noribo2000のブログ

特定のテーマにこだわらず、意見やアイデアを表明するブログです

「通信と放送の融合」~読売新聞の社説より~

2006年01月14日 | 科学技術・システム・知財など

最近省庁再々編の議論の中で通信と放送の監督官庁を一元化する議論が活発化しています。

そんな中1月12日付けの読売新聞の社説を読んで、ちょっと違和感を感じました。

[通信と放送]「テレビには報道の役割もある」

論旨は以下のとおりです。

■通信と放送は技術的に垣根が無くなっているため、法整備上や行政上も別々に捉えるのではなく一元化して検討するのは時宜を得ている。

■しかしながら、放送には「報道」という側面があり、そのことを忘れた議論はよろしくない。

■特に地方局などのように地域に根ざした「報道」が地方局の衰退に伴い損なわれるのは問題である。

いろいろ突っ込みたいところはあるのですが、私の感じている違和感の本質は、「通信」と「放送」という言葉が意味するものが私見と読売新聞の社説とで異なることにあるのだと思います。

私は「通信と放送の融合」という言葉を聴くと、以下の二点を思い描きます。

■片方向のコミュニケーションである放送番組に彩を添えるため、双方向のコミュニケーションが可能な通信インフラを用いる。(ユーザ参加型番組など)

■通信インフラを用いて片方向の放送番組を送信する。(多チャンネル放送、VoD、難視聴地域への再配信など)

前者は放送側が通信を利用するモデルなので融合といっても限定的であるのに対し、後者は明確な通信と放送の線引きがなく、放送番組の伝送媒体として放送波を用いるか通信網を用いるかの違いだけになっており、真の意味での通信と放送の融合(というか区別がつかない状態)と言えるでしょう。

つまり私の考える「通信と放送の融合」とは
「通信」=「通信網」
「放送」=「放送波」
という伝送媒体の融合を指しています。

しかし読売新聞社説では、情報源としての「通信」と「放送」の違い、という観点で問題提起しているように思えます。
「通信」=「パーソナルな情報発信(公正性、中立性が無く報道とは呼べない)」
「放送」=「報道などの放送番組(公正性、中立性を確保)」
このような分類をするならば確かに両者は全く性質が異なるような気がします。従ってそもそも通信と放送の融合など非現実的である、というのが読売新聞社説のバックグラウンドにある考え方ではないかと思います。

もし、今のテレビがすべて真実を報道し、今のインターネットが嘘ばかり垂れ流している、という考え方があるのであればそれは早計でしょう。インターネットに嘘があるのは周知の事実ですが、テレビだって国家によって免許が与えられているので、平時はまだ良いですが有事のときにはどんな統制がかからないとも限りません。また「意図的に」事実を報道しない、とか憶測で報道するという姿勢は平時であっても時折見受けられます。そういう時にはインターネットからより正しい情報を取得できるかもしれません。結局情報の真贋は視聴者が判断するより他ないのです。

それでもあくまで「免許を受けた放送局による放送番組」と「パーソナルな情報発信」とを区別する必要がある、というのであれば、コンテンツに放送局からの番組であることを証明する手段を用意し、セットトップボックス(STB)には放送局コンテンツのみ受信できるモードとあらゆるコンテンツを表示できるモードとを選択できるようすれば、伝送路が放送波でも通信回線でも免許を受けた放送局のコンテンツだけをテレビ受像機に表示させることもできるようになるでしょう。

また、社説では地方局の衰退について言及されていますが、現在の地方局は県域単位であるため、コミュニティ情報としてはかなり広域な情報となるでしょう。市民生活に密接に関わる市町村レベルの情報はそれ程放送されないのではないでしょうか。こうしたきめ細かな情報は帯域の限られた放送波で送信することは困難であり、通信インフラによる配信が適していると考えます。要は適材適所だと考えます。

このように深く突っ込んで考えよ、というのが社説の主張であるならば、まあ私も納得できますね。ただ不安だからやらない方向で検討すべし、ということであれば技術の進歩を無視したあまりに消極的な考え方であり賛成できません。


