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(た)のShorinjiKempo備忘録

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

片手切返抜

2024年10月30日 | 柔法

備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

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片手切返抜は、片手押抜とは反対の手で掴まれた時に行なう、旧・科目表では2級科目だった龍王拳(抜き技)です。下段に構えた前手(逆下段構えなら後ろ手になりますが)を、攻者が対の手(守者右下段なら右手)で甲側を掴み、捻り上げようとする攻撃に対して行なう技です。

SK柔法における修練で、攻者がただ掴みに行くような攻撃をしてはいけない、とよく注意しますが、中でもこの切返抜(切小手)は、「ただ掴むだけの攻撃(?)」が非常に多く見られる法形だと思います。勿論、最初に指導者はどういう攻撃意図か教えている筈なのですが、どうにも教わる方に攻撃法のイメージが獲得出来ていないようです。

腕を捻り上げてどうしたいのかというと、その儘守者の背後に回って腕を極める「腕後ろ捻上げ」か、守者の腕の下を潜って回転し守者を投げ飛ばす「ハンマー投げ」が、基本的な攻撃意図とされています。

ハッキリ言いますが、この「腕後ろ捻上げ」と「ハンマー投げ」、実際には上手く出来てない拳士が、指導者にもかなり居るようにお見受けします。…かく言う私も自信はありません💦。ハッキリ言ってこの2技自体がそれなりの修練を要する技法なのに、これ単体で修練した事のある拳士は、余りいないのではないでしょうか。

教える側からしてそうなので、教わる側も中々攻撃法のイメージが獲得出来ず、結果「切返抜を見せてみろ」と言われると、攻者はただ握ってボーッと反撃を待っている、という事になるのではないでしょうか。

ですから「腕後ろ捻上げ」と「ハンマー投げ」についても個別に論じたいところなのですが、今日はこの辺にしておこうと思います。最低限やらなければならない事は、捻り上げる為に守者の側面から裏に回り込もうとする、という事です。守者の正面に居着く事はあり得ないので、やってはいけません。

*と言いながら、これも基本の成立要件のハナシであり、私自身は切返抜は「横(〜後ろ)から握って来る」「握ったあと捻りながら思い切り引っ張ってくる」という攻撃(ex.引天秤)もあり得る握り方だとは思っています。とにかく一番悪いのは、攻撃意図のない掴みです。

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踏み込みながらの捻り上げに対し、まずは三角守法を取ります。攻者に対し正対を位置取れそうな余裕がある場合は、そこから鉤手守法に変化します。この「三角守法が先(優先)」というのは始めて聞くと目から鱗なのですが、その意味するところは後日三角抜のところで考えたいと思います。

攻者の押込みは強力なので、その力を逆用するように、我の肘を引き落とすように鉤手守法に移行します。切返抜の鉤手守法は、巻抜の時と同様(巻抜とは逆回転方向)の、攻者の掴み手を巻き込むような鉤手守法ですが、高い位置で取ってしまうと、肘が被せられずその後の抜きを封じられる場合があります。なので、鉤手守法の段階で腰元に低く取っておくのがコツであり、上手く引き込めば鉤手守法の時点で攻者を前傾に崩すことが出来ている筈です(反対側の手を封じる事にもなります)。

そこからの抜き方は、私は最初「ペンギン抜き」と習い、かなり長い事それでやっていたのですが、ある時に攻者の掴み手の前腕に絡み付くように滑らせて抜く方法を習いました。「龍王拳なのだからのように抜く」というおハナシで、成る程と思いました。(蛇は山で千年・海で千年修行をすると天に昇って龍になるのだそうです)

蛇の話に成る程と思ったのではなく、ペンギン抜きは攻者の掴み手が伸びる方向に作用する為、攻者の肩が回転して抜けない場合もあるのです。前腕に絡めるように抜く事で、更に抜ける方向に、徹底的に攻める事が出来ます。確実に抜く為に、蛇(龍)の方法が良いと思います。

基本は抜けたら熊手突を入れますが、科目表には「中段突または熊手突」とあり、目打ちをした手をS字を作るために肘に掛けていたので、その手でそのまま抜けた腕を払いながら、逆中段突を入れてもいいわけです。私の頃は「熊手突または内腕刀打」と習ったように記憶しているのですが、間違いだったのでしょうか?

