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アメリカ/ 魅了された編み物生活

私の職場/感激の一瞬・その2

2006-06-04 14:31:06 | Weblog
メリンダ ゲイツに会って以来、私は悶々とした日々を送っていた。あの日彼女がクリスマスのプレゼントに欲しいと言った、バーバリーのカシミアのショールのことが頭から離れないでいたのだ。

うちのストアではお取り置きは非常にきびしく、必ずラベルに氏名、電話番号、取りに来る日にちを書き込まなければいけないし、もしうっかり、期日が過ぎているラベルをつけていようものなら、毎週末、セキュアリティーのスタッフがストックルームを見て周りチェックし、点数制で罰点がつく。あんまりお取り置きの罰点が高いと、マネージャーからお呼び出しがかかりセールスの成績と同じようにプレッシャーがかかるのだ。だから、こっそり彼女の欲しいといったショールをお取り置きのラベルを付けてクリスマス前までなんとか確保したいと思っても、1ヶ月も御取り置きをするのは非常にむつかしい。それに、彼女の暗示した言葉が確定した注文だとは決して言い切れないし、むつかしいところだが、渡した私の名刺のこともあるし、私の感ではもう99%、後から電話注文がビルゲイツからくるような気がしてならなかった。

もしそのとき、うちのストアにある2枚しかないショールが売り切れていたら?全米で他の支店に3枚あるがそれも売り切れていたら?もっと悪いことには在ったとしても、もう誰かがさんざん試着したりしていて、カシミアの表面の美しい照りがなくなっていてモモけてしまっていたら?ゲイツの3500ドルもするギフトが哀れなクリスマスプレゼントになってしまうではないか?クリスマスの日、メリンダが嬉しさと感動で開けた箱の中から出てくる、ももけたカシミアのショールを想像して思わず、身震いしてしまった。
いや~~~っ、私ってこういうことをリアルに想像しすぎる。ま、よくわが子にも言われてしまうことなのだが、もしこうなった場合、もしああなった場合と考えすぎるそうなのだ。と思えば、急ににケセラセラと開き直る。
とにかく、私の感とさえを信じて、こっそり御取り置きラベルを毎日、日付けをアップデートして2週間は最低必死で御取り置きすることにした。しかもうちのストアは全歩合制なので、他のセールス達が、良い顧客をつかむとなんとか取り込んで、セールスコミッションを半分半分<これをスプリットといって、1000ドルのセールスを半分ずつにしたりできるプロセスがレジーでできるようになっている。>せんと必死で、他のセールスの上顧客を観察している。
だからメリンダを顧客にしたことは嬉しくって、つい、ゲイツから注文がくるかもよ~!なんてうかつにしゃべろうものなら、とんびに油揚げということになりかねない。たまたま昼食でフロアーに居ず、そのとき電話注文があり<ななこはランチなので変わりにお手伝いしますよ>などとあま~い声でしゃべりセールスコミッションを半分にさせられることなぞは日常茶飯事なのだ。ましてや3500ドル・約40万もする商品だとコミッションも大きい。
だから、毎日、ラベルにゲイツという氏名はかかず、メアリ、イレイン、キム、エリザベスとか架空の名前にして感謝祭のころまでお取り置きし続けた。

一般的にアメリカでは感謝祭が済むと、みんないっせいにクリスマスのギフトショッピングに走り出す。感謝祭はクリスマスに次ぐ大きな祝日で11月の第4木曜日と決められている。だからこの11月の第4木曜日から、クリスマスにかけてホリデイシーズンと呼び、長期休暇をとって家族旅行したりするので飛行場が混雑したりする。感謝祭には74年の歴史を誇るメーシーズの感謝祭パレードがニューヨークで行われ、テレビの実況中継は日本の大晦日のNHKの紅白歌合戦みたいに全米の人々が釘つけになって見ている。
だから感謝祭が終わった翌日は本格的なホリデイの開幕であり、どこのデパートもギフト商戦で客を引こうと大バーゲンをうつので、この翌日の日というのはまったくクレージーな日になる。なんにもあんなに慌てて買い物しなくても感謝祭の前にだって十分ショッピングできるのに?と思うのに、感謝祭前はほとんどの人々は財布を開けず見て回るだけ。そういった混雑に耐えられない年配の準備の良い人達だけが、10月から家族へのプレゼントのリストを持ってぼちぼち買い溜めている。

