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こんな曲で涙した頃

あのアルバムの、あの一曲(仮)

Tonight, Sky's 'Bout To Cry - Eric Justin' Katz

2006-04-12 | Weblog
日本でのみ、といっていい人気のエリック・ジャスティン・カズ。「名盤発掘」で知られる小倉エージ氏らの努力もあり、98年にソロアルバムが2枚ともCDで再発された、この曲は彼のファースト「If You're Lonely」に収録されている。
ジョン・アンドレオリとの共作による「Tonight, Sky's 'Bout To Cry」は、彼のピアノと弦楽器だけをバックに切々と歌い上げる様が堪らない。「まるで今夜は、空も泣いているようだ……」と、テーマはよくある孤独な男の独白なのだが、その切なさはとびきりだ。エリック・カズ(セカンド以降この名称になる)はシンガーソングライターにくくられているが、ジャンルにおさまらないサウンドをこのアルバムで聴くことができる。ゴスペルやR&B、果てはフォスター(もちろん「オールド・ブラック・ジョー」他アメリカの古典愛唱歌を数多く作曲した彼だ)の影響まで感じられる幅広い音楽性も彼の魅力のひとつ。当時リアルタイムで聴いた人は少ないだろうが、いまCDで初めて聴いても「懐かしい」思いを感じることだろう。近年聴くことのない、絶滅したサウンドのひとつといえる。
バックにはチャック・レイニーをはじめとするジャズ陣、ボニー・レイットのギター、トレイシー・ネルソンのコーラス。この曲でもストリングス・アレンジを担当しているデオダートは、2作目「Cul-De-Sac」では全面的にオーケストレーションを担っている。そういえば一世を風靡したエミル・デオダードも、すっかり過去の人となってしまった。
初出は彼が在籍していたゆるゆるのサイケデリックバンド「Blues Magoos」時代。アルバム「Galf Coast Bound」で取り上げられている。だからこのソロでの再録はセルフカバーとなる。もっともこのオリジナルはあえて探すほどの出来ではない。曲はいいが演奏は素人にケが生えたよう、という当時のセルフ・コンテインド・バンドそのままの音だ。
60年代にはのちのウッドストック系のお友達、ハッピー&アーティも在籍した「チルドレン・オブ・パラダイス」でピアノを弾いていたのがプロキャリアの始まり。カズが注目されたのは、リビー・タイタスとの共作「Love Has No Pride」をボニー・レイットやリンダ・ロンシュタッドが取り上げたことによる。「Love Has No Pride」は他にもトレイシー・ネルソン、ピーター・ヤーロウ、ポール・ヤングなどにも取り上げられている名曲。彼自身のソロ・アルバムには収録されていないが、76年に元ピュア・プレイリー・リーグのクレイグ・フラーや元BS&Tのスティーブ・カッツ、元ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのダグ・ユールと組んだアメリカン・フライヤーのファースト「Amrican Flyer」で、自身の歌声が聴ける。ちなみにプロデュースはジョージ・マーチン。アメリカン・フライヤーは2枚のアルバムを残し解散し、のちクレイグ・フラーとデュオ・アルバムを2作残した。
その後ボニー・レイットの「Nine Lives 」(86年)にピアノで、エイドリアン・ブリュー等のベアーズにアーティ・トラウムと共に客演して以降、「収まるべくして収まった」感のある、ウッドストック人脈の「Woodstock Mountain Review」(87年)の参加を最後に彼の演奏を聞くことがなくなってしまった。噂ではコンポーザーとしてそこそこのヒット曲を出しているらしいが、やっぱり彼のソロをあらためて聴いてみたいもの。でも出してくれそうなのは日本のDreamsvilleくらいのものか。
追記 約30年振りの新作が2002年に発表された。新作といってもデモや未発表テイク中心。この曲のデモも収録されている。