時には、旅の日常

管理人:taろう/旅先で撮ったスナップにコメントを添えて、他にも気の向いた事を綴っていきます。

懐かし旅 チリ2002/2003-8~風と雲とが戯れる別世界 スリレ塩湖<2>

2011-12-09 07:44:21 | チリ
 長い長い道程の末、ようやく到達したスリレ塩湖…その湖畔における約1時間半の滞在は、私にとっては永遠に等しい悠久の時の流れとなって脳裏に刻み込まれたひと時でした。

 素晴らしい自然風景の大パノラマ、生命力溢れる躍動的な生き物達、そして、風の音以外で聴覚をほとんど感じることのなかった不思議な空間の雰囲気…海抜4,000m超という、ある種極限の環境がもたらす独特の感覚を全身で満喫していました!


 <プトレ~スリレ塩湖>
   (リンク先画面左の3Dボタンをクリックするとルートが3Dで進みます←Google Earth)
   (ルートの表示位置や縮尺等はディスプレイの解像度やお好みに合わせて適宜調節してください)
   A:プトレ
   B:プトレを望む展望スポット
   C:グアジャティリ
   D:スリレ塩湖の警察詰所
   E:スリレ塩湖 湖畔への分岐地点

 <上記ルートE地点(Ruta A-31)~スリレ塩湖 湖畔>
   (リンク先地図上では道路となっていないため Google Earth にはなりますがルートは進みません)
   (ルートの表示位置や縮尺等はディスプレイの解像度やお好みに合わせて適宜調節してください)
   (リンク先地図を拡大すると湖畔の集落跡が判別できます)
   (リンク先地図が航空写真でなければ地図右上の航空写真ボタンをクリックしてください)

______________________________________________

【謹告】
 この記事で紹介したプトレからスリレ塩湖自然遺跡にかけての地域は、標高が3,600m~4,000mを超える高地で非常に厳しい自然条件下にあり、特に高山病を発症する危険の高い地域です。
 この地域(当然ながら他の高地でも同様です)に関心をお持ちになってご旅行を決断された場合は、渡航前に高山病に対する理解を深めておかれますよう、強く警告します。

 高山病は最悪の場合死に至ることもあり、対応を誤ると危険な疾患です。

 せっかくのご旅行を台無しにしないためにも、くれぐれも軽くお考えにならずに高山病についての理解を得た上で、この地域の素晴らしさを存分に実際の肌でお感じになり、お楽しみになれますことを心から願っています。

 下記のリンクは、私が旅行前に参考にした日本旅行医学会のコラムです。
 読み易い文章で良く纏められていて、高山病の予防薬についての言及もあります。

 高山病で死なないために (日本旅行医学会)

 なお、この記事やこの謹告をお読みになって為された行為により生じたいかなる事象や結果について、弊ブログと管理人は一切の責を負いません。


______________________________________________


 広大な塩湖に佇むフラミンゴのつがい。
 湖岸近くに辛うじて残っていた水面に、その逆さ姿を映していました。

 小休止した湖畔の警察詰所を出発して、塩湖の北岸沿いの道を東へ走っています。



 スリレ塩湖を撮影した中で、最も気に入っている1枚。
 湖岸近くで憩い合うフラミンゴの群れ♪
 スリレ塩湖では珍しく水面が沖まで広がっていた場所で、対岸の高い峰をバックにして、小さな峰が塩湖の中に小島のように浮かんでいます。

 その小島のような峰は、オケアジャ峰 "Cerro Oquealla"。
 標高は4,322m、スリレ塩湖が海抜4,200mなので、湖面からの高さは122m程ということですね。


 あまりにも広大で動きを感じられない風景の中で、フラミンゴ達のピンクがかった華やかな色彩の羽を纏って思い思いに翼をはためかせたりする等躍動感に満ちた姿は、まるで生きている歓びを謳歌しているようで、眺めていて自然と感動を覚えました^^



