Elgar : Salut D'amour
「威風堂々」のエルガーの作品で、バイオリンやピアノで演奏されることが多いと思います。
「101回目のプロポーズ」でも使われていたような気がいたします。
さて、私は34歳まで独身で、両親の家に住んでおりました。
その頃、友人の結婚披露宴に新郎側友人として招かれました。新婦は楽器店の娘さんだとか。
何でも披露宴ではスピーチは主賓と乾杯の音頭くらいで、新婦側はさまざまな楽器の演奏をするとのことでした。
新郎である私の友人サイドには楽器の演奏をしそうな人がいないとかで、是非とも何か演奏してくれと頼まれました。
私が演奏できる楽器は、小学生時代に習った縦笛(リコーダー)とギターくらいです。ギターはどう贔屓目に見ても上手ではないし、私のアルペジオは、アルマジロが弾くような音がしますので、残りは笛だけ。まあ、いろんな人がいろんな楽器を演奏するならば、私が一人くらい小学生のやる楽器をやるのも一興かも知れないと考え、快諾いたしました。
百貨店の楽器売り場で、1200円くらいの(高級な!)リコーダーを購入しまして、夜中に両親や妹が寝静まってから練習しました。
すぐにコツを思い出して、上手に吹けるようになったので、今度はエルガーの「愛の挨拶」のピアノ・ソロ用の楽譜を買って、練習を続けました。
披露宴は、●●県の立派なホテルで催されました。勇気を出すために、待合室でかなりの量のアルコールを飲みました。
私は最後の方なので、さらに飲みながら料理を楽しんでおりました。ところが、新郎新婦の友人らの「出し物」が始まってみると、新婦側ですら誰ひとり楽器なんてやりません。スピーチが続きます。
このままでは、私だけ浮いてしまう。
そう不安に思ってますます大量のアルコールを摂取しました。やはりスピーチばかりです。私も急遽、何か気のきいたことを言ってお茶を濁そうとも考えたのですが、何しろ酒で脳がダメになっていて、面白いエピソードとか思いつきません。
結局、私は泥酔に近い状態で、まずは「みなさんが楽器をやると聞いたので練習してきた」という事情を説明した上で、リコーダーで「愛の挨拶」を演奏しました。
後日、東京で二次会が開かれ、新郎である友人は、その時の私の姿をビデオで会場に流しておりました。
ご祝儀もそれなりに包みましたので、あれではお金払って聴いてもらったみたいなものです。
かなり経ってから知ったのですが、私の両親は夜中に私が笛の練習をしているのに気づいていたそうです。
30歳を過ぎた独身の息子が、夜中に自室で笛を吹いているので、顔を見合わせて心配していたそうです。