何を隠そう、僕もジャズはビッグ・バンドから入りました。高校生の頃です。親からはコンボのアルバムを子供の頃から聴かされていましたが、やはりアンサンブルの多いビッグ・バンドの方がアドリブ・ソロ主体のコンボよりは抵抗なく入りやすいですよね。でも、コンボの良さも理解したいと悶々とされている方々から、オススメのアルバムを紹介して欲しいとの声を多く戴き、これをしたためています。今回は、ビッグ・バンドや吹奏楽出身のコンボ初心者でも入りやすい、アンサンブル多めでソロも充実していて、比較的入手しやすいアルバムを集めてみました。殆どが僕の高校時代にヘビロテだったものです。
Three In One
いきなりビッグ・バンドですが、僕はこのバンドを「ビッグ・コンボ」と捉えています。何故ならソロのクオリティーと比重が非常に高いからです。ベイシーなどに比べるとちょっと難解なところもありますが、エリントンほど「一人フィーチャー」でもないので入りやすいのではないかと思います。いわゆる「サド・メル」で有名ですが、サドも亡くなったこの頃のバンドは今も現役のやり手(ジョー・ロバーノなど)が多く、現代的で聴きやすいかと。
Art Pepper + Eleven (1959) {Full Album}
僕の高校時代のアイドル、ペッパーです。ラージ・アンサンブルで西海岸の腕っこきが集まって59年に作られたアルバム。マイルスの「クールの誕生」の焼き直しとも言えなくもないですが、選曲とアレンジがポップです。コンテンポラリー・レーベルは音の良さでも有名です。前述のメル・ルイスも参加。
Weather Report - Birdland
ストレートアヘッドのジャズではないですが、入りやすいかどうかで言うと入りやすいのでは。シンセによるハーモナイズはほぼビッグ・バンド。そして、それぞれのメンバーがこれほど自分を主張し合うバンドも珍しいです。w 僕はここからショーターにのめり込んで行きました。
Art Blakey's Jazz Messengers, "One By One"
ここからぐっと小編成のまさにコンボになります。この頃のジャズ・メッセンジャーズは3管編成でアンサンブル重視。しかも曲はファンキーでカッコ良い!僕が初めてショーターを聴いたのも親が持ってたジャズ・メセンジャーズですが、高校時代にこれを聴いてより素直に受け入れられたのを覚えています。
Miles Davis - Kind of Blue (1959) - [Best Jazz Records]
名盤「Kind of Blue」です。ここまで来れば、もうコンボも大丈夫な筈。アンサンブルもかなりシンプルです。個々のソロに耳を傾けましょう。そして、お気に入りのアーティストを探して行きましょう。マイルスはもちろん、キャノンボールやコルトレーン、イントロのエバンスが素敵だと感じたらピアノ・トリオのアルバム「ワルツ・フォー・デビー」なんてロマンチックでありながら、同時に前衛的でもあってコンボ通の第一歩を踏み出せそう。
John Coltrane Blue Train (Music Matters) MONO 2014
さっきの「カインド…」のうちの一人、コルトレーン。苦手だという人も多いですが、一方でファンが多いのも事実。このアルバムは丁度ビ・バップとハード・バップの中間的で、アンサンブルも各人のソロも両方とも比重が高いです。なので1曲が長めです。ここがビッグ・バンド出身者には高いハードルとなるのですが、徐々にソロに耳を傾ける事に慣れて行って下さい。
The John Coltrane Quartet – Africa / Brass (1961/2019)
さて最後に何故これを挙げたかというと、ちょっと変なのも聴いてみる…というチャレンジ精神を持って戴きたいからです。一応、ラージアンサンブルの体ですが、かなりアグレッシブです。僕がこれを聴きだした頃は、もう既に普通のジャズに飽き足らず、より刺激的な音楽を求め始めた時期でした。そして、フリー・ジャズにまで手を出し始めるのですが…。
アグレッシブかどうかは置いておいて、ジャズとは常に進化や刺激を求められた音楽です。つまり、ジャズ・ミュージシャンが常に「聴き馴染み」の有るものを演奏していた訳ではない…という事です。そして、そんなミュージシャン達は、そういう新しいもの好きのリスナー達に支えられていたのです。我々が今聴ける名盤達は「過去」の遺産ではありますが、その当時の空気感を想像しながら、その音楽が新しかった時代を思いながら聴くことで、現代の我々も当時と同じように刺激を受ける事が可能となります。
さて、如何だったでしょうか。数ある名盤の中から選ぶのは大変でしたが、初心者、特に(管)楽器経験者にとって入りやすいアルバムに絞り込めたと思います。取り敢えず聴いてみて、一回で理解できなかったら何度も聴いて、気持ち良くなってきたらこっちのもの。そこから枝分かれして、サイド・メンのアルバムを聴いてみる…など、コンボの世界はとてつもない広がりを魅せてくれます。是非、その世界にどっぷり浸かって下さい!歓迎いたします。
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