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ガスクロマトグラフ質量分析機でも測れない臭いだったら蓋はできない

2005-04-13 22:31:14 | 社会
三菱ふそう「欠陥隠し」、車軸脱落など2件リコール (読売新聞) - goo ニュース


三菱のリコール(欠陥)・クレーム隠し事件は、組織ぐるみの企業犯罪としては、薬害エイズ事件と並び戦後最悪と言っていいのかもしれない。

2000年にリコール隠しが一部発覚(*注1)し、一部で済んだものだから隠蔽は継続され、2002年に横浜でトラクターの脱輪で母子が死傷した事件をきっかけに漸く昨年5月に大規模にリコール隠しが発覚し、経営陣も送検され、昨年1年だけで126件約287万台(*注2)ものリコールの届け出があった訳だが・・・


「まだ終わってないの?」とか「次から次へと余りにも数多過ぎなんじゃ?」って感想しか出てこないんだが。

ライン生産だろうとセル生産(*注3)だろうと欠陥はゼロにはできないものだから、リコール自体は悪いものでも何でもない。むしろ、ユーザーにとっては事故のリスクを回避でき、メーカーとってはPL(製造物責任)のリスクを回避できるのだから、メーカーは金がかかっても「やっておいた方がよい」のだ。


「だから今やってんじゃん」ではあるが、今回のリコールでも既に人身・物損事故は多数発生しており、対応の遅さは否めない。というより、今までやってきたことを考えれば論外だ。どうして昨年大規模なリコール隠しが発覚した時点で「これまでの全ての車の欠陥が明らかにされ修理が終了するまで業務停止」ぐらいの処置がとられないのか私は不思議でならない。

何故なら、『"重大な不具合"があるのを分かっていて平気な顔で売って、ユーザーから上がってくるクレームも握りつぶして回収しようともせずまだ売り続けようとした』、これは未必の故意の殺人と同じだからだ(4/09のブログでも似たようなこと書いたけど)。悪質さという点では、複数で頑張って演技して金振り込ませようと知恵絞っているオレオレ詐欺なんか足元にも及ばない。


企業倫理とかモラルハザードとか集団主義って訳知り顔で片付けたくはない。
根本的な原因を考えるなら、やっぱり人口が多過ぎるってことなんだろう。奇異に思われるかもしれないが、つまり、「どこの誰とも分からない赤の他人達」を「消費者」として括ってしまった時点で、あるかもしれない良心とか想像力なんて簡単に吹っ飛ぶってことだ。自分の「目先の保身」が上手くいくなら、どこぞの馬の骨が死のうと知ったこっちゃないと無意識にでも考えてしまうのは、実際問題仕方ないとは言える。日本はキリスト教圏ではないから内的な罰の意識なんてのもまずはたらかないだろうし。

ただそれでも、今回の件では「目先」が余りにも近視眼的ではあるけれど。不具合を放っておいたら事故が通常より高い確率で起こり得ること、そういう事故が続いたら隠そうとした欠陥もいずれは露見すること、露見したら企業イメージどころじゃなく存続に関わること、ぐらいは計算できないとは言わせない。


そういえば、『Heart-beat Motors』って企業スローガン、「いつ壊れるか分からなくてドキドキ」って揶揄されてる方は結構いらっしゃるようですが、今になって思えば、「隠蔽がいつバレるか分からなくて(社員が)ドキドキ」って意味だった?(苦笑)

まぁ真面目にいい車を作ろう売ろうとしていた社員の方々や、とばっちり食らって潰れてしまった販売店の方々には耳苦しいお話でしょうが、それぐらい重大な(一連の)事件ってことでカンベンして頂きたい。




*注:
(1)
当時、三菱自動車は、商連書(商品情報連絡書)を始めとするデータを二重管理し続けており、リコールにつながる重大な報告を「H書類」としてコンピューター上においても区別し、監査マニュアルや訓練などもして旧運輸省の監査に備えていた。だが、2000年6月に内部告発があり、それに応じて全国7ヶ所で一斉抜き打ち監査が行われたことで、遂にH書類の一部が発見されるに至った。

(2)
昨年の国産車のリコール届け出件数の総数は331件707万台。三菱自動車・ふそうは全体の約4割に当たる計算になる。

(3)
セル生産方式・・多品種少量生産が求められる昨今、組み立て製造業において、1人~数人の作業員が部品の取り付けから組み立て、加工、検査までの全工程(1人が多工程)を担当する生産方式。ライン式と異なり、ボトルネック(うまく流れない工程)の影響を受けにくい利点はあるが、作業員の熟練が求められる、当然熟練にはそれなりに時間を要するのがデメリットと言える。