電話の逆探知について

2006年01月13日 | 科学技術・システム・知財など

仙台で発生した乳児連れ去り誘拐事件で犯人逮捕の決め手になったのは電話の逆探知だそうです。

公衆電話で連絡6回、逆探知で場所特定 乳児連れ去り

夫婦ら3人の逮捕のきっかけになったのは一連の電話だった。

県警は、2分余りだった1度目の電話の逆探知に成功。病院から南西に約25キロ離れた大河原町内の公衆電話からだったことを割り出した。

犯人は通話時間が長引くのを警戒していた。だが、ここ数年、逆探知の威力は飛躍的に向上しているという。警察関係者によると、電話会社の協力があれば相手の電話番号は瞬時に判明し、公衆電話の場所は容易にわかるという。

どうも我々は刑事ドラマの影響か発信者の電話番号を特定する「逆探知」は失敗する確率が高いと思い込まされているようです。しかし、いまや電話局で使われる交換機もほぼすべてテジタル化され、発信者の電話番号は瞬時に判明すると考える方が自然だと思います。また最近ではNTTでナンバーディスプレイサービスを提供しているように、基本的には発信者の電話番号を着信者に通知することもできるようになっています。

もはや「逆探知」などという言葉自体が時代遅れなのかもしれません。今の電話の技術からすれば「発信者番号特定」ぐらいではないでしょうか。

ではなぜ昔は「逆探知」が難しかったのでしょうか。そのことについて簡単な解説がありました。

逆探知にかかる時間

クロスバー交換機というものを通ってくる電話だと、どの電話と繋がっているかをいちいちランプを見て調べなければならず、時間がかかる。しかも大抵は複数の交換機を経由してくるから、さらに手間暇がかかる。しかし、最近では電子交換機やデジタル交換機が増えてきたから、これならどこからかかってきたか一瞬のうちに判明する。

クロスバー交換機とはリレーなどの機構を使い物理的に電話線を結線することで通話を可能にする交換機です。解説によれば、逆探知のためにはいちいち交換機のランプをみて結線の状態を確認しなければならず、さらに通常の通話は複数の交換機を経由するので、複数の電話局で連携をとりながら調べなければなりません。そのように手間暇かけても発信元が特定できる前に犯人が電話を切ってしまえば、それまでの調査が水の泡になってしまうのです。これが逆探知失敗のメカニズムです。ドラマでは刑事が「チッ失敗か」と軽く肩を落としますが、その裏では電話局で大変な労力をかけて調査していたのですね。

確かに古き「良き」時代はやはり「逆探知」という言葉がぴったりでした。しかし、もはや電話による連絡は必ず足がつくと考えたほうが良さそうです。悪いことはできませんね。


明けましておめでとうございます

2006年01月07日 | 雑感

もう2006年になってから一週間が経とうとしていますが、遅ればせながら明けましておめでとうございます。年始はノロウイルスでダウンしていたので今年初のエントリーとなります。まばらな更新の当ブログですが、今年もよろしくお願いいたします。

さて、noribo2000がダウンしている間にも世の中はどんどん進んでいますね。

■ネット選挙戦解禁へ 改正案 HP・ブログ更新可

インターネットが一般的になってからはや10年、ようやく選挙にもインターネットが本格的に利用できるようになります。記事には「HP更新による誹謗(ひぼう)中傷の蔓延(まんえん)を懸念する声もあり、その対応策は検討課題だ。」とありますが、この10年でネット文化も成熟しているのでその心配は無いのではないかと考えます。明らかに悪意のある誹謗中傷は大多数の有権者からは無視され、候補者の真意が曲解されるということはほとんどないでしょう。むしろ政策を論理的に説明できなかったり、コメントに対しむきになって反論したり、言葉遣いが横柄だったりすればそれだけで支持を失うことになりかねません。

選挙のネット利用は候補者の政策遂行能力を評価するのにうってつけです。ブログ党も本格始動か?

