魚 長方形にも楕円にも似る形
今日は形のまま煮る
熱で変わったから
もとのままには
目はない
ありのままには
鱗はない
肉はない
命はない
だから骨まで
じきにない
すると、目と思った
この形は
見ていると思うが
見ていない
それが
毎日似たものを喰う
目を喰う
鱗を喰う
肉を喰う
骨を喰う
毎日喰う
毎日夕餉は夕暮れに
おろおろしたように
定め置かれ
喰うを行うと
喰らうを感じ喰いながら 目の場所は
日没を映しそれが観る
単なる 単じみた
白い内側
を
見よう見よう
さあ見よう
身体
鱗 肉
部署 骨格
内臓(煮えてる)
液体(ぜらちん)
煮汁 膜状に覆う
何か
ああ何か
「何かない?肴は」
頭蓋いっぱい
広がる白い
白い 白い
魚たちの
白い目
積み重なると
白い身
すんごい虚ろ
ひかりにさえ変われるわ
すると、目と思った
この形は
日日をやったら
引き延ばすわ
もう非対象や有りようや
長方形も楕円もどろどろも
ゲル状の身体もて これ魚
われ さかな
光が当たる
にぶき光通りたまう
いや 通してなりませぬ
いや どうしても通るんだよ
いや いや
どうしても煮るんだよ
どんより味がしみる
いやだ いやだ いやだ
それでも煮る 観る
まる むる める
ねる にる どろ
どろ どろ 虚ろな目の重層
川底 海底 社会の底から
こんばんは
さかなです
みんな魚の口
非線形に回る目
鰓動きます 鱗そります
煮汁の泡でくたくた動きます
人生の底まで そこ
そこそこ喰って
そろそろ寝るよ
寝るのだから
意識の識外の
底にさっき横たわって
鍋に横たわって
記号がつつかれ喰われ
白っぽい筋状の肉が
くっついて離れない
それをつつきまわす
魚
おぞましさ
かわいい かわいい
魚屋さん
こんちはおさかないかがです?
今日は喰う
かわいい 魚 屋 さん
おぞましいのは
なんだ
そして ようやく
そうだ今日は形まま煮た
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