切返抜は押抜と抜き方が似ている法形ですが、片手押抜では反撃の当身は現在でも「熊手突または内腕刀打」となっています。片手押抜との混同によって、先輩が間違えて切返抜でも内腕刀打と私に指導したのでしょうか。片手押抜は旧・科目表では1級科目です。内腕刀打はより高度な(危険な?)反撃法という事で、1級技までの「待ち」になったのでしょうか。

それらの可能性もあると思いつつ、実際の事を考えると、確かに片手切返抜では頚部に内腕刀打を入れようとしても、抜いた段階で攻者の側面に位置取っていて、顔面への当て身になりそうな場合もあるな、と思いました。私は実際の攻防では「顔面への内腕刀打もあり得る」と思いますが、皆がやる練習ではどうかなとも思いますので、「切返抜では内腕刀打はしない」というのも理解出来ます。

ここで考えるべきは「中段突または熊手突」の使い分けですが、抜けた段階で攻守が比較的正対した状況が残っていれば中段突、抜いた段階で攻者の側面に位置取っている場合は三日月への熊手突、という事だと思います。特に攻者が前傾するように抜けた時は、深くなった中段などは狙わずに、積極的に側面に振り子しながら三日月に熊手を打ち込むべきでしょう。

切返抜と押抜は肩肘を返す抜きを行ないますが、そこからの熊手突・中段突には、肘を一旦引き戻す必要があります。そこに面白いコツがあると思うのですが、それはまた機会があれば次回に。

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一生懸命やること

2024年10月29日 | その他

先週の日曜は衆議院選挙でしたので、煽りを喰らって中止になった大会もあったようです。そこに向かって稽古・練習をしてきた拳士にとっては残念な事でしたが、目標を持って行なった稽古自体は決して無駄にならないと思います。

準備してきたスタッフの皆さん、本当にご愁傷様です。

私はとある区民大会に審判員として参加してきました。先日の西東京大会でもそうでしたが、参加拳士たちの真剣な眼差しを見ると、大いに自分自身の励みにもなります。勿論、技術レベルについては巧劣さまざまあるのですが、目標とする演武の形が、それぞれの拳士に見えているような気がしました。

大会では高校生たちの楽しいアトラクションもあり(少し内容が淡白でしたが)、会場も大いに笑いに溢れていました。大会ごとに自主的なアイデアで盛り上げているのは素晴らしい事だと思います。

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ブログを始めたばかりですが、技術に関して言いたい事が沢山あるのだなぁと改めて確認してみたりはしたのですが、それ以上に早くも感じたのは、結局身体を動かさないとどうにもならない、という事でした。感じたというか痛感しました。

新しい技を誰かに教えるとしたら、まずやってみせて、それからやらせて見せて、相手が技を理解しているのかを確認し、理解していても出来ていないところを指導し、自分自身が出来ていると思っていた事が指導する事で出来ていなかったと気付かされたり、… そういった事は、パソコンを前に頭をこねくり返していても全く出来ない事です。

人間に技を教えていると、技術以外の事でそれなりの気苦労もあり、全体を見て調整したり、一部のひとがとても心配になってしまったり、なかなか少林寺拳法の技そのものの愉しさに没入できないもどかしさを感じたりします。(教わる側の時はそういう事は少ないのですが、全く無い訳でもないです。もの凄くもどかしい場合もあります)それを含めての少林寺拳法だとは思っているのですが。

色々あっても、やはり実際にやってみないとどうしようもない。実際にやってみる事の大切さ(愉しさ)を、後輩たちにも理解してほしいと思います。

そして可能であるなら、大会や昇級昇段などの具体的な目標を持ち、それに向かって頑張ってみてほしいと思います。今回、出場拳士たちの真剣な眼差しを見て、それを強く思いました。大会という場がなければ(出場しなければ)、彼らはあの目を見せる事が出来なかったのだから。

