この記事は、韓国の俳優ソ・ジソプ氏の著書である『道』の韓国版を、辞書を片手に一語一語つなぎ合わせて私的に日本語に訳したものです。よってこの著書の日本語版となんら関係のないことを最初に申し上げます。 また、素人の未熟な訳であり間違いがたくさんあることも合わせて申し上げておきます。
p233
:: 7番目のスケッチ
私たちのこと、僕のこと、
p234
破盧(パロ)湖 Lake Paro.
破盧(パロ)湖という名前は‘蛮人【中国東北地方に居住した女真族】を打ち破った湖’という意味であり、イ・スンマン大統領が直々につけた。
穏やかに見えるこの場所、湖には恐ろしい物語が伝えられている。
韓国戦争当時、花川(ファチョン)戦闘で我が軍が大勝利して有利に終えたのに、この湖だけで数万名もの中共(中国)軍が水葬されたという。
物語とは関係なくアオサギと真鶴らが飛来して湖の景観と調和する。
p238
無雑作にのばしたような髪の毛がかっこいい。
空も湖も残らず曇ってきたせいで濁って見える午後、チェ・ミョンウク先生に会った。
彼の服装をみると、やはり彼は非凡なファッションデザイナーだという気がする。
p241
“ネックレスを用意したけど気に入ってくれるかわからない。”
“プレゼントされるのはいつも気分がいいこと。”
嬉しくて笑顔になる。
“これは鳥の模様なんだけど、まるで向こうの竿のひとつについているほうきだね。
ネックレスをあの竿に上げたらよく似合う。
村の悪鬼を追い払って良い事を起こさせるようにする竿じゃない?。”
竿には悪いけど、
先生からプレゼントしてもらったネックレスが気に入った。
そこへ置いてくることはできなかった。
p243
平和な湖の背後には低い山々が連なっている。山を背にして大小さまざまに集まっている家が見える。
人影(人跡)がまばらな湖の周辺にはアシや雑草などが人の背丈ほどに伸びている。
静かすぎてわびしい気持ちになる。
p244
消色(色消し)という単語、ご存知ですか? 消色の語源を探してみると‘元来そのままの色’です。
ややアイボリーカラーに近いといえば簡単でしょうか?
粗織りの木綿(廣木)をご存知でしょ? 木花(綿のわた)、綿(木綿)を抜き取る木花が花を咲かせたら綿と同じものになるけれど、それがやや黄色いこともあったりシミもあるのにすごく真っ白じゃないですか。私は消色がいちばん自然に近い色ではないかと思います。
ソ・ジソプ、 消色。
何かが通じるようでしょ?
- ファッションデザイナー チェ・ミョンウク
p249
コモク橋 Kkeomeok Bridge.
赤い鉄筋の上に木を連結した橋で、花川(ファチョン)ダムが作られた1945年に共に作られた。今年で65歳。解放前に日帝(日本帝国)が基礎を作り、韓国戦争中にソ連軍が橋脚を架けながら休戦後に花川(ファチョン)軍が上に板を置いた。木で作った上の板に黒いコールタールを塗り‘コモク橋’と呼ばれて韓国戦争から現在まで険しい歳月をよく耐え抜いた。
雄壮な姿は単純ながらも妙な雰囲気を演出し、数多くの映画、ドラマの撮影場所になることになった。
p253
服を上手く着こなすにはどうしなければいけませんか。 先生?
服を元々上手く着ていて私よりずっとよく知られているみたいだけど?
ファッションニストで知られているじゃないか、ソ・ジソプ氏は。
これはただ僕が着たいままに着ています。
雰囲気に合わせようと努力することはする、でも普段は気楽に。
そんな感じです。
重要なことは自分スタイルを獲得するまで着てみることだろう。
似合っているのもは自分が好きなものだと思います。
鏡を見て自分自身が良く見えればそれがまさにかっこいいということだろう。
過度であったり足りなかったりするとそれを補おうとして何度も足していくと非常に人為的な味になるでしょう。
‘丁度’を保てば自分だけの味となるでしょう。
ソ・ジソプ氏は自然でありながら格式に偏らないどれも素敵な、
そんな感じの服がよく似合うようです。
p255
念願の鐘 The Desire Bell.