 相変らず針状の固い葉の草が密生している、乾いた大地が塩湖の周囲一面に広がっています。

 雪を冠しているひときわ高い峰は、ボリビアとの国境にもなっているジスカジャ峰 "Cerro Lliscaya" (標高5,616m)です。



 スリレ塩湖に来て今まで感じたことがない不思議な雰囲気を感じたのは、この雄大なスケールを誇る風景に「音」という要素がほぼ完全に欠落しているから、ということに気付いたのは到達後少し経ってからでした。
 ビクーニャやフラミンゴ等の動物達も鳴き声を上げることなく、時折湖面を吹き渡る風の音だけが遠く響くように聞こえてくるだけの世界。
 風が止むと、「シーン」という音が聞こえているのではないかとさえ思えてしまう、恐ろしいまでの静寂に包まれた広大な風景の中にぽつんと取り残されたような錯覚に陥りました。
 自分の呼吸音がマイクを通して増幅されたように聞こえる、妙に生々しい感覚…スリレ塩湖以外の地で、白昼ここまで静寂に支配された世界を今日まで私は知りません。

 …何だか別の世界にやって来たようで、思わず身震いしていました(^^;



 風の音に乗って、大空に浮かぶ雲が踊るように流れてきます。

 流石に天空の塩湖、雲も低い所(とはいえここの海抜(4,200m)を考慮に入れれば充分高いですね;)に浮かんでいます。



 道路は水際に近付いたり遠ざかったりしながら東へ進みます。

 名もない峰、ありふれた植物、干上がりかけている塩湖…1つ1つにインパクトはなくても、組み合わされて1つの広大な景色となると、不思議な感動が心に囁きかけてくるようでした。



 これまで走ってきた湖岸沿いの道路をはずれ、地元の方しか分からないような、轍が微かにあるか、というほとんど道なき道のような原野の中へと分け入って2km程進むと塩湖の湖畔へと出ました。

 しばらく対岸の様子を眺めていると、風の音の中に遠雷の響きが混じってくるようになりました。
 正面の対岸の一角がにわか雨に見舞われているように、黒く煙っています。

 つい忘れがちになりますが、ここはれっきとしたアンデス山中、天候は激しく変わります。
 画像をご覧であればお分かりと思いますが、雲の表情も目まぐるしく変わっていて、動きに乏しい景色にあって数少ないアクセントの1つとなっていました。



 対岸とは対照的に、こちら側では雲間から青空が広がり、明暗の眩しいコントラストが印象的でした!



 スリレ塩湖の北側、車から塩湖を望んでいるとちょうど背後にあたる位置に聳え立つアリンティカ峰 "Cerro Arintica" (標高5,637m)。
 やはり真夏にもかかわらず頂上には雪を頂いています。

 その雪が日を浴びて輝いていました。



 湖畔近くにはこのような、かつては人が暮らしていたと思われる小さな集落跡がありました。
 石を組んだ素朴で簡素な住居の廃墟が、半ば朽ちかけて吹き渡る風に曝されていました。

 このような極限の地にも人が暮らしていた痕跡がある、というのも驚きでした。
 今日よりもはるかに生活条件は厳しかったはず…耕すような肥えた土地でもなさそうな中で、リャマ等の牧畜を営んでいたのでしょうか。

 ここからは、目の前でわずかに残った水面をいっぱいに広げているスリレ塩湖と対岸の峰々を好きなだけ眺望でき、かつてここで暮らし、この景色を恣にしていた先人達をとても羨ましく思いました。
 集落跡の廃墟に佇み、徐々にその姿だけでなく、ここに集落が存在していたという記憶まで風化されつつあるもの哀しさを奏でているような風の音に耳を傾けつつ、先人達が日常目にしていたであろう雄大な風景を、時間が経つのも忘れてずっと眺め続けていました。



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (プー太郎)
2011-12-09 18:05:09
躍動したフラミンゴと刻々と変転する雲そして完全なる静寂。まさに静と動の世界ですね。人々はこの広大な風景を前に生と死を貫く永遠性を感じてここに住を構えたのでしょうか、または何かの戦乱に巻き込まれてここまで逃げてきたのかもしれません。想像の世界が膨らみます。
返信する
プー太郎さん。 (taろう)
2011-12-09 21:10:23
本当に静のスケールが巨大なために、フラミンゴや雲等の動きが普段目にしている時よりも一層瑞々しく躍動的に見え、そのことが後々まで忘れ難く強い印象を残したのだと思います。
かつてこの地に居を構えていた人々は、恐らく自然にこの圧倒的な環境に畏敬の念を抱き、自らもまたその一部として溶け込むように暮らしていたのではないでしょうか。
素朴で驕ったところの見られない廃墟からも、密やかで慎ましやかな生活が想像できました。
返信する

コメントを投稿