■放送番組のネット配信、加速 音楽使用権を一括管理
楽天とTBS買収のときのブログでも述べたのですが、通信放送融合の障壁は放送したコンテンツをインターネットで再配信する際の権利処理の複雑さにあります。この記事によれば音楽についての権利処理を一元管理するということでまずは一歩前進というところです。しかし肝心の映像についての権利処理一元化は権利者との調整が難航しているようで、放送コンテンツのインターネット再送信が簡単にできるようになるのはもう少し先の話ですね。

■東証がシステム増強へ 最大900万件の注文に対応
大丈夫かなぁ・・・
とりあえず当ブログで指摘したような「年またぎ」の障害は発生しなかったようですね。しかし今度はシステム更改なのでまさに「手順書」および更改後の「実機試験」がきちんと実施されないとまた1月10日に大問題になりかねないです。このあたりの準備にぬかりはないだろうか。しつこいようですが、富士通の再発防止策が公表されていないのが気になります。

■おなかの風邪、今冬も急増中 大半はノロウイルス
私もこれにやられました。近年経験したことのないほどの苦しみでした。

ノロウイルスに関するQ&A

ご参考まで。

 


賑やかなリンク集~インターネットでワクワク体験~

2005年12月30日 | 科学技術・システム・知財など

多分今年最後のブログになります。ちょっと楽しい記事を見つけたので紹介します。

英大学生、斬新なウェブサイトで大もうけ

英国の大学生、アレックス・テューさん(21)が斬新なアイデアをもとに作ったホームページ(http://www.milliondollarhomepage.com/)で大もうけしている。

テューさんは自身のホームページを100万ピクセル(画素)からなる広告掲示板に作り変え、ロゴマークの掲載希望者に対し、1ピクセル1ドルで販売。販売開始から4カ月間で正味100万ドル(約1億1700万円)の利益を得ている。

テューさんはロイターの取材に対し「売り上げは銀行に貯金している」とコメント。さらに「車を買った。運転免許を取得したばかりだから、黒のミニクーパーにした」とも語った。 

出会い系サイト、カジノ、不動産業者から英タイムズ紙に至るまで、さまざまな広告主がピクセルを購入。現時点までで91万1800ピクセルが売れている。


ここ見てみました。ものすごく賑やかなリンク集といった感じです。通常のリンク集だとブラウザやサイト内の検索機能によって必要な情報にすぐアクセスができるのですが、このサイトは到底そんなことできません。なので「どれどれ」といって見た目に面白そうなロゴマークを試しにクリックしてみる必要があるのです。

これって、本屋、CD屋、レンタルビデオ屋などに行ったときやチラシなどを見たときに感じるワクワク感に近いものがあるかもしれません。目的のものが見つからないかもしれないが、何気なく手にとって見たものの中に意外な発見があるかもしれない、というあの感じです。インターネットでの情報検索は確かに膨大なデータの中から欲しいものがすぐに手に入るけど、こうした楽しみを感じる機会が少なかったような気がします。

また、欲張らず(?)に100万ピクセルのサイズで抑えているところも絶妙ですね。有限な領域の中でいかに自分のロゴをクリックしてもらうか、という部分でも広告主は工夫をすることでしょう。それがまたこのサイトの魅力を引き立てているともいえます。ビジネスとしてもサイズが無限に増え続ける掲示板であれば1ピクセル1ドルなどという課金はできなかったでしょうけど、サイズ限定なので狭い領域を高価に販売することに成功しています。コンシューマも無限に広い掲示板だったら途中で飽きてしまいますが、100万ピクセルくらいならばさっと見渡すことができるので、これくらいなら見てやろうかなと思わせる効果もあると思います。

このサイトの応用例として、例えばVoDなどのコンテンツをこんな風に陳列すると良いのではないでしょうか。偶然による発見も含め、コンテンツが多くの人に接する機会が増えるのではないかと考えます。

なお、もっとこうした方がいいなと思う点は下記のとおりです。

  • 掲示板をカテゴリごとに分けたほうが良い。
  • 1度ピクセルを購入したら5年間有効とあるが、もっと短いスパンでも良いように思う。(例えば1週間、1ヶ月単位など)そうしないとリピーターが現れない。

このサイトの日本語版、1億円ホームページ も開設されているのですが、こちらはまだ開設したばかりなのか寂しい限りです。そのうち充実してくるのでしょうか。これからどうなるかが楽しみなサイトです。


 


NHKの民営化はしない?~小泉首相~

2005年12月24日 | 政治・社会

首相、NHK民営化に否定的考え

小泉首相は22日夜、NHK改革について「NHKは特殊法人(を維持)とする(政府)方針がある。民営化ではない、ほかの改革が議論されるのではないか」と述べ、NHKの民営化に否定的な考えを示した。
 