そんなわけで、待ち続けた感謝祭の後のクリスマス商戦が始まったときも、ミスターゲイツからなんの音沙汰もなかった。私の勤務の休み<デイ・オフ>の時になにか電話連絡がなかった?と同僚に聞いても<特別、顧客から電話はないよ。>というそっけない返事。やっぱり、夢をみすぎていたんかな~~あ?夢と想像がたくましすぎたか!とほとんどあきらめかかっていた、と12月のある日。

その日は、もう朝からクリスマスのセールスでそれも、ややこしい注文の客が多く、<これとこれは速達便で月曜日の朝にアスペンの別荘に届くように><これはクリスマスイブにニューヨークの実家に届けて欲しい、このギフトは会社のほうへ>とか顧客の要望も複雑になってくる。うっかり、ミスしようものなら、当社のカスタマーサービスが悪いと支店長に電話が入るので慎重に顧客の指定を確認しなければいけない。ストアの顧客であれば、フェイストゥフェイスで接するのでまだ良いのだが、そんな忙しい日に限って長距離電話で注文がある。<12月のカタログの23ページのエトロのスカーフをシアトルに送って、36ページの皮手袋のブラウンのカシミアの裏地のサイズ6をイリノイ州に明日着で送って>とか、もう顧客の言いたい放題の注文だ。そんなわけで、ほとんど頭もパンク状態だった。思わず、うんざりして受話器をとると、
若い女性の声で<ななことしゃべりたいけど、ななこはいる?>と聞かれた。
<はい、私ですが?Yes, speaking ?>
若い女性<もうこれで先日から5回もあなたに電話かけ続けているのよ!2-3日前なんか、他のセールスに電話をかけるように伝言しておいたのに、聞いてなかったの!>
<すみませんでした、全く伝言をもらっていないので本当に、失礼しました。>と誤った。
若い女性<バーバリーのショールを捜してるんだけど、ここにあなたの名刺に書いてあるスタイルね、ウエッブサイトを捜して注文しようとしたんだけど、見つからないのよ!>
そのことを聞くなり、私は思わず、飛び上がるほどびっくりした。
<それでは、ひょっとして、そのショールのスタイル番号を書いてお渡しした方の代理の方でしょうか?>
若い女性<そうなのよ、それまだ在るの?>
私、興奮して心臓の鼓動がもうマキシマム<ええ、もちろん。まだフロアーに飾っていない完璧な状態のものを御取り置きしていますよ。>
若い女性<じゃあ、今からカード番号と送り先をいうから、クリスマスギフトに包装して送ってくれる?>
私は電話で注意深く、送り先、氏名、などを書き込み、注文主であるビルゲイツの名前を聞いたときは、もう頭がぼ~~~~~~~つとしていた。
彼女はビルゲイツの秘書で彼から、メリンダへのプレゼントのオーダーを委託されていたのだった。電話を切った後もしばらく、呆然として送り先や氏名を書いたメモの紙を何度も何度も、繰り返し見つめていた。

11月にメリンダに出会った感激もオクターブを超えていたけど、今日のゲイツからの電話注文はもう3オクターブをすっ飛んだ感じだった。わ~~~~~い、世界で一番の富豪からオーダーをとった!それも私の感に頼るしかない当てのない憶測だったのに!早速、ストックルームにかけ走り何枚ものビニール袋に入れてラベルの名前はいつしかシンシアと言う27番目の別人の名前に変わっていたけど、ショールを取り出してクリスマスギフト包装係りに送りだした。ちょうど1か月かかりの悲願がかなった感じである。
帰宅の途中のバートの電車の中では、もうすっかりコーポレーションマイクロソフトの住所は頭の中にすらすらと浮かんでくるほどだった。

  http://classic-midi.com/midi_player/mbox/mbox_Gounod_avemaria.htm← この棒をクリックしてクリスマス音楽をお楽しみください。

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