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掌の小説0057 女と男(六)「もう会えない」

2021-03-04 12:51:21 | 小説

掌の小説0057 女と男(六)「もう会えない」

 

「もう会えない」

 

女の気持ちは分かる気がした。分からないような気もした。分かりたかったのかも知れず、分かりたくなかったのかもしれない。

 

ぼくには君に会うより靴の中心線を決める方が重要なんだ、だから君とはもう会えない、そんな風に女に別れを告げた職人人生まっしぐらの青年を想い起こしていた。

 

週に一度くらいだろうか、ふと、会いたい、という思いに駆られることはあった。女との結びつきはそれ以上でも以下でもなかった。

 

(了)