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核の脅し

2022-04-07 14:06:55 | 評論

「核の脅し」

 

20××年×月××日、突如として、ロシアが北海道への武力侵略と占領を予告し、日本は抵抗するな、抵抗したら東京に戦略核をお見舞いする、ときたら、さて、日本政府はどうする。同盟国たる合衆国はどう出る。G7各国は対応に苦慮、中国はそ知らぬふり、韓国は周章狼狽、その他大勢の中小国は、愚かなことに、他人事としか受け止めない。

ロシア極東艦隊がシンガポールやブルネイ沖に押し寄せ、日本に対してと同様の脅迫をおこなう場合、話は更に簡単だ。シンガポールやブルネイに対するロシアの侵略を防ごうと軍隊を派遣する国はあるまいし、ましてやシンガポールやブルネイのためにロシアとの核戦争を覚悟する国家は皆無であろう。

シンガポールやブルネイを占領してどうするって?両国の国庫(ブルネイの場合は首長の金庫)にあるありったけの金塊、国際通貨その他金目のものを戦利品として頂戴する。欧米の金融制裁を当面しのげよう。そんな金をロシアの債権者は受け取るや否や。無論受け取る。

まさかロシアが(は)そんな強盗(まがいのこと)をするまい、と思う人はいまや恐らく少数派であろう。

しないとしたら思いつかないだけだ。こんな妙策を。

「核の脅し」は、相手が本気と受け止めれば極めて有効なことを、ロシアのウクライナ侵略はまざまざと見せ付けた。「NATOが介入すれば第三次世界大戦だ」というロシアの脅し文句を「NATOが介入すれば核戦争だ」の意味と受け止めたらしいNATOは(更に合衆国も)、武器支援をするだけでロシアの暴虐を前に手も足も出せない。

ある小説を想起した。どのような手段を用いてか核兵器を手に入れた正体不明の犯罪者集団が、実際に日本の僻地で小型核爆弾を使用することで核兵器の保有と脅しが本気であることを証明した後、核の脅迫でついに日本を支配することになる、という小説である。この場合も、外国は手出しできない。日本の内政問題であるとして、同盟国たる合衆国も傍観するばかりである。犯罪者集団は、介入すれば合衆国の大都市を核爆弾で破壊すると脅しているからである。小説を読むと、彼らの核爆弾は運搬可能なもので、ミサイルに搭載するものではない。すでに合衆国の数都市に密かに核爆弾を設置しているようなのである。

小説の作者は野空藍氏、英語の題名を敢えて日本語に訳せば『必ずしも戦争(どんぱち)よりまし、にあらず』とでもなる。原題は『一発の核、日本の独裁者』、副題は「KJの手記外伝」である。そもそもは「国家ハイジャック論」という論文であったらしい。《KJ》とは、彼の故KJであるように読めて仕方ない。

日本語版は未刊、英語版のみamazonで入手可能。

作者はNOZORA AÏ、

題名と副題は、

Not Necessarily Preferable To War

――With One Nuke, The Dictator Of Japan――

原題と副題は、

Original Title : With One Nuke, The Dictator Of Japan

Original Subtitle : An Anecdote Of KJ’s Notes

 

こんな書き出しの小説である。

It was about a decade ago and quite by chance that I got acquainted on the web with a person named KJ, who identified neither gender nor age.

「必ずしも戦争(どんぱち)よりまし、にあらず」をどう解釈すべきか、悩ましいところだが、現今の状況に照らして言えば、ロシア軍を前に銃を置けば、その結果はロシア軍を相手に戦うより悲惨なものになる、といったところだろう。

時に、戦わないこと(戦争放棄)は戦う(戦争)よりまし、ではない、のである。

 

(了)

 



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