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今回、無事自分なりの審判が最後まで出来たので、心底ホッとしました。他の先生方の様子を見ていても分からないのですが、私は審判員はホントに苦手なんです。こんなブログを立ち上げて自分なりに技にこだわりはあるのですが、審判員として沢山の組に序列を作る事には、非常に抵抗を感じてしまうのです。なので出来るだけ精神をフラットにしようと心掛けています。

大会に参加するというのは、裏方の方々の有り難さを実感する場でもあります。審判だけでなく司会進行・来賓接待や採点収集・賞状作成、そもそも賞状手配・会場整備、ホントに大変です。自分も大会に参加してお世話になった事がある以上、その恩返しと思って頑張っています。多分、審判員の中では自分に鞭打ってムリしてる方だと思いますヨ。。

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突天一

2024年10月26日 | 剛法

備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

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突天一は、旧・科目表では3級科目として習得した天王拳(上段攻撃から始まる連攻防の拳系)の法形です。

それまでに出てきた仁王拳が上段への単攻撃だったのに対し、攻者は上中二連突きの連攻を掛けてきます。それに対し(1)反り身で上受、(2)続けて引き身の二連防(同時受)で躱し、(3)順蹴の蹴り返しで反撃します。

連撃である事に意味があるのだから、攻者は一呼吸で2発突きを入れなければいけません。最初はゆっくりと一つ一つの動きを確認しながら(でも一連の流れを意識して)、次第に速くしていくのは当然ですが、速くなって来ると色々アラが出てくるようになります。

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まず多いのが、受けが弾くのを忘れ肘関節が硬い(腕の伸縮が無い)ガチンガチンとしたものになりがちです。早くやろうとして筋肉が硬くなってしまうのですね。最初の上受けを余り丁寧にやると2撃目を受けられませんから、上受蹴の時より上受けは小さくなります。なりますが、打上受のようになっていけません。あくまで上受は開手しながら上方へ弾き上げる受けなので、そこは表現して下さい。

前手は続けて内受の段受をするので、上受の戻りは前腕が立った形になります。この段受には肩-肘の使い方にコツがあると思うので、各自研究してみたら良いと思います。

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同時受の内受がおろそかになっている、と初心者はよく注意されますね。突天一では2撃目は中段突ですから下受だけすれば受けにはなりますが、どちらに来るか分からないという事で同時受をやっている訳ですから、しっかり内受もしたいものです。時々上-上2連で稽古するのが良いと思いますが、普段やってないと結構危険です。慣れるまでは下受の手で受けたくなってしまったりするので、時々はやっておきたい稽古ですね。

この同時受ですが、先生によっては下受-内受と時間差をつけるように指導する方がおり、特に単独演武でそうした動きをよく見掛けます。私はそれには賛成出来ません。同時受では無くなりますからね。学生の時は寧ろそうならないように徹底的に注意されたものです。

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次に多いのは引き身がなくなる事です。

「同時受の際に腰を引き過ぎると順蹴が出せなくなる」とは多くの先生が指導しておられると思います。私も「<蹴り腰>は残しておくんだぞ」と先輩に言われました。先述の、同時受けで内受が疎かなひと程、下受に意識が偏っているので腰も引き過ぎになりがちです。

腰を引き過ぎてはいけないのはそうなのですが、攻防が早くなると、特に蹴返しを同時蹴にしようとすると、逆に今度は殆ど引き身をしない人が、教える側にも多く見られます。結局それは程度問題と攻撃の勢いに合わせたバランス問題でもあると思うのですが、基本を丁寧にという事であれば、反り身で更に強調された半身を、ぐっと正面に引き戻す引き身を忘れないで欲しいと思います。

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上受蹴

2024年10月25日 | 剛法

備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

SKの技について本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありませんが、もし私がとんでもない勘違いをしていたら、どうかコメント欄で教えて下さい(井の中のゲーロなもので)。宜しくお願いします。

