番号の整理はいずれしますが
残された課題について
総論部分での問題点
理論としては、実務に冷たい理論展開で、理想主義を貫徹しすぎの感があり、それでいて記述にバランスが欠ける憾みが残る。
各論部分での問題点
追加議定書に関連する事項すべてを網羅できていないので、論文集らしい名前をつけるべきで、教科書のタイトル、スルメの論文といったところか。なお、法律顧問の問題について記述がない。
総合的な評価として
学術らしさのよくにじみ出た論文集である。理論・歴史・実務の3つの視点で武力紛争の国際法を理解するとして、できれば、国際法学会として実務と両立しうる理論構築とはどのようであるべきなのかを今後、埋めていくことが必要なことが認識できた。
殊に政治的見地など学術研究者間での相違を乗り越えて、日本にいる国際法研究者の理論提案も、世界に対しての知的挑戦であり、同時に知的貢献であると思う。客観的に語ることと、社会への貢献の違いをどのように把握し、社会的評価に結びつけるのか難しい。みなみまぐろ事件のように、主務官庁と研究者が共同して取り組み更に成果を挙げるような実務的蓄積に結びつける制度は準備されている。例えば、利益保護国制度や国際事実調査委員会などである。国連システムでの武装解除に携わっている伊勢崎立教大学教授のような立場まで行かなくとも、もう少し智賢を活かせるのではないだろうか。
日本の国際法学の理論的な水準を示す意味でも、安全保障上の透明性向上のため、英語訳のほか、日中関係の重要性に鑑み中国語訳での出版も期待されるのではないか。
13年も大学卒業以降経過して、学術に明確な貢献をすることは極めて困難だが、今回の書評異聞が少しでも読者の皆さんのお役に立てば幸いである。しかし自らこの書評異聞を書けば書くほど、自らがその立場に立つとすれば埋めるべき隔たりは、まさに大きく「新地平」に至らない課題は、深く大きいものと感じる。 法学関係の書籍編集者は、筆者にどこが「新地平」と思うのかとことん聞いてやりあって題名を精選したほうが好いのではないかと感じる。
※上記の書評については、筆者の勤務する団体とは何ら関係がなく個人としての見解である。