小手でも十字抜同様、科目表には布陣の指定はありません。審判講習会でも話題になった事もありませんので、コレ(布陣と取る順番)は当時の本部からの提案の一種だと受け取っています。しかし私には、「どうにも… そうなるかな?」と思えるのですが(汗)。
また研究の余地アリです(笑)。

【追記2】*諸手引抜↔︎諸手十字抜、諸手巻小手↔︎諸手十字小手は互いに補完関係にある訳ですが、守者の片手を諸手で逆に掴んでくる場合、どちらの手が上かによって技のやり易さがかなり異なります。
攻撃意図が腕逆捕なら「内手首からでその手の方が上」だと思いますが、諸手の技はその2本の掴み位置でも技が変わってくる、と今回は再認識させてもらいました。。
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諸手十字抜

2025年04月26日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。


     ◆     ◆     ◆

諸手十字抜は、旧・科目表では1級科目として習得した龍王拳(抜き技)の法形です。
旧・1級科目の龍王拳は、衣服取りである袖抜襟抜と、初段科目=小手巻返の母技である片手押抜を除くと、諸手技の諸手突抜諸手十字抜諸手引抜の3つとなります。
1級科目の諸手技としては、その他に龍華拳諸手巻小手諸手十字小手がありました。

旧・科目表では諸手技の初出は、2級科目諸手切返抜諸手切小手です。初段科目だと諸手技には、攻撃に逆天秤を想定した諸手押抜と一本背投を想定した諸手巻抜諸手輪抜になります。2級・1級・初段科目で様々な諸手技を修練する事により、基本の片手技に対しても理解が進む事が期待されていると思います。

さて諸手十字抜の攻撃法は、旧・科目表には「手首逆押す、または腕逆捕」とあり、これは続く諸手十字小手も同じです。「腕逆捕」というと一般には諸手巻小手(1級技)の攻撃法として認知されていると思いますが、巻小手の龍王拳の母技は、諸手引抜(1級技)です。
ですから腕逆捕に対する龍王拳としては、諸手引抜だけでなくて諸手十字抜も想定されているんだ、という事は、指導者も覚えておいた方が良いかも知れません。
*腕逆捕に対する諸手4技は、諸手引抜・諸手十字抜・諸手巻小手・諸手十字小手の1級科目

     ◆     ◆     ◆

そうするとまず攻者が腕逆捕にきた時の、諸手引抜と諸手十字抜の使い分けを考えなければなりません。やや高目に掲げた守者の前手を、攻者が諸手で掴んできて振り落とすような動きに入る訳ですから、中段構えの時より守者は上半身を崩される虞れがあります。何はともあれまずは鉤手守法を取って、握られた腕を後腰に据える事になります。攻者に向って回り込むような守法になる筈です。
この時、攻者が強く両肘を張っていれば諸手引抜を行なう訳です。諸手引抜の方が可能であれば素早い抜きと反撃が出来るので、こちらが優先されると私は考えます。

一方腕逆捕攻撃に対し守法した際に、攻者の両肘が閉じて守者が引き切ろうとする方向に抵抗するように絞ってきてしまった場合には、十字抜を考える事になるでしょう。十字抜を行なう為には肘を十字に被せなければなりませんから、低く鉤手を取るのがコツなのは片手十字抜と同じです。高い位置の儘なら、肘を被せようとしても攻者が抵抗すれば肘は容易に止められます。そうした迂闊な後輩には、しっかり封じて教えてあげましょう。

もう一つの場合は、攻者が諸手で押込んできた場合です。守者が武器だか貴重品だかを持っている時に、攻者がそれを奪いにきたりして揉み合いになりかかると、引いたり押したりの膠着状態が生まれます。
この時、こちらの残っている手で牽制の当身をしつつ、攻者の押す力も利用して、我の肘を被せて片方の手首を殺し、十字抜で抜きます。

諸手の十字抜では、通常は反対側の手も同時に抜けてしまいます。一言付け加えたいのは、よく「SKの諸手技では、先に掴まれた方の手に技を施す」という先生がいるのですが、この法形は当てはまらない、という点です。腕逆捕なら尚更ですが、普通攻者は諸手の掴みであれば内手首から取ってきます。しかし十字抜を掛けるのは外手首を握った方の手に対してであり、諸手同時に抜けてしまいます。こういう技もあると留意しましょう。【↓追記あり】