     ◆     ◆     ◆

上受蹴には科目表的には(表)と(裏)がありますが、この分類は私的には「なんだかなぁ」なのです。

剛法法形を分類整理する時には、<左/右>は勿論として、<前/後><表/裏>などの分類法がある訳です。攻撃・防禦の<順/逆>なども思考の手掛かりにします。

しかし上受蹴の守者の体勢を考えたら、<前/後>で分類するのが一番いいと思うのです。即ち、上受蹴(前)なら前足体重に横振身を併用しつつ後ろ手の上受を行ない、逆蹴の蹴上げで反撃します。上受蹴(後)なら後足体重に反り身で躱し、前手の上受を行ないつつ順蹴での反撃ですね。

剛法法形の表裏は、攻守の布陣の対開・攻撃の順逆・防禦の順逆でオセロの様に変わりますので、上受蹴(表)と言っても、攻守共に色々な形があり得てしまいます。

先ずはどんな布陣・攻撃でも守者の形が同じである<前/後>で技を理解させた方がいいのではないでしょうか。流水蹴はそうしている訳ですし!

恐らく上受突の2形を表裏で分類している為、上受け系の表現を統一したかったのだと思いますが、結果、試験会場でも混乱を来たす元になっていると存じます。上受け系4法形の表記を<表/裏>で統一したいと言うのであれば、基本としては布陣:対構え・攻撃:逆手刀打で固定、という事なのだと思います。そうすれば上受蹴(表)とは上受蹴(後)の形を意味し、(裏)とは(前)を意味している事になります。

しかし試験官が「上受蹴の表!」と指示した時に、その試験官の想定と違う形を行なう事態が起きやすいと思います。「上受蹴の前!」などと前/後で指定してやれば、布陣や攻撃に色々あったとしても、守者の形は同じな訳ですから、評価しやすいのではないでしょうか。

(因みに上受蹴は教範では「左右表裏、4法」とありますから、表裏を言ったのは開祖かも知れません。しかしそれを言うなら、流水蹴だって教範では「左右表裏、4法」ですよ!?)

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上受突の表/裏は旧・科目表では6級科目、上受蹴の表/裏は5級科目でした。

既に述べたように布陣・攻撃法は4法形共通で、攻撃は逆手刀打です。真上からの手刀打は、横振身で攻撃線を躱すという基本的な体捌きを理解する為の設定です。これは棒などの得物を持っている攻撃も想定していると言われます。

上受蹴では、この手刀打が届いていない攻撃をまま見掛けるので要注意です。上受突と同じ布陣・攻撃で行なうだけに、適切な間合いを作る事に留意すべきでしょう。

茶帯以降の修練では、直突(や振打)に対する上受け系法形の修練も普通に行なうべきでしょう。

3級科目外押受突2級科目外押受蹴を習った後は(特に有段者)、「上受と外押受」の境界についても各自研究するべきだと思います。

上受突(裏) / 上受蹴 (表) / 上受蹴 (裏) short ver.:連続複数法形修錬 (金剛禅総本山少林寺 公式YouTubeチャンネルより)

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片手突抜

2024年10月24日 | 柔法

備忘録、という事で今まで少林寺拳法(以下SKと略す)について考えてきた事を、自分がボケる前に記しておこうと思うのですが、ブログの説明に書いてある通り、

※注:本ブログは(た)個人の見解に基づいており、如何なる他の個人・団体の見解を解説・代弁するものはありません。

SKの技について考察はするのですが、もし本部の公式見解と矛盾していたら、私の方が間違っていると考えて頂いて差し支えありません。個人の備忘録ですから。。

他流派でもそうなのでしょうが、指導者によって言っている事が違う事がよくあります。なのでそれぞれの技に関して幾つかの方法がある場合などには、核心的な部分について考察したいと思います。

     ◆     ◆     ◆

今日は緊急で片手突抜について考えたいと思います。

突抜は変化技でありなかなかに難しい技でありまして、やり方にも細かい異同があり、私の考えを述べても異論も多いところだと思います。まずは押さえるべき基本事項、というのを考えたいと思います。

