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第3部 がか座β星に惑星を確認?

2008-12-03 00:57:46 | 特集
第1部・第2部では、がか座β星系の複雑な構造について詳しくみてきました。
続く第3部では、いよいよ惑星がか座β星bについて解説していきます。
今回直接撮影された惑星は、実はもともと予言されていたものでした。
がか座β星bは、どのようにして予言され、どのようにして撮影されたのかを解説していきます。


【困難な惑星探査】

これまで発見されてきた太陽系外惑星のほとんどはドップラーシフト法と呼ばれる方法で発見されてきました。ドップラーシフト法とは、周りを回る惑星の重力によって恒星が揺さぶられる運動を検出する方法です。恒星の動きをドップラー効果(運動によるスペクトルの変化)を利用して検出することから、こう呼ばれています。

しかし、がか座β星のようなA型星の場合、このドップラーシフトを捉えることが難しい上、この方法で検出できるのは恒星のすぐ近くを回る質量の大きな惑星だけです。これまでのドップラーシフト法による探査では、がか座β星の惑星は確認できていません。


【惑星の予言】

そのため、惑星の存在を知るには、デブリ円盤などの構造を調べて間接的に惑星が存在することを示す状況証拠をつかむしかありません。

1995年の観測で、デブリ円盤の内側50AU以内にはちりが比較的少ないことが分かり、それよりも内側に巨大惑星が存在し、その重力によってちりが弾き飛ばされているのではないかと考えられるようになりました。推定では6AUよりも外側を回る木星サイズの惑星と考えられました。

さらに、デブリ円盤の内側は歪んでおり、主要な円盤から5度傾いた第2の円盤が発見されました。2つの円盤は30AU付近で交差しているとみられることから、これよりも内側にやや傾いた軌道をもつ巨大惑星が存在すると推定されました。円盤の構造から推定される惑星は、軌道長半径が7.6~9.7AU、質量が木星の6~13倍の巨大惑星です。

すばる望遠鏡によって6.4AU、16AUの微惑星帯が発見され、その間の領域には微惑星が少ないと考えられることから、この領域に巨大惑星が存在すると推定されました。また、仮にその惑星の軌道長半径が12AUであった場合、16AUの微惑星帯と2:3の共鳴関係となり、ちょうど海王星とプルーティノ族(小天体群の一つ)の関係と同じになります。また、12AUの惑星と2:1と4:1の共鳴関係にある、7.6AUと4.8AUの間に(6.4AUの)微惑星帯が存在することになり、こちらは木星と主小惑星帯の関係と同じになります。12AU付近の惑星を想定することにより、これらの微惑星帯の構造を説明できるというわけです。

一方、短いスペクトル変化から分かった彗星様天体の存在も、巨大惑星の存在を示唆しています。このような大規模な彗星群は、恐らく一部の微惑星群が巨大惑星の重力によって軌道を乱され、太陽に接近する長楕円軌道を回るようになったと考えられます。この場合、想定される惑星は、10AU辺りを回っていることになります。彗星群は、惑星と4:1または3:1の共鳴関係にある可能性も考えられています。

以上のような間接的な状況証拠から、軌道長半径約10AU、離心率<0.1、質量約6木星質量の惑星が存在するはずだと考えられてきました。 
【直接撮影に成功】

この程、長年予言されてきた惑星の存在が、画像から確認されたかもしれないという報告がありました。

今回惑星らしき天体が写っていた画像は、実は2003年に撮影されたものでした。ヨーロッパ南天天文台のVLAで撮影された画像です。上の画像(ESO/A.-M. Lagrange et al)を見て下さい。左側の画像ががか座β星です。一見すると、惑星は写っていないようです。中心のがか座β星自体が非常に明るいため、その近くの小さな天体を見分けるのは非常に困難です。そこで、がか座β星自体の光を取り除く処理を行いました。恒星は本来非常に遠くにあるためにほとんど点にしか見えないはずですが、望遠鏡の解像度やレンズの影響によって、星像が広がり、その周りにリング状または放射状の模様ができています。惑星のかすかな光を探し出すには、これらを取り除く必要があります。そこで使ったのが、右側のHR 2435の画像です。同様の条件で撮影されているため、2つの画像の差を取れば、恒星の光や周囲の模様を取り除いた画像となるはずです。