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当身は科目表には「横肘当 or 裏拳打と中段突」とあります。
諸手十字抜で抜こうとした時に、なんとか抜かせまいとして攻者の身体がついてくると、抜いた後でも腕が邪魔になりますし、攻者の上体が前傾して中段が深くなりますから、反撃は上段への裏拳打を選択するのが当然です。
そうでなく手首だけが返ってS字で抜けると、攻者の上体はやや正対するように立ってますから、抜いた後は横肘当てが効果的になるようです(私自身は余り諸手十字抜で横肘当をする先生を見た記憶はありませんが…)。

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【追記】今回本部の公式動画を確認して驚きました。
本部からは以前に公式科目DVDが2回製作されているのですが、諸手十字抜では、新旧2つとも開き構えの布陣から、攻者が外手首から取りに行っているのです。(科目表には布陣の指定はありません)「攻者は守者の腕を押さえつけます」と解説が入るのですが、内手首を取りに行く手はその下を取りに行くんですよね。力が入らないと思うのですが。… 研究の余地アリです。
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腕巻

2025年04月25日 | 柔法
備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、
※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。
SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。


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腕巻は、旧・科目表では1級科目として習得した羅漢拳(衣服捕り)の法形です。下襟を掴んできた攻者の手首を極めて、攻者を捕まえる技になります。
科目表では攻撃法は「下襟を握り引く」とあり、同じ攻撃の襟抜(龍王拳)に続いて修練しました。

襟抜も腕巻も非常に難しい法形ですが、基本的に構造は同じなので、襟抜が出来るのであれば、掛手をしてS字に固めればいいので、難しいのは襟抜という事になりましょうか。まぁ襟抜はS字にせずに振り回すようにしても、強引に抜けてしまう事もありますので、襟抜の修練の時から襟抜→腕巻の関係を意識する事は重要です。

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襟抜・腕巻についてその特徴を考えると、下襟という非常に遊びのある場所を握り込んで引いてきている、という事です。それに対して守者は、それを袖抜の状態に持って行って抜き、袖巻の状態に持っていって捕るのが要点な訳です。

襟抜・腕巻が難しくなる状況として考えられるのは、まず巻こうとしたら尺が足りなくて突っ張ってしまう場合が考えられます。そこで無理をすると攻者の指を傷めてしまうので注意して下さい。襟の掴み位置がやや高かったり、攻者が巻かせまいとしてくるとこうなります。教範には「下襟でなく高襟を握られたような時は、一度襟を抜いてからでないと(腕巻は)アカン」というように書いてあります。
しかし龍王拳の基本法形には、高襟(上襟)を掴まれた場合の抜き技はありません。応用的なテクニックを駆使して握りを解除するのですが、法形の形では存在しないのです。高襟を掴まれた際の羅漢拳(捕る技法)には、片胸落・襟十字など複数の法形が存在しますので、通常は腕巻はしません。
ですから襟を掴まれた時点で、袖巻の形にまで巻く事が出来るかどうかをまず判断する事になります。

次に襟抜・腕巻を失敗する状況として考えられるのは、襟裾がはだけてユルユルになり、腕を巻いても手首を殺せなかった場合です。袖口捕(三段技)で捕れる可能性はありますが、高段技でもありますし掛手の時点で袖巻の形に出来ていないのであれば、もう抜いたり捕ったりする事は諦めて、「相手は片手が使えない有利な状況」と考えて当身(剛法)に転じた方がいいかも知れません。

教範の腕巻の項には「この技は挟む間合いが重要である」と書かれています。襟裾の遊び具合が短くても長くても難しくなる、という事だと思うのですが、コツを一つお話しすると、それは逆下段構えの腰の使い方です。
腰を据えて引きに対抗はするのですが、その左右捻り具合で襟裾の位置をコントロールする事が可能です。ちょっと道場で試してみて下さい👍。

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事程左様に法形自体が中々難しいのですが、それは個々で修練するとして、腕巻まで修練すると、羅漢拳-S字系の構造・構成は大体理解出来てきます。
S字系には十字小手系切小手系がある訳ですが、羅漢拳はコの字系と十字小手系で構成されている事が判ると思います。
十字小手系の要点は、送小手の掛手S字(を作る事)である訳です。

もしS字を作って極める、という要点が会得出来れば、横断的・応用的な用法も可能になるでしょう。今後、二段以降の法形も理解し易くなります。
その延長上に巻天秤もある事を理解して下さい。
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