片手突抜は旧・科目表では4級科目切抜に続いて習得する龍王拳(抜き技)です。「鉤手守法を下方に押さえる」と言いましても<外>と<内>がありまして、<外>が片手寄抜からの変化<内>は小手抜からの変化、という事になります。やってみれば解ると思いますが、<内>の方がやや難度は高くなります。理由は抜こうとする方向が攻者掴み手のCの字の切れ目にならず、更に握り込まれる事になりやすいからです。

<内>の場合は如何にして攻者の握りを攻め崩していくか、という事を<外>以上に各人が研究する必要があります。今回は細かい事までは述べないでおきます。

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まず攻者攻撃の「鉤手守法を下方に押さえる」ですが、何をしたいのかは表現しなければいけません。外手首に対する順手の握りは →守者=片手寄抜、内手首は →守者=片手小手抜が基本ですから、守者はまず鉤手守法を取ろうとします。攻者はそれを察知して、鉤手守法そのものを取らせまいとする訳です。

これは片手巻抜の時と思考は同じなので、今回は外に振らずに下に潰してきた、という事です。なのでただお手々を繋ぐような攻撃?ではおハナシになりませんが、押し込んだ時点でもう自分が崩れてしまっているような、自爆気味の押し込みは避けたいものです。

この時、守者は鉤手守法から衝立守法に変化する訳ですが、このタイミングに大きく2つの考え方があります。例えば右中段構えに構えた前手の右手を掴まれたのだとして、守者は直ちに五指を張り、肘を前三枚につけつつ差替え足を出そうとする訳ですが、それより前に攻者の押し込みがあれば、守者は右前の儘で衝立守法に入らないとなりません。或いはまた守者が差替え足を入れ、腰を据えて鉤手守法を完成させようとしたその際で押し込まれた場合は、守者は左前気味で奥の鼠径部に右手首をあてた衝立守法になる訳です。

どちらになるかによって、抜く方向・足運びなどその後の抜き方もかなり異なってきます。これはどちらの場合にも対応出来るようになっているべきであって、毎回決まった相手となあなあの稽古しかしていないと「思ってたんと違う現象」が自分に起きて抜けなくなります(抜ける以前に衝立守法が取れない事にも)。

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さて、攻防の最中に「本当に衝立守法になれんのか」というのが実際のキモでは無いでしょうか。我の姿勢を真っ直ぐに正し手首を鼠径部につければ(=衝立守法)、かなりの力で押し込んでもビクともしなくなります。しかし実際は急に衝立の姿勢を取るのは簡単ではありません。SK拳士以外には誰にも出来ないのではないでしょうか。「絶対不敗の体勢」であった筈の鉤手守法ですが、いきなり真下に押し込むとかなりの拳士が潰れてしまいます。(どんどん潰してアハ体験をさせてあげて下さい) 衝立の効果は絶大ですが、それを攻防の中で一瞬だけ出す事が出来るか。

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抜き方の詳細は今日は述べずにおきますが、手首の回転(捻り)肘(の屈伸)を上手く使う事で、①スローでも抜けるやり方を発見する方がベターです。この「スローでも抜ける」というのは龍王拳全ての目標ですが、しかし一方でこの突抜は、攻者の押し込みを逆用して②勢いで抜く要素が大きいのも事実です。全く違う2つの原理を併用して成功率を高めるのです。

手首の回転(捻り)と肘(の屈伸)を使った結果、抜き終わった時点で我の肘が攻者に向いている筈なので、そこから肘の戻しを利用して掌拳打水月(鳩尾)(か三枚=肋骨)の急所に打ち込みます。攻者がちゃんと本気でやってくれると、抜けた際に攻者が前傾にすっぽ抜ける事があります。その時は深くなった水月ではなく、三日月を狙います。

掌拳打は女子でも充分強力な反撃なので、ちゃんと打込む練習をして欲しいところです。

科目表には「裏手打または掌拳打」となっています。これは体格差や抜き姿勢により守者がかなり低い位置で抜いた場合は、金的を裏手で打つという事です。この練習もちゃんとやっておくべきでしょう。

抜いた時点では前手での掌拳打になっている筈なので、バン・バンと逆突の連反攻も極めましょう。

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