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アメリカ/ 魅了された編み物生活

ロッキーのさすらい・その2

2006-06-13 13:17:17 | Weblog
彼此6年も前のある夏休み、息子と友人の3人でまだ行ったことのないアスペンに行くことになった。デンバーからおよそ5時間でIー80を走って分岐点のグレンウッドスプリングスへ着いた。アスペンへはそこからIー82をとって南下していくのだが、なぜかグレンウッドスプリングスから運転を代わったジムは町並みから外れて山道に入っていく。私は地図をなぞりながら<ちょっと方角がちがうと思うんだけど?>と言った。彼は<君みたいな方向に鋭い女性には初めて出会ったよ。僕がコロラドのネイティブなんだから、ちょっと黙っててくれよ!>私<でもアスペンに行く方角じゃないじゃない!>それでも私の言葉を無視したように、山道をどんどこ運転していく。<暗くならないうちにカーボンデールのキャンプ場を見つけなきゃあ、熊の餌食になっちゃうよ!>とまだまだ私は言い張った。
その年は、コロラドではデンバーの市内でさえ熊の出没で大変な年だった。通常、コロラドには熊は生息していないのでほとんどの熊はワイオミングから移住してきていたのだった。ジムは執りつかれたようにもくもくと運転して、なにかぶつぶつつぶやいている。
これで、こんなクレージーな運転は2度目だなあ?と以前のロッキーのさすらいを思い出した。
ロッキーのエステイトパークのマリーズ湖に行った帰り、薄暗くなってきた帰り道をデンバーに向けて急いでいたのに突如として、ジムは方角を変えてどんどこ山中に入って行くのだった。段々道路は舗装道路から地道に変わり、景色はロッキー山脈のピークを目指していく。両側には鉄条網の柵がはりめぐらされ、その針の上にハミングバードが羽ばたいては泊まり、寝床の用意をしているようだった。もう周囲には人っ子一人、車さえ見かけられない、枯れ草のメドウでやっと大きな廃屋が見え、その裏にぽっかりとモフェットトンネル<Moffat railroad tunnel>の出口が顔を見せた。ジムは唸るような声で<これが、モフェットトンネルだよ!50年も前、僕が小学生のとき、母親とカリフォルニアに行った帰り、ここを通ってデンバーに戻って来たんだ。>と幼かったころのトンネルのショックを感慨深く語った。モフェットトンネルは北米で最高の海抜2770メートルの高さにありロッキー山脈を突き抜ける。全長10キロでこちらではロッキー山脈のことを大陸分水嶺<Continental Divide>と呼び、その西側、つまりカリフォルニア側をウエスタンスロープ、東側をイースタンスロープと呼ぶ。このトンネルはパイオニアであるデビッド・モフェットがロッキーの山の上をスイッチバック方式で走る旧鉄道のロリンズ峠を改良するため、計画したものだったが残念ながら、彼の生涯、資金繰りのため実現することはなかった。彼の死後17年、やっと未だ見ぬ彼の夢がかなったのだった。http://colorado.railfan.net/moffat/moff2.html
http://ellensplace.net/hcg_fac7.html

後、家に戻って地図を広げて見ると、このトンネルは私のブロッグでも紹介したセントマリーズ湖の氷河から8キロくらい北に位置し、ちょうど氷河の上にあるMT.ジェームズの下を突き抜けていることになる。
想像を超える雪の厳しさや、なだれの脅威にもめげず、アメリカの偉大なパイオニア達は交通の近代化を計っていたことを知るのは感激以上のものであり、ロッキーの山中で夕暮れにぶち当たった景色は、ジムの個人的な思い出どころかアメリカ大陸の近代化のパワーを知った思いだった。

幻想小曲集より「飛翔」op.12-2

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