ドラクエ9に満足できそうな人・できなそうな人

友達が、ドラクエ9をやっています。
今はゲームを結構やるようになっていますが、
昔はほとんどやりませんでした。
でも、そんな友達が必ず買い、
そしてやってきたのがドラクエです。

ドラクエ7が出ればPSを買い、
ドラクエ8が出ればPS2を買う、
友達にとってはドラクエは
キラーアプリならぬキラーソフトであるのです。

そのため、長年……というほどでもなく、
間に4や5をはさみながらも、
期待していたドラクエ9をやって、
がっかりしないかなあと
変に心配してしましたが
感想はおおむね良好です。

それを聞くとほっとすると同時に、
なにをそんなに楽しめているのか
逆にいぶかしく思います。

そこで聞いてみたら、まず出てきたのは、
「話はいつものドラクエだよね」

……あれ？　そうだったっけ？

たしかわたしの記憶だと、
最初の二個目までと、人形イベントあたりは
ドラクエらしいと思ったものの、
あとはひどかったという印象しか残っていません。

でも、友達が内容を話すのを聞いていると、
確かに他のイベントも
ドラクエらしい気がしてきました。
ならなぜ、それを忘れていたのでしょうか。

――と考えて。
わたしの記憶はすべて黒ずんだ悪魔によって
印象操作されていたのだと気づきました。

たとえば、こんな感じです。

お好み焼き屋さんに入って、お好み焼きを
おいしく食べて、店をあとにしたとします。
その時の気分は、
『お好み焼きがおいしかった』
と思い、満足していることでしょう。

でも、お好み屋さんに入って
焼いている時・食べている時に、
真後ろでうす汚れた女子高生が大きな声で、
「なにこれ、食い物？　
蝶★ゲロみたいなんですケド！」

そして焼いてるわたし、
食べてるわたしを指差して、
「見て！　ゲロ食ってる！
マジうける！」
なんていちいち言われたとして、
そんな中でおいしく食べられるでしょうか。
食事を済ませてお店を出たとき、
『お好み焼きがおいしかった』
という感想をもてるでしょうか？

と、そんな感じです。

実際のゲームでのサポート役が
そういう風だったので
わたしのドラクエ9は不愉快なものに
なってしまったのでしょう。
多分心理学的に言えば、ハイロウ効果
（坊主憎けりゃ袈裟まで憎い効果）に
該当する気がします。

クリア後にその悪魔はいなくなるのですが、
そのときは本当に　ほっとしました。
やっぱりあんなの、制作側も嫌だったので
クリア後は見なくて済むように
してくれたんだなあと思ったのです。

「ドラクエ6ってどんなゲームだった？」
と訊かれて、内容を答えても
周りの人は意外と首を傾げますが、
「ほら、ハッサン」
と言うとそこだけうなづくように、
『ドラクエ9＝黒ずんだ悪魔』
というだけの図式ができてしまいそうで
大変いやな感じです。


そして次。
友達のメールで楽しそうなのが、
すれちがい通信です。
「今日は渋谷に行って帰ってきたら、
宿屋に100人来てた」
なんて、楽しげな文章が並びます。

そしてその宿屋に来た人が
地図をもって来ていることが多いので、
その地図を探してこなそうと
しているのでした。

話は牢屋から脱出したところなのに、
次の大陸へは行かず、
ぼちぼちと錬金のアイテムを集め歩き、
地図の場所を探し、ボスに全滅させられ、
見つけたクエストをこなしして
いるのだそうです。

ちなみに一週間前は、
「牢屋のボスが倒せない」でした。
それから一週間後では、
『ボスを倒した』だけの進行度です。

わたしはほぼフルマニュアルプレイで
約69時間かかってクリアしましたが、
友達はオート放置中のすれちがい通信も
時間にカウントされるとかで、
すでに69時間になっていました。

……この差です。

友達の話があんまりおもしろそうで、
わたしも一瞬やってみたくなりました。

ここに、わたしと友達の大きな相違点が
あると思います。

たしかに、街なかへ出て、
知らないプレイヤーのキャラがやってきて、
それが持ってきた地図のダンジョンを探す、
というのはおもしろそうです。

でもわたしは、ドラクエ4のとき、
ドラクエ5のとき、すれ違い通信を
ひたすら試したのに収穫ゼロで、
すれ違い通信なんてできないものだと
もう最初からあきらめきっていました。
そのため、すべての地図は
自分で集めるしかなく、ボスがいる地図、
レア地図などはひとりでもくもくと
集めなければならないという
拷問みたいな行為になっていました。