首相官邸で記者団に語った。発言は、2001年12月に決定した政府の特殊法人等整理合理化計画で、NHKの組織形態は「現状維持」としたことを踏まえたものだ。

政府の規制改革・民間開放推進会議は21日、受信料制度見直しなどを明記した答申を首相に提出した。

当ブログではかねてより、NHK放送のスクランブル化、およびNHK民営化の推進を主張してきました。改革続行を標榜する小泉首相ならばNHK民営かも現実のものとなるかと期待していたのですが残念です。記事にあるように4年前の「特殊法人等整理合理化計画」で現状維持という結論が出ている、というのが理由とのことでしたが、当時から現在に至るまで放送を取り巻く環境が激変していることを考慮すれば、再度民営化も含めた改革の議論を開始して欲しいところだと思います。

そこで、2001年12月に決定した「特殊法人等整理合理化計画」では、NHK改革についてどのように記載されているのか調べてみました。

特殊法人等整理合理化計画

p.19
日本放送協会

(事業について講ずべき措置)
【公共放送事業】
○公共放送事業に付随した新たな業務の実施について、インターネット利用については放送の補完としての利用に限定するとともに、子会社等の業務範囲の拡大を抑制するため、子会社等の業務範囲を原則として出資対象事業に限定する等の仕組みを設ける。

○子会社等との取引については、競争契約を原則とするとともに、随意契約による場合については、業務の専門性、特殊性等から他に委託先がない等やむを得ない場合に限定する。

(組織形態について講ずべき措置)
●特殊法人

これだけだと、なぜ特殊法人のままという結論に至ったのか判りませんね。そこでさらに特殊法人等改革推進本部の会議で何が議論されてきたか調べてみました。

2001年9月4日に「特殊法人等の廃止又は民営化に関する各府省の報告」が公表されました。NHKの所管の総務省の見解は下記のとおりでした。

p.4
【廃止の可否: 廃止できない】

(事業を純粋に廃止できない理由)
① 我が国の放送は、国民からの受信料を財源とし、放送の全国普及、豊かで良い番組の放送、放送の進歩発達等を目的とする公共放送と、広告料収入等を財源とする民間放送との二元体制の下、互いに切磋琢磨しつつ発展。

② 仮に、日本放送協会を廃止する場合、上記の目的を達成できず、我が国の放送の健全な発展に支障が生じることから廃止することは適切ではない。

(事業を他の運営主体に移管して特殊法人等を廃止することができない理由)
③ 日本放送協会の事業を他の運営主体に移管する場合、国、地方公共団体については行政府からの自主性及び政治的中立性の
確保が要求される報道機関としての特殊性から適切ではなく、民間企業については上記①の目的達成が不可能となることから適切ではない。

【民営化の可否:民営化は適切ではない。】
(民営化できない理由)
○ 民営化は上記①の目的達成が不可能となることから適切ではない。


んー、なんという貧弱な理由でしょうか。NHKと民放とが「切磋琢磨しつつ発展」とあり、これを継続する必要があるためNHKを民営化できないとしています。しかしNHKと民放とは何をどう「切磋琢磨」してきたのでしょうか?テレビ放送が始まった当初のことはよくわかりませんが、昨今のテレビ放送からはそのようなNHKと民放の切磋琢磨を感じることはありません。

この程度の理由でありながら、これを受けた特殊法人等改革推進本部の会合で事務局はこんな意見を述べています。

特殊法人等の組織見直しに関する各府省の報告に対する意見

p.5
日本放送協会

【廃止・民営化の可否(その他)】
不可

【その条件等】
(豊かで良い番組の放送等を実現し、放送の健全な発展を図るため公共放送は必要)

【事務局の意見】
引き続き整理合理化について検討する。


つまり民営化についてはあっさりあきらめ、「整理合理化を検討する」とだけ記載されているのです。その結果が「特殊法人等整理合理化計画」に反映されているのです。この計画の中にNHK民営化などの根本的な改革は当然盛り込まれておらず、「整理合理化」の一環でNHK子会社の業務範囲やNHK本体と子会社の発注関係について一定の制限を設ける程度に留まっています。

このような経緯で決められた4年前の計画に縛られてNHK民営化の議論をしない、とするのはあまりに消極的だと思います。NHKをめぐる国民の不信感が高まっており、思い切った改革の必要性は4年前とは比較にならないほど増大しています。是非とも民営化も含めた改革に向けて大胆に舵を切って欲しいと思います。