仮に、がか座β星もHR 2435も伴星や惑星を持っていない単一の恒星だとすれば、2つの恒星は同じように写るので、両画像の差を取ると何も残らないはずです。しかし、実際に2つの画像の差をとった上の右側の画像(ESO/A.-M. Lagrange et al)を見ると、左上に小さな白い点が残ります。これは、がか座β星の画像には写っていて、HR 2435の画像には写っていない光ということになります。同様に割り算をした画像が左側の画像で、やはりがか座β星の画像にだけ左上に小さな光が写っていることが分かります。

研究グループでは、さらに他の2つの方法で処理を行いましたが、いずれの方法でも同じ位置に小さな光が検出されました。また、他の観測データを使って同様の処理を行ったところ、画質は落ちるもののやはり同じ位置に小さな光が検出されました(上:ESO/A.-M. Lagrange et al)。恒星からの見かけ上の距離や明るさなどから、小さな天体はがか座β星の惑星と考えられました。


【予言が的中】

地球からがか座β星までの距離が63.4光年であることから、発見された天体とがか座β星との見かけの距離から計算すると、約8AU離れていることになります。しかし実際には軌道を真横から見ているため、もっと離れている可能性もあります。これは、以前から予想されていた軌道長半径10AU前後と一致します。

また、惑星の明るさからモデル計算をしたところ、CONDモデルでは質量7~12木星質量、表面温度1600K、DUSTYモデルでは質量6~12木星質量、表面温度1400Kと見積もられました。両者を合わせると、質量は8木星質量前後ということになり、約6木星質量とするこれまでの予言と一致しています。

今回の観測結果やモデル計算と、これまでの円盤などの構造などから、最も妥当な値を計算すると、質量は8木星質量前後、軌道長半径は8~9AU前後となります。


【残る課題】

「がか座β星の惑星が撮影された」とは言うものの、画像に写っていた白い点が本当にがか座β星であるという確証はないのが実情です。というのも、この白い点が惑星である根拠は、見かけ上がか座β星のちり円盤の内部に位置すること、そして仮に惑星だと仮定すると過去の観測データなどと辻褄が合うことです。確かに白い点はがか座β星のすぐそばに写っていますが、実際はがか座β星よりももっと遠くにある天体かもしれないし、逆にもっと手前にある天体かもしれません。この天体が実際の惑星であることを確認するにはどうすればよいでしょうか。

まずは、がか座β星の周りを実際に回っている様子を捉えることができれば、間違いなく惑星と言えます。上で紹介した画像は2003年に撮影されたものであり、現在までの5年間で移動しているはずです。しかしながら計算によると、5年間で移動する距離はわずかで、現在の観測技術では捉えることが困難です。もう少し長い時間をおいて観測するか、もしくはより高い精度で観測できる次世代の望遠鏡でより精密な位置を測定するか、いずれかの方法で移動を検出できるはずです。

もう一つの方法は惑星候補天体のスペクトルを観測することです。スペクトルの特徴から天体の種類や表面温度が分かるため、惑星か否かを知ることができます。しかし、特殊な画像処理によって辛うじて見分けることができるかすかな光なので、そのスペクトルを詳しく分析するには、より精度と感度の高い観測が必要です。

系外惑星探査を目的とした宇宙望遠鏡なども計画されているので、がか座β星は格好の観測対象となるはずです。結論が出る日はそう遠くないでしょう。


以上、今回は惑星がか座β星bについてでした。
実は、今回撮影に成功した惑星だけでは、がか座β星の円盤や微惑星帯などの構造を全て説明することはできず、さらに別の未知の天体が存在するかもしれないと言われています。
続く第4部では、がか座β星系にまつわる様々な仮説を紹介し、将来発見されるかもしれない未知の天体の可能性について考えていきます。


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