でもドラクエ9は、リメイクではなくて
新作なのでやっている人も多く、
今回はすれ違い通信ができるようです。
その点から、
『人ごみの中に出ている人』は
ドラクエ9を楽しめる可能性があります。


加えて印象深かった友達のセリフが、
「これで一年間クエストが追加なら、
もうあと一年はドラクエ9でいいや」

――この気楽さです。

わたしの性格特性は『爆発性』です。
短距離走を一気に走りぬくような、
短時間に思いっきり集中して、
精神力を爆発させるような行動が
もっとも性（しょう）に合っています。
マイナス方向から見れば、
だらだらすること、待つことが
非常に苦手なのです。

そんな人間が、次のようなドラクエ9の
特徴を見たら、どう思うでしょうか。

　・ドラクエ9は、クリアしてからが本番です。
　・毎週ひとつづつクエストが解禁されていき、
　　すべてのクエストが出揃うのは一年後です。

わたしなら、
「クリアしてから出すぐらいなら、
　本編中に出してよ」
と、
「そんなにクエスト延ばすなら、
　一年後に買うほうがいいよ」
と、そんな風に思います。
のんびりだらだら遊ぶなんて
わたしの性格上ではむりなのです。

『ドラクエをやるときはドラクエをやる。
集中してレベル上げてボスを倒して、
裏ボスまで倒しきって、はー、すっきり！』
これがわたしのいままでのドラクエ感。
こういうゲームの楽しみ方をする人は、
たぶん今回のドラクエは
物足りなく感じるはずです。

もっと変な方向から言うのなら、
『コーヒーが飲みたい』
とこころから思ったときに、
おいしいコーヒーが飲みたいからと
次の日にしか飲めない水出しコーヒーを
作り始めて、楽しみながら待てるような人
（性格特性では『燃焼性』の人）は、
今回のドラクエを楽しめるでしょう。

もしくは、『コーヒーが飲みたい』
とこころから思ったときに
買い置きのコーヒーが切れていたとして、
いちいち買いに行って、
それからいれて飲めるような人も
楽しめると思います。

一方、『コーヒーが飲みたい』
とこころから思ったときに
買い置きのコーヒーが切れていたとしたら
『今のめないならそんなもの
　もうどうでもいい』
と思う人、もしくは、
買い置きのコーヒーが絶対切れていなくて
必ずその場で飲めると確信がある
生活・性格をしている人は、
今回のドラクエは物足りなく感じるでしょう。

……まあ、たぶん、ですけどね。


ちなんで言ってみますが、
たとえば休暇でどこかに言ったとき、
すごく所在なさげにしている人を
見かけることもあるでしょう。

なにかをしようとしている姿に、
『せっかくの休みなんだから、
　だらだらのんびりと気安くすごせばいいのに』
と思うふしもあるかもしれません。
でも、それは間違いです。

そう思われてしまうような人たちは、
『のんびり過ごす』ということが、
精神的にできないのです。

のんびり過ごすことができる人は、
のんびりすることで精神を解放できます。
でものんびり過ごすことができない人は、
『のんびり過ごさなければいけない』ことを
大変苦痛に感じます。

それは適当にたとえるなら、
日本語しか話せない人が、
知り合いでもないドイツ語しか話せない
ドイツ人の家に一人で行き、
周りがドイツ語で談笑する中で
一人ぽつんと立っていなくてはいけないような
精神状態です。
どれほどの苦痛かわかるでしょうか。

それなら『のんびり過ごす』でなくて、
「本を何冊か読む」、
「本を何冊読めるか試す」とか、
「砂でお城を作ってみる」とか
その場でしかできないような
なにか作業的なものをしていたほうが
ずっと気が楽です。
でも自分では考え付かないことも多いので
周りで気づいた人が、
適当にできそうな作業をおすすめすると
それなりに喜ばれることでしょう。

……たぶん、ですけどね。