平和のダムの上部に位置する‘世界平和の鐘公園’にある。
木で作られているこの鐘は音が出ることはない。
南北分断の現実を表す沈黙の鐘だからだ。
公園にある鐘は全部で3個、念願の鐘と世界平和の鐘、そして心の鐘がある。
心の鐘は統一を願う人々の心の中にだけ鳴り響くという。
その形を作っておかなかった。
念願の鐘が沈黙を破り、遠く響き渡り広がっていくことを願った。
p257
木で作られた念願の鐘はこんな風に設置されて吊るされていた。
手を伸ばしてなでてみた。僕の念願について思った。
胸が熱く湧き上がるときがある。
ソ・ジソプではない作品の中の役になるときに感じるカタルシス、
もちろん100%‘その人’になることはない。
完璧にその人になるというのは嘘だ。
だけど、演技をしながらその役をする人になるとき、
僕にあんな顔が、あんな姿があったのかとドキッとするときがある。
そんな姿を発見しつづけたい。
俳優として生きたい。
俳優ソ・ジソプ、 そうであったらいい。
身体にいちばん有益な服を作るデザイナー、チェ・ミョンウク。
彼はいちばん韓国的なもの、いちばん自然に近い服について愛情を見せてくれる人であるのかもしれない。
彼は‘あの草木の葉を摘んで染めたら草木(緑)色の布地ができ、泥水に生地を漬けておけば土の色彩がでてくるもの。それが天然染色’だと言いながら、大変なことが多いという事実を知るきっかけになった。
子供がアトピーで苦しむ姿を見たら何かをしなければいけないという気がした。人に害にならない、そのくせ自然にも有益な服を作ろうと思った。
環境にやさしいブランド‘イセ(I sae)’のアートデレクターで活動している彼は、近ごろ染色にすっかりはまっている。
どんなに人里はなれた場所でも田舎には農業を営み、畑の草取りをして自分の服を手際よく染色して着ていらっしゃる方々が多い。
やはり人の芸術的感性は生まれつきだという話だ。
その方たちは厳しい環境で生まれて食べて暮らすという問題から他のことをするものでしょう。
生まれ持った感性はすでに芸術家だ。
田舎の人里はなれた場所に訪れてその方たちの生地を使用しているのを見ました。
その方たちは生地とも言わず布の切れ端だとおっしゃいます。
‘私の布の切れ端を来て見なさい。’こうでしょう。
私はその方たちの布の端切れでドリスヴァンノートンのプリント以上のものを見ました。
その感性というものは生涯、生まれてから死ぬまで隠すことはできないものです。
それをそのまま真似することはできませんがたくさん学びたい。”
p265
“自分がデザインする衣装が海外でよい反応をうければ気分はいい。だけど、私たちは彼らが望んでいる‘韓国的なデザイン’というものを誤解しているのかもしれない。デザインを置いて私がある実験をしたとき、彼らが自然に受け入れるもの等は‘韓国的’という名前に閉じ込める意味がなかったからです。コリアン、韓国ということではない、ただそれ自体が私たちに見せてくれるエナジーです。彼らには大きな何かがあるんだろう、素晴らしいもの等があるのだろう、という感じなのでしょう。それは韓国、それ自体の精神ではないだろうか?
私の夢は果てしなく大きい。私は服を作る人として服をもって世界一になりたいということは当たり前です。だから私が持っている長所を考えるようになりましたが、私が持っているものはやはり、私は韓国で生まれて韓国人として韓国でインスピレーションを受け、韓国で受けたすべてのことで服を作っているという事実、正にそれです。
そのことが私の経済力でしょう。
もうひとつは韓国的なデザイン、トラディショナル、そんなこと等を衣装に接続させることの他に、もう少し具体的なことをしたい。
私たちの国だけではなく世界でパブリックに活用するファッションであり、‘ラグランスリーブ’、日本の‘着物スリーブ’と同じ用語のような、そこに韓国語のファッションの公用語を上げたい。
簡単にいうとコリアンルックだろう。衣装を学ぶ人たちが‘あ、こんなものもあるんだな’と関心するくらい世界ファッションのパブリックを作るために努力したい。
チョゴリスリーブ、こんな名前、どうでしょう?
p266
世界平和の鐘 The World Peace Bell.
紛争の歴史を経たことや紛争中の60年余り、国家が4年間で蓄えた薬きょう1万貫(37.5トン)で製作した鐘だ。
鐘の一番高いところに装飾されているハト4羽の翼のひとつが切断されていた。
そばに翼だけが展示されているが、統一になったときやっとハトの姿が完成されるという。
鐘を鳴らした。 ずっしりと重い鐘の音がとても悲しく響き渡った。
p269
鐘を鳴らした後、鐘から音になって出てくる振動を感じてみてという
ガイドの言葉に 鐘本体の内側に手を持っていって当てる。
p271
温かくもあり、また悲しくもある
妙な響き。
p273
飛びたければ飛べ、
人々の目を避けて。