「明日の風」 バッドフィンガー
「Maybe Tomorrow」という大げさな、でも記憶に残る名曲をIvysというグループがヒットさせてから1年もたたないうちに、そのメンバーは「Badfinger」と名を変え再デビューする。のちにアップルの秘蔵娘、メリー・ホプキンと結婚するトニー・ヴィスコンティが手掛けたIvysの「Maybe Tomorrow 」がまったく売れず(全米で51位)、急きょアルバム発売中止(発売されたのは日本、イタリア、ドイツのみ)。ポール・マッカートニーが「Come And Get It」を提供し、7曲をマル・エヴァンスがプロデュース、Ivys時代の曲でヴィスコンティのプロデュース6曲もミックスが変更され、さてBadFingerと名を変えて最初のシングルは「Come And Get It」。ポール・マッカートニーの入れ込み方は並大抵のものではなく、ほぼアレンジまで一緒のビートルズによる同曲のデモテープも存在している。この曲はIvysのアルバムと数曲を入れ替えただけでタイトルも「Magic Christian Music」と変えられたBadfingerのデビューアルバムに収録されている。
メンバーのピート・ハムとトム・エバンスによるこの曲は、リンゴとピーター・セラーズが主演した映画「マジック・クリスチャン」の挿入歌。ピートお得意の哀愁いっぱいのアコースティックな曲にファジー(ファズってるってことです)なギターと分厚いオーケストレーションがかぶる、これでもか! の泣きの1曲。
ビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーティンはFAB4以前にピーター・セラーズやジョージ・マリガンといった喜劇陣のお笑いレコードを手掛けた経緯もある。Badfinger名義のこのアルバム以外にオリジナル・サウンドトラック盤にも収められ、こちらでは映画のセリフ等も聴ける。ちなみにサントラの音楽を担当したのはビートルズの映画「Help」同様にケン・ソーン。アップル関係者ががんじがらめで固めたアルバムという印象は強い。でもこの曲はトムの繊細な曲調を殺すことないドラマチックな盛り上がりが聴きどころだ。しかし彼らは「ミニ・ビートルズ」のレッテルに応えることができなかったし反発もあったのだろう、バンドサウンドを中心としたハードな音を目指す。アップルレコードなき後ワーナーへ移籍するが、思ったような結果を出せず、ついにピートは自殺してしまう。いまでもバッドフィンガーに中途半端に参加していたジョーイ・モーランドがバッドフィンガーの名でライブを続けているようだが、これはロジャー・ウォーターズのいないピンク・フロイド、ウィルソン兄弟のいないビーチボーイズみたいなもので、聴いても悲しくなるだけ。96年ころ発表されたピートの未発表曲+バッドフィンガーのデモ(他の3人の演奏は消され、ピートに理解のあったロン・グリフィス等がオーバーダビングしている)の「7 Park Avenue」のほうが本来のバッドフィンガーのメロディを堪能できる。
80年代にはビートルズ以外のアップル盤を配給する会社がなく、彼らのアルバムも入手が難しく中古レコード店では高値を呼んでいた。が、91年に英EMI経由でLPとCDで再発された。しかしそろそろ市場でも見かけることがなくなってきた。同アルバムには他にもトム作の「Beautiful And Blue」そして「Maybe Tomorrow」と泣きの名曲は多い。これだけのソングライターを抱えながら、徐々に2流ロックバンドになっていってしまった理由はなんだったのだろう?
「Maybe Tomorrow」という大げさな、でも記憶に残る名曲をIvysというグループがヒットさせてから1年もたたないうちに、そのメンバーは「Badfinger」と名を変え再デビューする。のちにアップルの秘蔵娘、メリー・ホプキンと結婚するトニー・ヴィスコンティが手掛けたIvysの「Maybe Tomorrow 」がまったく売れず(全米で51位)、急きょアルバム発売中止(発売されたのは日本、イタリア、ドイツのみ)。ポール・マッカートニーが「Come And Get It」を提供し、7曲をマル・エヴァンスがプロデュース、Ivys時代の曲でヴィスコンティのプロデュース6曲もミックスが変更され、さてBadFingerと名を変えて最初のシングルは「Come And Get It」。ポール・マッカートニーの入れ込み方は並大抵のものではなく、ほぼアレンジまで一緒のビートルズによる同曲のデモテープも存在している。この曲はIvysのアルバムと数曲を入れ替えただけでタイトルも「Magic Christian Music」と変えられたBadfingerのデビューアルバムに収録されている。
メンバーのピート・ハムとトム・エバンスによるこの曲は、リンゴとピーター・セラーズが主演した映画「マジック・クリスチャン」の挿入歌。ピートお得意の哀愁いっぱいのアコースティックな曲にファジー(ファズってるってことです)なギターと分厚いオーケストレーションがかぶる、これでもか! の泣きの1曲。
ビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーティンはFAB4以前にピーター・セラーズやジョージ・マリガンといった喜劇陣のお笑いレコードを手掛けた経緯もある。Badfinger名義のこのアルバム以外にオリジナル・サウンドトラック盤にも収められ、こちらでは映画のセリフ等も聴ける。ちなみにサントラの音楽を担当したのはビートルズの映画「Help」同様にケン・ソーン。アップル関係者ががんじがらめで固めたアルバムという印象は強い。でもこの曲はトムの繊細な曲調を殺すことないドラマチックな盛り上がりが聴きどころだ。しかし彼らは「ミニ・ビートルズ」のレッテルに応えることができなかったし反発もあったのだろう、バンドサウンドを中心としたハードな音を目指す。アップルレコードなき後ワーナーへ移籍するが、思ったような結果を出せず、ついにピートは自殺してしまう。いまでもバッドフィンガーに中途半端に参加していたジョーイ・モーランドがバッドフィンガーの名でライブを続けているようだが、これはロジャー・ウォーターズのいないピンク・フロイド、ウィルソン兄弟のいないビーチボーイズみたいなもので、聴いても悲しくなるだけ。96年ころ発表されたピートの未発表曲+バッドフィンガーのデモ(他の3人の演奏は消され、ピートに理解のあったロン・グリフィス等がオーバーダビングしている)の「7 Park Avenue」のほうが本来のバッドフィンガーのメロディを堪能できる。
80年代にはビートルズ以外のアップル盤を配給する会社がなく、彼らのアルバムも入手が難しく中古レコード店では高値を呼んでいた。が、91年に英EMI経由でLPとCDで再発された。しかしそろそろ市場でも見かけることがなくなってきた。同アルバムには他にもトム作の「Beautiful And Blue」そして「Maybe Tomorrow」と泣きの名曲は多い。これだけのソングライターを抱えながら、徐々に2流ロックバンドになっていってしまった理由はなんだったのだろう?